11月15日に開催される、2014年ブラジルワールドカップ・アジア3次予選、DPR Korea 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)vs日本は、1985年以来の平壌での試合ということで、混乱の中、開催されようとしています。

まず、日本と北朝鮮は国交がないため、はたして日本人をどの程度の人数、北朝鮮が受け入れるかという問題が発生しました。実際に受け入れると通告された人数も、ファンが約150人、報道陣が記者6名、カメラマン4人と大変少ないものでした。また、報道陣に関してみると、北朝鮮でどれくらい費用がかかるのか、現地への出発を前に情報がありません。

さらに国交がないため日本国内では北朝鮮のビザを取得することができません。そのためビザ取得のためだけに中国へ渡航し、中国の北朝鮮大使館で発給を依頼します。しかも他の国のケースでは、通常申請前に許可されたことが書類として来るのですが、今回は明確な回答が得られず、ともかく中国に行き、申請して、ビザが得られるのかどうか試さなければならないという状態です。

その最初の関門であるビザ取得のため、11日、北京の北朝鮮大使館を訪問しました。そこで待っていたのは、思いもかけない対応でした。

大使館が開くのは8時30分からだということで、北京到着が11日になっているベテラン記者の方一人を除き、報道陣9人は8時30分にバスで大使館をめざしました。今回私たちが泊まっているホテルは大使館が集中しているエリアのごく近くなのですが、北朝鮮の大使館はバスで約10分程度のところと、やや離れています。

渋滞もなく、あっさり到着した先の北朝鮮大使館は他の大使館同様、フェンスと高い塀で二重にガードされていました。ところが門は開いていません。どうやら入れないようです。門に立っている警備担当らしき人物から追い返されてしまいました。

仕方がないのでバスで待機します。大使館の裏口にはゾロゾロと人が入っていきますが、正面の門が開く気配は一向にありませんでした。

約1時間ほど待機し、どうやら始まったようだということでゲートに再び向かいました。今度は先ほどの警備担当が一人ずつパスポートを確認しながら敷地内へと通しています。

しかめっ面の警備担当者が僕のパスポートを取り上げ、顔を確認しようとじろりと眺めてきました。ここは一発、と思い切りの笑顔を返すと、警備担当者も思わず笑顔になってしまいました。慌てて普通の顔に戻そうとしますが口元がまだちょっとだけ笑みを浮かべたままです。

相手に人間らしい反応があったことに満足して敷地内に入りました。建物はところどころにヒビが見られる、やや古い感じの建物です。玄関には故金日成国家主席と金正日朝鮮労働党中央委員会総書記との大きな絵が飾ってありました。

申請受付の担当者は、がっちりとした体格の中年の男性でした。書類とパスポートを受け取ると、パスポートの写真と顔を見比べます。さっきと同じ作戦で、思い切りの得がをを浮かべてみました。ですが、彼は何の反応も示しません。「ここに日付を書いて」と冷静に記載漏れを指摘されました。

全員が書類を渡し終えた後、15時にもう一度来るよう言われました。その時に、キチンとビザが発行されるかどうかわかるようです。発行費用は270元(約3500円)かかり、受け取りの際に持ってくるように、ということでした。帰り際に入り口の肖像画を写真に撮っていいか聞いたところ、女性の係員からきれいなクイーンズ・イングリッシュで
「ノー、ユー・カント」
と即座に断られてしまいました。

15時、今度は時間どおりに入ることができました。お金を渡して待っていると、さっきの申請を受け付けた担当者が一人ずつ名前を読み上げ、顔を確認して手渡していきます。