ワールドカップ・アジア3次予選
日本代表 8対0 タジキスタン代表
(10月11日 大阪長居競技場=NHK-BS)

★分かりやすいザック用兵
 ザッケローニ監督の選手起用の狙いは分かりやすい。
 ワールドカップ予選の第3戦、タジキスタンとの試合で、ハーフナー・マイクを先発でトップに起用した。代表初先発である。
 狙いはいろいろ考えられる。
 第1の狙いはタジキスタンの守備策崩しだ。相手はほとんど全員がゴール前へ下がって守るだろう。後退密集守備の中にドリブルとパスで攻め込んでも、1対多あるいは2対多の戦いになるから次つぎに引っかかる。だから、なかなかゴール近くへは食い込めない。
そこで、相手の守りの上を越して高いボールをゴール前へ送る「放り込み」を使う必要が出てくる。高いボールの落下点は1カ所だから、そこでのヘディングの競り合いは1対1になる。ここで身長1メートル94のハーフナーが役に立つ。

★多様化のための選択肢
 ハーフナーは日本の8得点のうち2点を決めた。前半11分の1点目と後半1分の5点目である。どちらもヘディングだった。狙いどおりである。
 しかし、ザッケローニ監督がハーフナーを起用したのは、タジキキスタンの守備策対策のためだけではないだろう。レベルの差が明らかな相手だったから、勝つためだけなら必ずしもハーフナーの高さを借りる必要はなかったはずである。
 ハーフナーを加えた第2の狙いは、今後に備えて「攻めの多様化」を図ることだっただろうと思う。
 相手によって、あるいは状況によって、いろいろな攻め方ができるように、いろいろなタイプのプレーヤーを用意しておきたい。その選択肢を増やすために、ハーフナーに国際試合の経験を積ませておこうと考えたのだろう。

★W杯予選の戦い方
 「バルセロナのようなショートパスによるサッカーが日本の生きる道だ」というような考えでチーム作りをし、固定したメンバーで単独チームのように代表チームを強化してワールドカップ予選を戦うつもりはないようだ。
 相手により、状況に応じて、適当なプレーヤーを選び、システムや戦い方を決める。そのためには、持ち駒を増やし選択の幅を広げておきたい。それが、ハーフナー起用の狙いであり、4日前のベトナムとの親善試合前半に3:4:3を試みた理由だと思う。
 単独のクラブチームであれば、手駒は限られているけれども常時集まって練習できる。代表チームの場合は、いろいろなプレーヤーを選べるが、シーズンの合間を縫っての臨時編成である。ワールドカップ予選の戦い方としては、ザッケローニ監督のやり方は、当然であり、十分に納得できるものである。