安徽省黄山市黄山区譚家橋鎮で、地元当局が観光客に旧日本軍兵の軍服に見立てた服を着用させ、「地元女性を拉致する様子」を再現していたことで、非難が集まった。“旧日本軍の軍服”を着るなどした観光客は笑顔で写真におさまっている。譚家橋鎮観光局の責任者は「観光客に当時の歴史を理解してもらう、教育の意義がある」などと説明した。人民日報などが報じた。

 観光客は旧日本軍兵や中国人の対日協力者に扮(ふん)して、中国人女性を引き立てる様子を再現した。“日本兵”は“銃”を持っている。軍用オートバイやサイドカーに乗る者もいる。中国人女性も、観光客が扮しているという。写真で見るかぎり、「大いに楽しんでいる笑顔」が印象的だ。

 譚家橋鎮観光局の責任者は、「紅色旅遊(革命観光)だ。若い人に参加してもらい、当時の歴史を理解してもらう。教育のためだ」と説明した。娯楽性があることは認め、「専門家による演技指導もある。それぞれの役をつとめてもらい、最後は八路軍(国民党内に組み込まれた共産党部隊)による女性解放までを演じる」、「昔ながらの民家も利用する。武器もそろっている。爆破シーンもあり、真に迫る体験ができる」などと説明した。

 「女性略奪」の観光客参加型パフォーマンスは2011年になってから始めた。当初から批判の声が多かったが、譚家橋鎮が公式サイトに掲載して宣伝を始めたことで、非難の声が殺到。「国のイメージを損ねる」、「あまりにも低俗」などの意見が相次いだため「インターネットからは削除する」考えという。

 安徽省社会科学院の王開玉研究員は「譚家橋鎮は革命の先人をしのぶ場所であり、女性略奪の演技をさせることは、革命の先人の魂を汚すことだ」と厳しく批判した。

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◆解説◆ 譚家橋鎮は1934年12月に、日本軍を攻撃するために北上した紅軍(共産軍)が国民党部隊と遭遇して激戦を展開し、紅軍側に多くの犠牲者を出した土地として知られる。同戦闘で紅軍を指揮した栗裕大十軍団参謀長の遺骨の一部は「犠牲になった戦友が忘れられない」との遺志により、譚家橋鎮内の墓に埋葬された。

 なお、譚家橋鎮観光局の責任者が言う「八路軍」とは、1937年の第二次国共合作により成立した、ある程度の自立性を保ちながら「国民党軍」に組み込まれた共産党の部隊。譚家橋鎮で、共産軍にとって重要な戦闘があった1934年には、存在しなかった。また、活動地域も華北方面に集中し、安徽省は含まれていない。(編集担当:如月隼人)