斎藤工
 俳優の斎藤工が天才小児外科医を演じるテレビ東京系の新ドラマ「最上の命医」(月曜午後10時)が10日スタートする。

 斎藤演じる小児外科医・西條命(みこと)が、病院内の確執や利権と戦いながら、様々な小児患者を相手に天才的な医療技術を発揮。周囲の人々の意識に変化を与え、やがては「最上の名医」と呼ばれるようになるまでを描く。撮影では「NOTES」(経管腔的内視鏡手術)など実際の医療技術を再現。高い情報性を持つ社会派エンターテイメントになっている。共演は比嘉愛未、池内博之、陣内孝則ら。

 「主人公にみんなが知っているわけじゃない僕を選んだことが、逆に強みだと思う」と力強く語る斎藤に、ドラマの見どころをタップリと聞いた。

■ブログ投稿キャンペーン
 ライブドアでは、ドラマ「最上の命医」の公開を記念し、斎藤と比嘉が出題するテーマにブログで答える「ブログ投稿キャンペーン」を開催中だ。

 優秀な回答をしてくれたブロガーには、“未来を切り開くための資金”として、3万円分のAmazonギフト券(1人)を進呈。さらに、斎藤と比嘉の直筆サイン入り「平聖中央病院IDカード」(各1人、計2人)をプレゼントする。審査員として、斎藤と比嘉が投稿ブログをチェックする予定なので、ドラマの感想や2人に伝えたいメッセージを書いてみるのもいいだろう。

比嘉愛未「あなたが『研修』時代に出会った“スゴイ”人物とは?」 - ブログ投稿キャンペーン

――今回のドラマの見どころから教えてください。

斎藤工 (以降、斎藤) :他のドラマと違うのは、手術シーンの描写ですね。原作でも、絵はかわいいんですが、医学書のように手術内容がたくさん組み込まれていて、そのバランスが作品の魅力でもあります。

ドラマでも、ただ手術をしているというよりは、他の基本的な手術との違いを表現するのにこだわって、病院の先生にしっかりフォローしていただきながら描写しています。

――手術シーンの撮影は大変そうですね。

斎藤:そうですね。特に小児外科なので大変です。外科っていうのは大工だって言われるくらい大胆で繊細な作業をしています。例えば、頭蓋骨にドリルで穴を開けたり、僕らがゾッとするようなことをしているんですが、小児外科では、子どもの血管や細胞が大人より小さかったり、骨格も小柄だったりするので、僕の聴診器もちょっと小さめに作ってあります。あらゆるものがより細かい作業になるので、現場としては一番大変だと言われています。

――切ったり縫ったりする練習もしているんですか?

斎藤:それは、医療ドラマを演じる人が通らなければならない道です。縫った後の処理、縛る手の速度っていうのは、「天才」と呼ばれる人ほど早かったり、無駄がないんですよね。かと思えば、先生によって全然やり方違うんですよ。

――へー。

斎藤:自分ならこうするっていうのがあるんです。医学っていうのは、お芝居に近くて、その人のカラーがとても強いものなんだなって思いました。目指すところは決まっているんですが、そのプロセスが違うんですね。

――いろんな先生に指導を受けたということですか?

斎藤:はい。例えば、脳の手術と肝臓の手術だったら、それぞれ専門の先生に来ていただきました。現役の先生方で患者も抱えてますので、いつも同じ方に来ていただくことは難しいんですが、トップクラスの先生が来てくださっています。

――セリフも専門用語が多そうですね。

斎藤:ありますね。でも、先生方にとっては、それが日常のワードなんですね。手術中は1秒単位で命に関わるような指示を出さなければならない。筋肉を使ってないと、普段そんなワードを使ってないんだなっていうのがばれてしまいます。

――そこでつまずいてしまったら、命が失われてしまうかも知れません。

斎藤:専門用語を日常の言葉にする作業は必須ではあるんですが、難しかったですね。

――原作の漫画は読みましたか?

斎藤:はい。 2ページ目くらいから、漫画を読んでいる感じじゃなくなって、引き込まれました。もちろん、娯楽なんですが、発症の理由が明確にあるというのは強いですよね。ストーリーに芯の強さを感じました。

――ドラマでは、若干内容が変わっていると聞きましたが?

斎藤:そうですね。でも、例えば、「ONE PIECE」が漫画とアニメではちょっと描写が違うのと同じ感じだと思っています。その構成もいいなっていう (笑) 。

――主人公の西條命(みこと)は“天才医師”なのですが、決して天才ぶることなく、とても気さくな面を持っています。命(みこと)と斎藤さんご自身の共通点を挙げるとしたら、どんなところでしょうか?

斎藤:よく聞かれるんですが、まったく無くて (笑) 。やっぱり自分と 29年一緒にいると、いい所ばっかりじゃないじゃないですか。自分の見たくない部分も見てきましたし。そうすると命(みこと)って、どこかフィクションな存在なんですね。

「俺と似ているわ」って思えないからこそ、この作品の主人公なんだと思うんですが、逆に自分との違いが作品と関わる上でヒントだなって強く思っています。自分はこうだけど、命(みこと)はこういう決断をする。彼はプランが明確だし、迷う時間がないんですよね。自分は、その都度大事にするものが変わってきたりして、ブレまくりなんですけど、彼はブレていないなっていう。自分と比較することで、違いがどんどん出てくる役柄です。

ただ、もちろん正義の味方でヒーローなんですが、僕はそういうストレートな役柄をやったことがなくて、感情移入するためには、すごくリアリティが必要な気がしていまして、それは別に表現しなくても、自分の中の決め事として、裏づけがあればいいと思ってるんですが、僕は「テロリスト」ってこういう感じだと思うんですよね。

実直で邪念がないから、それが脅威に変わる。ドラマで言うと、陣内さん演じる桐生奠(さだめ)のように病院を守り繁栄させていくっていう野望を持った人には、命(みこと)のような正義のヒーローは真逆にいます。僕は、そっちを強く意識したいと思っています。

――桐生奠の立場からすると、命(みこと)はテロリストそのもの、かも知れませんね。

斎藤:そうですね。それが、一つの正解な気がしています。僕の中で、ですけどね。ネガティブが炸裂したところの方がリンクしやすい気がしまして。

――なるほど。

斎藤:奠から見て、どう映っているんだろうっていう視点を持っていた方が、やりがいを感じるタイプなので。

――命(みこと)は、小児外科医であるが故かもしれませんが、子どもっぽいところがあって、おもちゃを沢山集めていたりしています。斎藤さんご自身は、そういう趣味はありますか?

斎藤:子どもの頃から映画やアニメを見て育っているので、ジブリの最新作を初日に見に行くとかですね。

子どもの時に、映画のエンドロールのどこかに名前が載ればいいなと漠然と思っていたのがいまだにあって、いい映画やドラマを見たあとに、その感情に戻るんです。やめられないのは、幼少期の延長だからかも知れないですね。

――子どもの頃の体験が、その後の人生の目標につながったという点では、命(みこと)と共通しているかも知れませんね。

斎藤:そうですね。今回、出会った先生方も、医者を志したきっかけは、幼少期に大きなケガをして、それを治してくれる人がとても格好よく映ったという人がとても多かった。子どもの頃に何かにときめくという感情は、必要な反応なのかなって思います。

――命(みこと)の命を救い、その後の目標となった医師・神道護(泉谷しげる)のように、斎藤さんの人生に大きな影響を与えた人物はいますか?

斎藤:写真家の藤原新也さんですね。「Memento-Mori」っていう強烈な写真集がありまして、犬が人肉を食っているみたいな描写がある本なんですが、その 1ページ目に「ちょっとそこのあんた、顔がないですよ」って書いてあるんですよ。小さい頃に親の本棚から見つけて、心をつかまれました。

――その本を見て、どんな変化がありましたか?

斎藤:貧乏旅行に旅立ちました。あまりにも自分が平坦に見えたんですよ。意志も弱いし、辛いことから逃げる人間なので、このまま生きていっても、安全が保障された範囲で生きていくんだろうなって思ったんですよ。つまんない、平坦な未来になっちゃうのが一番怖くて、波瀾万丈な演出をしたいと思って、バックパッカーになりました。

――いくつの時ですか?

斎藤:高校一年からです。

――それから、俳優になったキッカケは?

斎藤:実は、その貧乏旅行が関わっていまして、漠然とナポレオンの墓参りとか、色んなことをしていたんですが、アジア圏でモデルをやっていたんですね。

日本人の需要があるのは香港だったんですよ。旅費を稼ぎながらの旅だったので、香港にちょっと滞在しようと思ってコマーシャルの仕事をしていたら、ウォン・カーウァイ監督のスタッフに出会いました。なぜか彼らが気に入ってくれて、「僕はよく来日するから、日本で会いましょう」と言ってくれました。

彼らが来日してパーティーをした時に、本当に声をかけてくれて、そこで出会ったのが、デビュー作のプロデューサーでした。

――すごい巡り合わせですね。

斎藤:旅をしていなかったら、そんなプロセスはなかったと思います。

――以前から俳優になりたいとは思っていたんですか?

斎藤:もともとは映画をつくりたくて脚本を書いたり、映画学校に願書を出したりしていたんですが、東北新社で制作をしていた父親に、映画の世界は机の上で勉強するものじゃない、早く現場に出る方法を考えたほうがいいぞって言われて、そこからですね。技術もないし、一から勉強する気もあったんですが、俳優になることが、一番早く現場に行ける方法なのかなと思いました。

――ドラマのお話に戻りたいと思います。今回のドラマにかける意気込みは?

斎藤:いつもドラマを見ていて思うんですが、有名な人が、有名な作品の有名な役をやって、監督も有名な人でっていうのが多いじゃないですか。それって、いいことなのかも知れませんが、要は作り手の「安心」なんですよね。

今回、原作は200万部を突破した漫画なんですが、その主人公にみんなが知ってるわけじゃない僕を選んだことが、逆に強みだと思っています。プライベートのイメージも無いですし、ニュートラルな状態で見ていただけると思います。

無知で、医者になりたいって思ったことは無いし、あったとしても単純にお金持ちになれそうという印象くらいしかなくて、その橋を実際に渡った人たちっていうのは神様みたいな人たちかなって思っていたんですが、実際は意外と人間的で、半分神様ではなかった。

出産とか、劇中で色んなシーンが現れますが、素の状態で立ち会っていたら、目を覆うことしかできないようなシーンでも、台本や原作に情報が入っているんですね。

逆子の出し方とか、産道に首がひっかからないようにどうすればいいかなど、本当にそういう現場に立ち会ったときに、必ずしも正解に導けるか分かりませんが、こうしないほうがいいというのが自分の中に情報として残っています。見た人にも大事なポイントが残ればいいなと思います。

――最後に、これからドラマをご覧になる方にメッセージをお願いします。

斎藤:自然発生したものと、これを今やらなきゃならないと思って作られるものって、緊張感とか臨場感があからさまに違うんですよね。ただ、娯楽なので、正座してトイレも行かずに見てほしいというわけじゃないのですが、とにかく、この作品は小児外科が直面している切実な問題に、しっかりとスポットを当てています。僕が口で説明する以上に、ドラマの中で現状を体感してもらいたいと思います。

――分かりました。ありがとうございました。


ドラマ「最上の命医」は10日から、毎週月曜日午後10時にテレビ東京系で放送される。

■予告編動画


■関連リンク
ドラマ「最上の命医」公式サイト
「最上の命医」特集