■  グループ最終節

ヨーロッパリーグのグループ最終節。3勝2敗で勝ち点「9」のスペインのセビージャと、2勝1敗2分けで勝ち点「8」のドルトムントの対戦。セビージャはホームで勝つか引き分けるとグループリーグ突破が決定。ドルトムントは勝たないとグループ敗退が決まる。

アウェーのドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFピズチェク、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFベンダー、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、ゲッツェ。FWバリオス。

一方のセビージャはリーガでは6勝7敗2分けで11位。リーグ戦は4連敗中でグレゴリオ・マンサーノの首も危うくなってきた。この日は、ブラジル代表のFWルイス・ファビアーノとマリ代表のFWカヌーテの2トップ。スペイン代表のMFヘスス・ナバスは欠場。

■ 2対2のドロー

試合は前半4分にドルトムントが先制。相手のクリアボールを拾ったMF香川が左サイドからミドルシュートを放つと、これが相手DFに少し当たってコースが変わってゴール。MF香川はヨーロッパリーグはプレーオフ・ラウンドを合わせると通算で4ゴール目。ブンデスリーガの8ゴールと合わせて今シーズン12ゴール目となった。

これでリードを奪ったドルトムントだったが、この後はセビージャに攻め込まれる。受け身になっていた前半31分にDFピズチェクのクリアミスをコートジボワール代表のMFロマリッチに決められて追いつかれると、さらに前半35分にもFWカヌーテにヘディングシュートを決められて逆転を許す。結局、前半は2対1のセビージャがリードして折り返す。

勝つしかないドルトムントは後半4分に右コーナーキックを獲得。MFサヒンのボールをDFスボティッチがヘディングシュートで決めて2対2の同点に追いつく。その後、ドルトムントはFWレワンドフスキらを投入し逆転ゴールを狙うが、単調な攻撃が目立っていい形を作れない。MF香川もフル出場したが、逆転のゴールは奪えず。2対2で引き分けたため、ドルトムントはグループ3位となって決勝トーナメント進出はならなかった。

■ グループ突破はならず

ブンデスリーガでは14勝1敗1分けと独走するドルトムント。すでにドイツカップは敗退しており、リーグ戦も余裕がある状態なので、何とかヨーロッパの舞台を並行して戦っていって、上位を目指したかったが、勝利することは出来ずにグループ敗退となった。

ヨーロッパの舞台での経験が豊富なセビージャとの試合となったが、同点でもOKのセビージャは試合終盤になるとうまく時間を使ってドルトムントのイレブンの焦りを誘った。リーグ戦では追い詰められた中での試合が少ないドルトムントは、セビージャとの心理ゲームに敗れて、追いつくための効果的な攻撃を見せられなかった。このあたりは「若さ」のマイナス部分が出てしまった。

■ 2トップは機能せず

先制ゴールを決めたものの、この日のMF香川はミスが多かった。MF香川だけでなく、MFゲッツェもミスが多く、FWバリオスも怪我明けの影響なのか動きは重く、中心となる選手がこれだけ良くないと戦いは厳しくなる。2対2に追いついた後、後半22分にクロップ監督はMFブラスチコフスキに代えてFWレワンドフスキを投入。<4-2-3-1>から<4-2-2-2>に変更し、MF香川のポジションを左サイドに移したが、これもあまり機能しなかった。

この試合だけではなく、ドルトムントはゴールが必要な場面では、2トップに変更するオプションを持っていて、そのときはMF香川が左サイドに回ることになるが、左サイドに入ったときのMf香川はほとんどインパクトのあるプレーを見せられずにいる。原因としては、相手が引いているので仕掛けるスペースがないこと、パワープレーが多くなってMF香川の頭上をボールが超えていくことが多いこと、FWバリオスやMFゲッツェとの距離が遠くなって効果的な絡みがなくなる点が挙げられる。

ドルトムントはリーグ戦ではビハインドになること自体が少ないので、「どうしてもゴールが必要なシチュエーション」というのが少なかったので、このシステムはあまり洗練されていない印象を受ける。リーグ戦は独走状態になっていて、余裕のある状況だったので、テスト的な意味合いで「スタメン2トップ+香川の左サイド」という布陣をもう少し試しておいても良かったかもしれない。

■ 今シーズン12ゴール目も・・・

勝たないといけないドルトムントにとって、前半3分のMF香川のゴールは非常に大きかったが、前半10分頃からセビージャに攻め込まれるようになってしまった。セビージャで効いていたのは192?のFWカヌーテ。33歳となったが、今シーズンも13試合で5ゴール。ボールもおさまるし、味方を使うこともうまい。ドルトムントのDFスボティッチとDFフメルスはビッグクラブも狙う22歳の逸材コンビであるが、うまく対応することは出来なかった。

MF香川は全体的にはミスも多かったが、しっかりとゴールを決めて12ゴール目。相手に当たってコースが変わるラッキーもあったが、いいタイミングでシュートを放っており、アウェーで価値のあるゴールだった。

ゴールは見事だったが、欲を言うと、<4-2-2-2>に変更してから試合から消えそうになったときに何とかしてほしかったという気はする。前述のように外的な要因もあるので、MF香川だけの問題ではないが、もともとC大阪で試合に出始めたときは<4-2-2-2>の左サイドがメインで、サイドを縦に突破してクロスであったり、コーナーを奪ったりと、純粋なサイドアタッカーとしても機能することの出来る能力は備えているはずである。

<4-2-3-1>のトップ下でゴールを量産できているので大した問題とは言えないが、ドルトムントを離れて違うチームでプレーすることを考えたら、いろいろなポジションでプレーできることを示しておいた方が有利に働くはずである。

香川真司 (かがわ・しんじ)

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