ドイツのスタメンは、ノイアー、フリードリヒ、ラーム、メルテザッカー、ボアテング、ケディラ、シュバインシュタイガー、エジル、ミュラー、ポドルスキー、クローゼ。ユーロの前までは、4-1-3-2とかやっていたような懐かしい記憶。ポドルスキーの左サイドからチームが変化していったと記憶している。その延長線上のチームを支えるのが若手軍団である。その若さがどう出るか。

 イングランドのスタメンは、ジェームズ、アシュリー・コール、テリー、アップソン、ジョンソン、バリー、ランパード、ジェラード、ミルナー、ルーニー、デフォー。ぎりぎりバリーが間に合ったことで、ジェラードが本来の仕事に専念できるのが素晴らしいイングランド。デフォーとルーニーの関係がうまくいけば、楽しいことが起こるに違いない。

 ■流動的なドイツと固定的なイングランド

 イングランドのシステムは4-4-2。プレスの位置がかなり高めに設定しているように見えた。しかし、ルーニーたちのプレスに迫力があったかというとそうでもなかった。なので、高い位置でプレスをかけたいのに、肝心の前線の選手が微妙だったので、ドイツには何の恐怖も与えることができていなかった。なので、4-4の守備に期待がかかるイングランド。しかし、前線に合わせたのか、4-4の間のスペースが空いていて、何だがやるせない立ち上がりのイングランド。

 ドイツのシステムは4-4-2って解釈したほうがいいかなと。エジルとクローゼが前線でコンビを組んでいる。ポドルスキーをフィニッシャーとして活躍させる狙いと、右サイドに流れてプレーすることを得意としている選手が多いことから、右サイドに選手が偏る傾向がある。また、偏らずにポジションチェンジで相手を撹乱する方法も持っている。エジルがサイドに流れて、ミュラーが中央に進出したり、クローゼがサイドに流れてエジルとコンビでサイドを突破したり。ラームの援護も受けられるので、この攻撃方法は非常に理にかなっているかと。

 守備面では相手からボールを奪うことを目的とするような無茶なプレスはかけなかった。クローゼとエジルがバリーやテリーたちをケアしながら、相手の攻撃の選択肢を削っていく形。ランパードがなぜか妙に高い位置取りをしていたので、バリーにすべての負担がのしかかっていた。ケディラが積極的な守備を見せていたので、バリーから有効な攻撃が始められないイングランド。CBもバリーに時間を与えられないし、自分からゲームを作れる能力はないので、イングランドは苦しい展開になった。

 なので、ロングボールでレッツゴーのイングランド。しかし、ロングボールの精度が芳しくないイングランド。そしてデフォーが前線で屈強そうなドイツのCBに勝てるわけもなく、地上戦でも空中戦でも不利なイングランド。それでも、ちょこちょこボールを運ぶ場面はあったが、ノイアーまで辿りつくのはまだまだ先のおはなしで。いつもだったら、バリーとランパードがバイタルで待ち構えるジェラードとルーニーへボールを届ける展開だった。しかし、今日はランパードがなぜかそこに加わる場面が多い。

 ドイツはDFラインを高くして、イングランドにバイタルエリアを消しにかかってきた。そうすれば、裏のスペースが怖そうなんだけど、イングランドのロングパスがあんな感じだったので、非常に機能していた。なので、中央攻撃をひたすら繰り返すイングランドを前に、中央に選手を集めて大渋滞を起こすドイツ。攻守にドイツが機能している印象の立ち上がりであった。

 序盤にエジルが決定機を掴む。クローゼの空けたスペースに飛び出したエジル。ドイツはクローゼの空けたスペースをかなり機械的に利用しているように見えた。たぶん、繰り返された練習なのだろう。いきなりの決定機は不安視されているジェームズのセーブによって、何とか防ぐことのできたイングランド。しかし、中盤の選手が相手を挟みこむような守備をしてくれないので、ドイツが徐々にバイタルを支配し始める。

 なので、イングランドはドイツにボールを持たせて後方に引きこもればよかったのだけど、なぜかそういう選択肢はしない。チェルシーもユナイテッドも守備がうまくいかないときは、そういう判断ができるし、カペッロなのにそれをやらなかったのはなぜだ。もしかしたら、ドイツのボール運びをもっと邪魔できると計算していたのかもしれない。そのわりには、前線があんまり働けてなかったね。なので、ボールホルダーにプレスがかからない悪循環。

 しかし、先制点は意外な形で生まれる。ノイアーのゴールキックをテリーがかぶる。このときに、テリーが味方に任せるそぶりが欲しかった。どこか他人行儀なテリー。そんなテリーにびっくりしたアップソンはクローゼを追いかけるけれど、振り切られてしまう。そして、クローゼの先制点で試合が動き始める。バイエルンではさっぱりだけど、ワールドカップに愛されているエースであります。

 この失点によって、イングランドが目を覚ますかと思ったが、そんなことはなかった。むしろ、ドイツが攻撃を強くしていく。ケディラが前線に飛び出していくことによって、攻撃に厚みを加えること&ポジションチェンジにさらなる変化を加えることによって、イングランドは後手をふまされることとなっていく。イングランドの中盤の選手は未だポジショニングが適当であった。これは後半まで修正されることがなかった。

 なので、ドイツの右サイドアタックが機能する。数的同数を作られたイングランドはミュラーのフリーランニングに対応できない→ミュラーに突破されて、最後はフィニッシャーのポドルスキーが豪快に決めて、2-0という展開になってしまう。美味しいところを持っていくポドルスキーであった。ミュラーに感謝するポドルスキー。

 しかし、ここでイングランドが徐々に落ち着いていく。なんでランパードが前目にいるんだろうと不思議に思ったジェラード。しょうがないから俺がボールを運ぶもんね、だってキャプテンだものってことで、献身性を見せるジェラード。また、ミルナーがサイドに張り付くことで、相手を横に広げるイングランド。中央渋滞を徐々に解消することで、イングランドはボールを運べるようになっていく。そしてゴールに近い位置にいるランパードとサイドにはりだしたミルナーから決定機が生まれるが、ノイアーがスーパーセーブでチームを救う。

 徐々に盛り返してきたイングランドは、コーナーキックからアップソンが意地の一発を見舞う。内容が追いつく前にセットプレーで結果を出せたのはとっても大きいイングランド。ドイツからすれば、やっぱり簡単に勝たせてくれないのねってところだろうか。ここからイングランドの怒涛の攻撃が始まる。ドイツはこのあたりからイングランドのボール運びを邪魔できなくなってきたのが痛い。で、疑惑の場面が訪れる。

 ランパードのシュートはバーに当たって明らかにゴールに入ったが、ボールは外に出てきた。何事も無くノイアーは試合を続ける。そして、歓喜のカペッロとランパードだったが、無情のノーゴール判定だった。あの勢いの攻撃なので、副審が追いつかないのはしょうがない。ビデオ判定が嫌ならば、5人制を実現させるのが一番よさそうな雰囲気である。今回は自然現象だけども、意図的な何かを見逃してしまうのはちょっと悲しいかなって。だってさ、アイルランドはかわいそうだったでしょ。

 前半はこのまま終了。ドイツからすると、ノーゴールになったので幸運な前半戦だった。また、自分たちのサッカーが通用していたけど、ちょっと怪しくなってきたから、どこかを修正する必要がありそうな感じ。イングランドは修正どころがいっぱいあるけれど、メンタル的に持ち直せるかどうかが鍵になりそうである。

 ■セットプレーからのカウンター。

 後半のドイツは、DFラインを下げて、守備ブロックを後方に設定した。がっつり守ってカウンターに切り替えた模様。イングランドのボール運びを邪魔しまくった前半に比べると、ボールをイングランドに持たれたのはそんなところかと。ただし、イングランドもジェラードを左サイドから中央へ、ミルナーを右サイドに固定して、バイタルにルーニーを置くことをはっきりさせてきた。なので、ドイツはちょっと嫌な展開になっていく。

 なので、攻撃を忘れちゃいかんとカウンターや、ラームのサポートを得た右サイドアタックでイングランドを牽制するドイツ。しかし、後半のイングランドはDFとMFで挟みこむような守備を見せていたので、前半よりも苦労するイングランド。チャンスはつかめるのだけど、前半とは違った展開になりそうであった。ジェラードが左サイドからフィニッシュに持って行ったり、ルーニーがバイタルでファウルをもらったり、そして、ランパードがバー直撃のFKを放ったり。

 さらに攻撃を加速させるわと、ミルナー→ジョーコール。ジョーコールはドリブルで中央に切れ込んだり、バイタルで待ち構えるルーニーにいいパスを通したりしていた。てっきり、ファーサイドにクロスを入れまくる作戦をやるかと思っていたので、ちょっと拍子抜けした。そうか、もっとバイタルを利用する作戦にカペッロは賭けたのねと。

 で、そのバイタルで得たFK。これをランパードが壁にぶつける。そして、カウンターをくらうイングランド。エジル、シュバインシュタイガー、ミュラーによるカウンターはまるで決まりごとだったかのようにイングランドを崩し、最後はミュラーが豪快に決めて、ドイツがイングランドに止めを刺した。かなりゴールに近い位置だったので、あそこまで、ゴール前に選手を配置する必要があったかは疑問である。また、壁にあたったボールを相手に奪われた選手のミスも大きい。そして、正面のシュートを防げなかったジェームズも辛い。

 そんな多くのミスが重なったイングランド。もう彼らに残されたものはほとんどなく。また、カウンターをくらってダメ押しゴールを許すと、試合は完全に終了した。バリーを後ろに残しても意味が無いように感じるぜ。最後の見せ場はジェラードとルーニーの意地が創りだした決定機だけど、それもノイアーが防いじゃうのだからお見事。こうして、ドイツが4-1でイングランドを破りましたとさ。

 ■独り言

 カペッロの采配が謎だった。クラウチでラームを狙い撃ちがスタンダードなのに、そういう場面はなかった。もう少しドイツに敬意をはらうべきだったと思う。ちょっと自分たちの力を過信したサッカーを選択してしまったのかなと。ただ、1点目と3点目のミスなどは、監督のせいにするのはかわいそうである。特に最初の失点はなかなか言葉で説明できるものではないかと。

 試合に臨む姿勢に差があったので、コンディションが良くてもイングランドが負けた可能性は高い。ドイツのポジションチェンジアタックに対応する術はいくらでもあるとおもうんだけどな。

 ドイツは来季のブンデスがさらに楽しみになるような試合でしたと。シュバとケディラの役割分担とエジルとミュラーのコンビプレー、唯我独尊のポドルスキー、地味にキャプテンとして機能していそうなラームと、代表もいい雰囲気。でも、しっかりと対応されたら結構困るようなイメージもある。でも、次節がアルゼンチンかメキシコなので、両方ともそういうサッカーはしてこないだろう。となると、そういう相手と出会うのはいつだ。

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