本日、近所のコンビニを覗いたら、スポーツ新聞がいつもより売れていた。一面は、ほとんどがサッカー。日本代表対バーレーン戦の話だった。

 冬季五輪の話題も一段落し、サッカー以外にこれといった話題がなかったのかもしれないが、相手はベストメンバーではないバーレーンだ。しかも、アジアカップの予選だ。ワールドカップ予選ではない。早い話が、大した試合じゃない。にもかかわらず、一面を大きく飾っていた。

 岡田続投問題とそれは大きな関係がある、と言わざるを得ない。

 結構なことじゃないですか、と僕は言いたい。

 もっと偉そうに言えば、僕が岡田サンのサッカーに、常々文句をつけてきた理由もそこにある。もちろん、岡田サンのサッカーそのものに、大いなる疑問を感じることが多々あるからなのだけれど、多少格好良く言えば、サッカー界を盛り上げるための手段として、使命感に駆られる思いで文句をつけてきたつもりであることも確かなのだ。

 岡田ジャパンの戦績は、昨日の勝利で通算24勝12分6敗となった。42試合戦って、たった6敗しかしていない代表チームが、なぜブーイングを浴びなければならないのか。「結果」を出してきたにもかかわらず、8割以上のファンが、岡田サンを支持しないと言い出したのか。単純に考えておかしな話だと言わざるを得ない。

「勝利」に、喜びを見いだせなかったからにほかならない。一つひとつの「勝利」に重みが感じられなかったからにほかならない。

 つまり、勝っても素直に喜べない相手と、岡田ジャパンは数多く対戦してきたことになる。

 それこそが、サッカー人気の低下を招いた大きな原因だと僕は思う。民放のキー局が、ゴールデンタイムで生中継するに値する試合は、この中にいくつあっただろうか。

 日本には、バルセロナもレアル・マドリーも、マンUもアーセナルも存在しない。クラブのサッカーに多くの国民が沸き立つ環境がないことも手伝い、関心は日本代表に集中する。その国際試合が、いつでもサッカー界のメインイベントになる。サッカーファン最大のお楽しみに祭り上げられる特殊な風土が日本にはある。

 にもかかわらず、サッカー協会が差し出すメニューは凡庸だ。日本代表の勝利は、喜ばしいことかもしれないが、42戦6敗は、ちょっと勝ちすぎだ。楽勝の連続は、エンターテインメントとして、むしろいただけないものになる。

 日本代表のサッカーの中身が、素晴らしければ、多少話は変わるが、実際はそうではない。正直言って、42試合の中で面白い! と言いたくなった試合は一つもなかった。勝ち星の数と、人気指数はとても比例関係にあるとは言えなかったのだ。

 そこで、岡田ジャパン万歳! と、数字や結果通りの原稿を書いても、インパクトはまったくない。サッカー人気に貢献することはできない。勝ってはいるけど、ちょっと待て、と言った方が、この世界は盛り上がる。面白く見える。狂ってしまったバランスを、多少なりとも是正することができる。

 岡田サンへの批判は、それに、元来から備える文句の多い体質が融合した結果になるが、もし、日本代表が負け続ければ、僕は、違うことを言い出しているかもしれない。

 理想的な姿は1勝1敗だ。勝ったり負けたりを繰り返せば、世論も50対50になる。常に、岡田続投か否かで、世の中は揺れることになる。
 
 サッカー協会が、サッカーの普及と発展を願う集団であれば、なによりこの1勝1敗の環境を作り出すことだ。勝ったり負けたりを繰り返し、代表監督問題で揺れる社会を自ら演出することだ。代表監督が手にする巨額な報酬は、さらし物になる代償と捉えるべきなのである。