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新たなエネルギー源として廃熱利用を普及させるというアイデアは尽きないが、また新しい試みの計画がこのほど明らかになった。

フィンランドのHelsingen Energiaが、教会の地下にデータセンターを建設し、そこから発せられる廃熱を地域の暖房システムに活用する計画を発表した。このデータセンターは、それ自体比較的エネルギー効率が高いものになるが、それでも風力発電タービン一基分に相当するエネルギーが廃熱の形で排出される。そこで、この熱で温めた温水をヘルシンキや周辺の家庭に供給して暖房に活用するというのがこの計画の概略。廃熱利用はタダではない(そのための装置を導入する必要がある)ものの、コストは比較的一定している。太陽発電は日没後には役に立たなくなるが、コンピューターは決して止まることはないからだ。

おそらくご存じないだろうが、いま廃熱利用に関する研究は黄金期の幕開けにある。米国全体では一年間におよそ100クァド(quad=quadrillion:1000兆)BTU(British Thermal Unit:英熱量)のエネルギーが消費されているが、そのうち55クァド〜60クァドBTUは廃熱として無駄にされていると、UCバークレーのアルン・マジュムダール教授(Arun Majumdar)は述べている(同氏は現在、米エネルギー省のARPA-Eを率いている人物)。また廃熱利用の場合、新たなエネルギー生成コストがいらない。つまり簡単にいうと、熱の形をとるこのエネルギーはすでに顧客のもとの届けられているものの、生産的な目的に活用されていないだけ、ということ。米国ではさまざまな新興企業が、廃熱をより効果的に活用したり、あるいはノートPCの駆動時間を延ばすような製品をまもなくリリースするだろう。このリンク先のページを読めば、これらの製品に関する話がわかるはずだ。

[著者:Michael Kanellos(Greentech Media)/抄訳:坂和敏/原文公開:11月30日(米国時間)]

原文はこちら:
"New Source of Household Heat: Data Centers"

訳者コメント:
原文では仕組み等によくわからないところがあったので、ネタもとのReutersの下記記事を読んでみました。それによると、このデータセンターが構築されるのは、ヘルシンキにあるウスペンスキー教会(Uspenski Cathedral)という人気の観光スポットでもある建物の地下で、来年1月に稼働開始予定とのこと。このデータセンターは、AcademicaというITサービス企業がクラウド・コンピューティング用につくるものだそうです。また「データセンターでは実際の計算処理に使われているエネルギー量は全体の40-45%に過ぎず、残りはサーバの冷却に使われている」とか。このサーバから出る熱を利用して水を沸かし、できた温水を地域に張り巡らされた給水管網に送り込む、という仕組みの模様。下記の部分から察するに、そのための給水管網(水道とは別?)はすでにある、ということでしょうか。


Finland and other north European countries are using their water-powered networks as a conduit for renewable energy sources: capturing waste to heat the water that is pumped through the system.

なおBTUという単位についてはWikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/英熱量)に以下の説明がありました。


英熱量(British Thermal Unit:BTU)は1ポンドの水の温度を華氏度で1度上げるのに必要な熱量と定義される。すなわち、カロリーの定義をヤード・ポンド法の単位に置き換えたものと言える。

また同ページには「quad(quadrillion(1000兆)の略)は10の15乗英熱量と定義される。」という記述もあります。

関連英文記事:
"Cloud computing goes green underground in Finland"