中国南部の海南省に住むヤン・フェンさんは、ほんの数か月前まで、妻と6歳の娘とともに平穏に暮らしていた。ところがある日、妻がすべての貯金を持って別の男性と駆け落ちしてしまい、行方がわからなくなってしまう。ヤンさんは妻の捜索を試みたものの、結局発見には至らず。それでも妻への愛情を断ち切ることができなかったヤンさんは、あるアイデアを思い付いた。娘をマラソンランナーとして育て、メディアに脚光を浴びる姿を見れば、きっと妻は戻ってくるだろう……と。 

ヤンさんの娘は、6歳にして飛び級で小学3年生の勉強を習うほど優秀で、さらに歌やギターなどの音楽、パソコンにも優れているという。何をやってもきちんとこなしてしまう娘を、ヤンさんはマラソンランナーとして育てるべく、驚くほどのスパルタ教育で鍛え始めた。

英字紙シャンハイ・デイリーによると、ヤンさんが娘に課したのは「2日で138キロ走らせた」というほど過酷なもの。138キロはヤンさんの故郷と、妻の故郷の距離にあたるそうだ。彼女は学校を終えるとマラソン漬けの日々で、時には9時間も練習を余儀なくされ、夜中に及ぶことも。そんな練習をこなしながらも、成績優秀な彼女は勉強も疎かにはしていない。

「娘にメディアの注目を集め、妻の注意を引きたい」(中国通信社より)と、はっきり言ったというヤンさん。良くも悪くも目的がハッキリしているためか、その方針に今のところブレはないようだ。過酷な練習を続ける毎日なだけに、娘の足は腫れ、健康が心配との気持ちを明かしながらも「トレーニングは続ける」と明言している。なお、来年海南島で開かれる省主催のマラソン大会にもエントリーさせる予定らしい。

しかし、海南省体育局に勤めるある研究者は「心身を疲れさせるトレーニングで、女の子の健康状態を損ない、成績強化にも結び付かない」(シャンハイ・デイリーより)と指摘。省の教育当局も、ヤンさんの行動を「自己中心的だ」(同)と非難している。6歳の娘がどのような心境なのかは伝えられていないが、健やかに育つのを祈るばかりだ。