「原君よりも仕事ができれば、御の字です」と加藤社長。

写真拡大

   「原君、どこ行ってしもうたんやーー」。失踪した社員の「捜索願い」のような求人広告がネットで話題になっている。広告に出てくる「原君」は実在する中小企業の社員。5年前に入社、仕事は全然しないし、取引先からも大目玉をくらうといったダメサラリーマン。この「ボロクソけなし広告」が求職者の共感を得たのか、応募者が殺到する事態になっているのだ。

クビにしたいが我慢して使っている

   兵庫県伊丹市に本社がある、加藤電機製作所という中小企業が不思議な求人広告を「リクナビNEXT」に2009年2月19日に出した。従業員数は 13人、年商は 2億5000万円。シャープなどの大手クライアントを持ち、制御盤、操作盤などの設計・製作をしている。広告には「原君、どこ行ってもうたんや…」という見出しが躍り、同社の加藤聰社長が苦悩する顔写真まで掲載されている。「原君」は5年前に取引先の社長から頼まれ、仕方なく採用。経歴が立派だったため期待したが仕事を全くせず、この日もどこに行ったのかわからない状態なのだそうだ。加藤社長は「原君」をクビにしたいが、次に雇ってくれるところがないだろうと我慢しているのだそうだ。

   ただ、加藤社長は最近「原君」を多少評価しているようで、「ハードはダメだがソフトを任せたらピカイチと気付いた」と広告の中で明かしている。また、仕事ができないばかりか無口な「原君」だが、意外なことに、

「年に一度の社員旅行では人一倍盛り上がる影の宴会部長だ」

というフォローもしている。

   つまり、この会社は困った社員であっても、懇切丁寧に指導、育てる度量を持っている、と広告で言いたかったようなのだ。

「根気よく使っていれば、長所が見つかるもんです。それぞれの長所をうまく活かしてやれば、大手にだって負けないすごいもんが作れたりします」

   その理由は、これまで公募で採用しても「原君のような人」しか来なかったから。今回の募集でも、すごい人を望んでいるわけではなく、「原君よりも仕事ができれば、御の字」なのだと書いている。

「原君」は実在する社員だが、今回の広告は見ていない

   この広告が出て一週間もしないうちに70人もの応募があり、同社は対応に追われている。応募してきたのは20代、30代が中心。つまり、この広告は多くの求職者の共感を集めたということになる。なぜこのような広告を打ったのか同社の加藤雅士技術営業部長にJ-CASTニュースが聞くと、

「リクルートと相談し、やめようかどうしようかと迷いましたが、こういうユニークなもののほうが当社をよくあらわしていて、親しみやすいのではないかと思い直し決めました」

と話した。また、「原君」は実在する社員だそうで、今回の広告について「原君」はどう思っているかというと、

「現在彼は出張中のため、この広告はまだ見ていないと思います」

ということだった。

J-CASTニュースとは?

従来のマスコミとは違うユニークな視点で、ビジネスやメディアに関するさまざまな記事を発信しています。読者投稿のコメント欄も充実!
会社内の「人間関係」をテーマにした「会社ウォッチ」も10月オープン!