■選手と良好な関係を築くことが第一
 昨シーズン、残念ながら様々な審判問題がJリーグで起きた。その内容は大きく分けると二つ。一つは、判定ミスという審判自身の問題。もう一つが、選手と審判員の関係の構築“マンマネジメント”が上手くいかなかったことがあげられる。
 この二つの問題が起こると、どこかモヤモヤする。スタジアムには消化不良感が蔓延し、純粋にサッカーを楽しめなくなってしまう。逆に、審判が目立たなかった試合の中には、海外サッカーに負けないくらいスピーディーな試合もあった。
 
 では、審判が変わればこの問題は一気に解決するのか。答えはノーだ。この問題は審判だけの努力では解決できない。
 2月8日から15日にかけて、宮崎で行なわれたプロフェッショナルレフェリー(PR:日本サッカー協会と契約するプロの審判)をはじめとするJ1担当主審の合宿では、問題の一つ、マンマネジメントについてのディスカッションも行なわれた。
 
 たとえば、試合中に選手が激しい異議を唱える。これに対し、どのように対応するべきかというディスカッションでは、「それ以上言ったらカードを出しますよ」とできるだけ高圧的にならないような対応を心がけるべき、という意見があがった。しかし、それでも選手が異議をやめなければ審判はカードを出さざるをえない。そして、カードを受けた選手がさらにエキサイトしてしまえば、審判と選手の関係は一気に悪化してしまう。これは、昨シーズンもよく見られたシーンだ。
 この一連の流れはマンマネジメント不足だけから起こる問題ではない。選手側にも問題がある。こういったシーンで審判だけを非難しても本質は見えてこない。
 
副審はもっと判定に関わるべき
 とはいえ、審判側が非難を受けるべきものもある。それが、判定ミスだ。主審が技術を上げていけば、間違いなく判定ミスは選手関係なしにJリーグから減っていく。その判定ミスを減らす鍵を、上川徹トップレフェリーインストラクターは、「主審が良いポジショニングをとることだ」と分析する。今回の合宿では、そのポジショニングが重視されたトレーニングが組まれた。
 
 そのなかに興味深いトレーニングがあった。副審のいるサイドから中央にドリブルで切れ込んでいくシーン。これは主審にとって、最も判定が難しい。というのも、主審には副審の反対側、ピッチを斜めに走る対角線審判法というものがある。つまり、主審にとって副審のいるサイドは最も遠いスペースになるのだ。
 右サイドを突破した選手が倒れる。ファールかノーファールか。はたまたシミュレーションか。カードを出すべきか。さらにはPKなのかFKなのか。これが重要なポイントになるし、ここでのミスは試合を左右してしまう恐れもあり、審判だけでなく選手にとっても重要な場面だ。
 このポイントを、判定が終わった後に検証していくのだが、副審側から「今の判定は違うのではないか」という声が何度かあがった。それくらい、この位置でのファールは難しい。
 
 だから、私は違和感を覚えた。なぜ、副審側がもっと判定に関わらないのだろうと。私が見た昨シーズンの試合では、副審の目の前のプレーなのに、副審がファールをとらず、主審がファールをとるシーンがいくつかあった。
 また、ペナルティエリアのラインぎりぎりのところでファールがあった際、「あれはFKではなくPKではないか」と試合後に監督や選手が判定に不満を表すことがあったが、これも副審が関わってくる。というのも、ペナルティエリア付近でのファールの際、FK、つまりラインの外でファールがあったと判断したならば副審はその場で止まる。PKならば副審は内側に回りこんでいくという約束事がある。審判団というチームとして、より正確な判定をするために作られた約束事だ。