ソーシャルレンディングを始めるmaneoのホームページ

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   ネット上で個人間の融資を仲介するソーシャルレンディング。日本でも、いくつかの事業会社が、そのサービスを2008年秋にも始める。「普及する可能性がある」と見る専門家もいて、新しい市場に注目が集まっている。ただ、一方で、プライバシーなどの課題も指摘されている。

個人が自分の信用度によって金利を安くできる

「結婚が急に決まった。その費用を賄いたい」
「子どもが生まれたから、大きなワゴン車がほしい」

   こんな望みを個人による融資でかなえようというのが、ソーシャルレンディング、あるいはP2P(People to People)融資だ。欧米では最近、サブプライム問題で銀行の貸し渋りが増えたこともあって、市場として急成長しつつある。

   例えば、小笠原さん(仮名)が、登山旅行したいが、貯金が足りないとしよう。事業会社のソーシャル・ネットワーキング・サービスのサイトで、月収36万円といった自分のプロフィールと、借りる目的「日本アルプスに2週間滞在」とともに、希望する融資額25万円、金利9%、借入期間6か月と書く。それを見て、貯金を増やして新車がほしい鈴木さん(仮名)ら3人が、融資を申し出、オークションで鈴木さんら2人が一番低い貸出金利7%で落札。それぞれ10、15万円を小笠原さんに融資することになる、という仕組みだ。

   これは、日本で初めてこのサービスを2008年9月中にも始める事業会社「maneo」のサイトにあるソーシャルレンディングの説明だ。

   maneoの妹尾賢俊社長は、三菱東京UFJ銀行の出身で、英大手Zopa社のサービスに興味を持ち、07年4月3日に会社を立ち上げた。「銀行の融資利率は、法人は会社によって決まるのに、個人では一律。しかし、ソーシャルレンディングなら、個人が自分の信用度によって金利を安くできると知ったことが事業の動機です」と広報担当者。貸し手にとっても、銀行預金より高い金利で資金を運用できるのがメリットだ。「スタートしたら知らせてほしい」などと反響は多く、メルマガには1日で30〜40人が登録しているという。

   ソーシャルレンディングには、英Zopaが、08年中の日本参入を目指して、同年3月7日に「Zopa Japan」を設立したと発表。また、米最大手プロスパー・マーケットプレイスも、07年8月6日にSBIホールディングスと合弁会社「SBIプロスパー」を日本で設立することで合意し、08年中の開業準備を進めている。

実名、住所、顔写真を出さない匿名が原則

   ただ、ソーシャルレンディングでは、プライバシーをどう守るかが課題だ。

   maneoでは、実名、住所、顔写真を出さない匿名を原則とする。そのうえで、源泉徴収票などから年収を、全国信用情報センター連合会から借入状況を同社がチェックする。日本には、個人対象の格付会社はないが、同社で点数制の「maneo score」を作成し、判断材料にしてもらう。「例えば、バイクが好きな人のコミュニティを作り、趣味で人となりを表現してもらいます。そこで、匿名でも信用してもらえるようになれば、『うちの子も塾で大変だったので、お金を貸してあげたい』となるのでは。日本は、相互扶助の土壌があるので、次第に融資の抵抗感が減ると考えています」と広報担当者は言う。

   SBIプロスパーでも、プライバシーについては、同様な方針だ。「匿名を想定しており、顔写真は出さなくてもいい形にしたいと思っています。日本なりの特色を考え、情報の面白さというコミュニティ的な側面を活用していく予定です」。個人の格付については、AA、A、B、Cで格付けしている米本社を参考に、自社でやるかを含めて近く最終判断したいとしている。

   このサービスに詳しいITジャーナリストの佐々木俊尚さんは、「日本でもうまくいく可能性は十分あります」と語る。

「日本では、個人がお金を借りようと思っても、金利や返済期間が一律で自由度がありません。所得がある程度ある人からは、『生活に困っている人と同じ金利なのは納得できない』と不満があります。ソーシャルレンディングでは、借り手が銀行より安く借りることができ、貸し手も金利が低い銀行預金やハイリスク・ハイリターンの株投資に比べてミドルリスク・ミドルリターンです」

   一方、ハードルもいくつかあるという。

   「アメリカでは、プライバシーの概念が低いので、顔を晒して、『子ども2人を抱え、夫がいなくて大変』と訴えるような人がかなりいます。そこまでの情報がないとお金を貸す人は少なく、どこまで情報をすくい上げられるかが課題になるでしょう。ネットオークションのようなトラブルや犯罪の心配もあります。会社の格付も確立していない日本で、個人はもっと難しいと思います。情報を数値化しても、どこまで信頼できるかという問題もあります。そこをうまく乗り越えて日本の文化になじめるようになれば、普及するのでは」

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