アメリカのポルノ業界においてDVD販売数は急速に減少しているとのこと。これの主な原因が、YouTubeのポルノ版と言われている「YouPorn」というサイトの存在。月間1500万人のユニークユーザー数を誇っており、プロの作品のみならずアマチュアによる投稿もあるため、多くのユーザーを奪っており、これに頭を悩ませた世界最大のアダルトビデオ制作会社「Vivid Entertainment Group」の創立者であるSteve Hirsch(スティーブ・ハーシュ)氏が今年の5月18日に、YouPornの設立者の一人であるStephen Paul Jones(スティーヴン・ポール・ジョーンズ、偽名)氏と会談を行ったとのこと。

というわけで、日本ではほとんど知られていないアメリカのポルノ業界の詳細は以下から。
YouPorn Vivid Entertainment Profile - Portfolio.com

■YouPornの実態


そもそも「YouPorn」は2006年9月より開始されたサイト。事実上無制限にさまざまなアダルト関連ムービーを閲覧できるようになっており、ユーザーがアップロードすることも可能。そのため、プロの作品からアマチュア撮影によるものまで多くのムービーが存在しており、世界で最も多くの利用者を獲得しており、利用者数は2007年5月に1500万ユニークユーザーに達し、YouTubeと同じく、収入よりも多くの転送料が発生。毎月37.5%ずつユーザー数が増加しているとのこと。全ユーザーの12%がアメリカからのアクセスで、残りはそれ以外の国。YouPornにはジョーンズ氏以外にももう一人の設立者がおり、彼はオーストラリア在住の若いマレーシア人で「Zach Hong」という名前だそうです。

ジョーンズ氏は彼自身の言うところによると27才で、カリフォルニア州のニューポートビーチに住んでおり、何十億かの資産を管理するヘッジファンドを運営しているとのこと。なぜ偽名を使っているのと言うと、もしYouPornを運営しているのがばれたら上司が彼を解雇するため、だそうです。そもそも彼自身は設立に携わった一人であって「所有者」ではなく、彼が行ったのはYouPornのサイトの根本的なプログラムを書いたこと。いわゆる真の設立者は「あるドイツ人」で、今も一般的なYouPornの業務全体を毎日行っているとのこと。

しかし実際にはジョーンズ氏は27才ではなく40才で、住んでいるのもニューポートビーチではなくサウス・レーク・タホ。過去20年の間に一度もポルノ産業に従事したことはなく、以前は警備会社に勤めていたらしい。彼の本当の名はスタンフォード大学の卒業生名簿に掲載されており、M.B.A.を昨年取得、スカイダイビング、スタント操縦およびスノーボードが趣味。巨大な裏庭を備えたロッジ風の3階建ての家に住んでおり、家族にはこの仕事のことは秘密にしているらしい。彼の考えているYouPornの収益モデルはSkypeと同じモデルであり、「1億人のユーザーがいれば、その1パーセントにあたるユーザーは1か月当たり10ドル(約1050円)支払うのであれば、収入は1億2000万ドル(約127億円)になる」というものだそうです。

■YouPornを買収したい理由


そもそもVivid社がYouPornの買収に興味を持ったことには理由があり、2004年からDVDの売上が50%も低下。その理由として、インターネットで見るYouPornなどのビデオがVivid社から市場占有率を奪っていたことがわかったため。これはVivid社だけの問題ではなく、同様にしてポルノ産業に従事しているライバル会社、Wicked Pictures・Evil Angel・Digital Playground・Red Light District・Penthouse Media Group・Hustlerも同じ問題に直面しており、一体どれぐらいのレベルかというと音楽産業がファイル共有ソフトによって食らった大打撃、あるいは新聞の広告がオンライン広告サイト「Craigslist」によって食らった打撃と同じレベルらしい。

これぐらいの打撃を業界に与えているYouPorn、一体どれだけの収入を得ているかというと、毎月12万ドル(約1265万円)ほど。そして、YouPornの所有者であるジョーンズ氏の希望する買収額は2000万ドル(約21億円)。

■現在のポルノ市場について


次に、本当に高額な買収に見合う価値があるのかどうか、現在のポルノ市場について見てみましょう。

Vivid社のアダルトビデオはポルノ業界の標準から見てもかなり高い方で、高価なセット・有名人の起用・上等なパッケージがウリ。制作するための予算は1本当たり5万ドル〜30万ドル(約530万円〜約3180万円)、市場に流通させるためにさらに2万ドル(約212万円)かかるとのこと。DVD1枚当たりの価格は25ドル(約2600円)。これで年間約60作品を制作し、収益は1億ドル(約106億円)に達するとのこと。これが今から3年前の状況で、全売上の80%がDVD販売によるものだったそうです。しかし今年は国内でのDVD販売は30%にまで低下。5年以内にDVD販売が「ゼロ」近くにまで落ち込むと予想しているそうです。これはVivid社だけの傾向ではなく、Adult Video Newsによると2006年には業界全体の総売上高が11パーセント下落して38億ドル(約4030億円)まで低下したそうです。

しかし、これらの業界のメインとなる会社以外においては年間50万ドル〜500万ドル(約5300万円〜約5億3000万円)の利益を生む小さな会社が約100社ほどできており、これらの会社は1本当たり1万ドル以下の低予算で作品を作っているとのこと。これらを1枚あたり8ドル〜10ドル(840円〜1060円)の卸値で1000枚から1200枚ほどでさばいているようです。

対してインターネットにあるアダルトサイトの販売額は前年度比で14%成長しており、28億ドル(約2966億円)まで達するとのこと。中でも最も稼ぎ頭なのは毎月会費を支払うことでそのサイトにあるポルノコンテンツにアクセスできるようにするという、いわゆるサブスクリプション形式のサイト。先ほど出てきたVivid社のVivid.comは中でも最も成功しているサイトだそうです。毎月30ドルを支払う加入者が約4万人いて、年間収益は1500万ドル(約15億8000万円)になっています。

■新技術が初めてポルノ業界に打撃を与えた


今までは新しい技術が登場する度にポルノ業界はうまくそれを利用していました。例えばVHSビデオが登場したときにはそれを利用することによって、今まで劇場まで足を運んでいた人が自宅でポルノを閲覧できるようになり、利益が上昇。それでもまだ直接店へ出向いて買ったりする必要があったわけですが、いわゆるネット上での電子商取引によってその手間さえもなくなり、ポルノDVDの売上が急上昇してきたわけです。

しかし「Web2.0」は新技術としては初めてポルノ産業に大打撃を与えるものになった、というわけ。最初は誰もがインターネットによってさらに大きく売上が上昇すると思って興奮していたようですが、実際には反対のことが起きたわけです。

中でも脅威となったのが、先述したYouPorn。さらにPornoTubeとMegaroticが続いており、これら2つのサイトは主として無料だが制限のあるムービーコンテンツで客を引き、より多くのコンテンツを高速にダウンロードできるということで有料のプレミアム会員を売るというモデル。特にPornoTubeはそれ自体で利益を上げると言うよりは宣伝の意味合いが強く、PornoTubeを運営している親会社にとっては利益を上げる部門ではなく、マーケティング費として見ているそうです。しかしながら管理はきっちりと行っており、PornoTubeの従業員は全部で10人、一人当たり21万のビデオを監視しており、児童ポルノではないことを確認するため、出演している女優の年齢を確認したり、著作権を侵害していないかどうか(中小のポルノ制作スタジオが自分でアップロードしている場合は問題がない)、勝手に誰かのプライベートなムービー(例えば別れたボーイフレンドが勝手にアップロード)ではないかどうかということまでチェックするそうです。

なお、いろいろな経緯があったものの、Vivid社は結局、いろいろと法的な問題があるということでYouPornを買収することは断念したとのこと。YouPornの設立者の一人と目されているジョーンズ氏はそれからあともさらにいろいろなポルノ業界関係者に売却の話を持ちかけているそうです。

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