5日に福岡で開催された柔道の全日本選抜体重別選手権。北京五輪の代表選考にリンクしたこの大会では、波乱が続出した。男子60キロ級では五輪4連覇を狙う野村忠宏(ミキハウス)が準決勝で敗退。女子48キロ級では、女王・谷亮子(トヨタ自動車)が山岸絵美(三井住友海上)に決勝で敗れた。

 この結果を受けて、注目を集めた代表選考だったが、その決着は不可解な決着となっている。たとえば、女子は谷の48キロ級含めた6階級の代表のうち、今大会の優勝者は52キロ級の中村美里のみ。北京五輪本大会に不安が残るのはもちろん、選考基準が玉虫色の印象が強かった。

 過去に圧倒的な実績を誇る谷亮子も例外ではない。谷の場合、昨年に続く決勝での敗戦だ。11歳年下の山岸に開始34秒で送り足払い足技で効果を取ったが、その後は完全に主導権を握られた。1分54秒に巴投げで有効を奪われ、さらに大外返しで2つ目の有効を奪われた。過去3戦全勝と圧倒してきた相手に完敗で、"最強"の称号はかなりかすんできている。

 今回だけではない。前回の福岡でも、谷は決勝で福見(了徳寺学園職)に敗れている。昨年の場合はまだ、産休明けで2年ぶりの復帰戦というエクスキューズもあった。また、その実績を評価されて出場した世界選手権では金メダルを獲得し、健在ぶりもアピールしている。とはいえ、2年連続で"国内敗戦"を喫した谷に対し、強化委員会が出した答は満場一致での当選。過去の実績を重視した結論とされているが、これでは優勝した山岸の立つ瀬はない。

 そもそも強化委員会による選考は、透明性が低く、ブラックボックス化しているとの声は以前からある。選考大会が体裁だけの『出来レース』と言われないためにも、「過去の実績」といった抽象的なものではなく、具体的な選考基準が必要だろう。
【Sports Watch】