木村カエラ(撮影:野原誠治)
 2週連続オリコン1位を記録した前作「Scratch」から1年2ヶ月、今月2日に4作目のアルバム「+1」(プラス・ワン)を発表した木村カエラ。自分だけの感情では生きていけないことでの「+1」。生活する中で当たり前にあるものを1つ足すことにより、大切なもの、必要なもの、大事なものの存在がもっと見えてくる。みんなにとって「+1」の幸せが訪れるといいな、そんなカエラの願いがこのアルバムには込められている。

――抽象的な例えですが、前作の「Scratch」がポップで振り幅の広いアルバムだったのに対して、今作の「+1」ではその中でも「TREE CLIMBERS」のような、よりロックな部分がクローズアップされて、1曲目の攻撃的なイントロの「NO IMAGE」から始まり、ギターの歪み具合や、ベースとドラムのリズムパターンが非常にライブ感のあるサウンドで、すげーカッコイイアルバムを作ってくれたなと個人的にも嬉しい気持ちになりました。「+1」を作るにあたって、どういうアルバムにしようと考えていたのですか?

木村カエラ(以降、木村):去年はすごくいっぱいライブをやった一年で、その中で意外に自分の曲はミドルテンポなものが多いな、もうちょっとテンポの速い音楽が入った方がいいな、と思っていて。それで今回こういう楽曲がいっぱい集まった、というのはありますね。

――歌詞を見ていると、メロディを重視した言葉遊び的なフレーズが多くて、直接的なメッセージや、詳細なストーリーが描かれているわけではないのですが、日常生活で聴いていて全曲を通じてすごく元気になれるアルバムだなと。

木村:ありがとうございます!

――「+1」というタイトルにしようと思ったきっかけは、何かあったのですか?

木村:テーマだけは漠然とあって、「+1」というタイトルが決まったのは、結構アルバム制作の後半で。そのテーマというのが、「平凡な日々が素晴らしく思えるようになるためには?」みたいな。「本当は素晴らしいものなんだけど、自分の考え方次第できっと何もかもが変わってくるんじゃないかな?」というメッセージを込めたいなと思っていて。

 「Samantha」というシングルを出した時期に、自分のことを見つめ直すことがすごくあったんですね。“素直な気持ち”というのを見つけるのが、すごく難しいなと思っていて。自分の素直な気持ちが分かると、人に何かをしてあげても自分が犠牲にならない強さができたり、すごく色々なことのためになるというか、そういう気がこの2年間でしていて。やっぱり悩んでいる時とか、自分のことしか考えられなくなっている時って、結局自分の素直な気持ちが頭で理解できないで、体と心がバラバラになっている状態なんだな、って私自身がすごく感じていて。なので、それが一致するといいなという気持ちでアルバムを作っていて。

 アーティストは「こういうアルバムを作りたい」とか、曲に関して「こういう意味がある」とか色々と言うけど、アルバムを聴いてくれている人達は雰囲気モノで好きだったり嫌いだったり、そういう風に曲って聴くものだと思うし、そこまで意味を必要としていない人がほとんどだと思っているんだけど。ただ、きっとすごく悩んでいる人もいるだろうし、そうやって「曲を聴いてどれも元気になる」と仰ってくれたのは、すごく嬉しいことなんです。本当に「聴いて元気になるような効果が少しでもあればいいな」と思っていて。

 ただ、単純な応援ソングにはしたくなかったので、今回はすごく感覚的に詞を書く曲が多くて。耳で聴いて元気になるんだけど、自分で覚えて初めて歌ってみた時に「なんか、この感情って…!?」と思うような曲をいっぱい作りたかったんですよね。すごく分かりづらい言葉だったり、感覚的に書いているものが多いので、そこで自分の気持ちを「なんだろう?この感情」と思えるようなものにしたいという感じでアルバムを作っていきました。

 「+1」というタイトルにしようと後々になって決めたのは、何を足したらその自分の素直な気持ちが見付けられるか。きっと当たり前にあるものが、一番分かりやすいのかな?と思っていて。例えば夕日だったら、「赤いなぁ」とか「懐かしいなぁ」とか「なんか寂しいなぁ」とか、誰もが直で思うじゃないですか。その目で見て素直に思える感覚のものをいっぱい足して欲しいな、そういう素直さを求めて欲しいな、というメッセージが込められた「+1」です。