「Web2.0何も生み出していない」 ひろゆき氏一刀両断
巨大掲示板「2ちゃんねる」の管理人、「ひろゆき」こと西村博之氏(30)が、2007年10月14日、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の学園祭でトークライブを行った。ひろゆき氏は「セカンドライフ、何が面白いのか」「Web2.0で何も生まれていない」などと「はやり物」を次々に一刀両断にして会場を沸かせたほか、「ニコニコ動画」についてのやり取りも活発に行われた。
あんまりネットって、面白くないですよ
トークライブは、司会者や観客が、ひろゆき氏に次々に質問していく、という形式で進められた。
ひろゆき氏は、最近の「流行キーワード」を「結局は何も変わっていないではないか」と次々に批判。例えば「Web2.0」という言葉については、「どちらかと言えば嫌いな部類」とした上で、
「Web2.0って言って、そのとおり新しいものが出来たかっていうと、別にそうでもなくて、なんか『Web2.0企業』って名乗った会社が上場して、一般投資家からお金を集めて株価が下がって困ったりとか、ひたすら本を売っていて中身のない本が売れている、みたいな状況になっていて…。新しい価値が生まれたのかと言えば、別に何も生まれてない気がする」
と、結局は看板に踊らされただけで何も生み出していない、と指摘した。
同様に、iPodの新機種である「iPod Touch(アイポッド・タッチ)」も
「何が出来るかっていうと、音楽が聴けるとか、今までのiPodと、そんなに変わらないじゃないですか?でも、それに対してお金どんどん投資してなんか良いことあるの?って思いますよね」
まだ米国でしか発売されていない米アップル社の携帯電話「iPhone(アイフォン)」に至っては、
「アメリカ国内で使う分にはいいと思うんですけど、日本で使えない電話を、わざわざなんか1,000ドルとか出して買ってるやつは頭が弱いんじゃないか」
オンライン上の仮想3次元空間「セカンドライフ(Second Life)」についても、
「一応ログインしてみたのですが、20分ぐらいで飽きてしまって…。何が面白いか全く分からなかったですよ。画がしょぼいし、やれることも少ない」
と切って捨てた。また、ウェブの世界一般についても、
「あんまりネットって、面白くないですよ?予算でいくと、映画が一番大きいじゃないですか?2時間に対して、数十億とかかける訳じゃないですか。ウェブサイトって、どんなに頑張っても、サイトに1億円かけることってないですよ。お金かけるってことは、それだけ頭のいい人が集まって、色々頑張って、面白いものをどーんと作る訳じゃないですか?そういう意味でいくと、映画とかテレビの方がよっぽど面白くて、次にゲームがあって…」
と、かけられる費用の違いを根拠に「映画やテレビほどネットは面白くない」との見方を示した。
「ニコニコ動画」の単月黒字化は結構微妙
会場からは「ニコニコ動画」についても、質問が相次いだ。ユーチューブとの違いについて聞かれると、
「ユーチューブの場合は、動画自体が面白くないと見る気にならないんですけど、ニコニコ動画の場合って、ものすごくつまらないものを見た時に、『ものすごくつまらない』って罵倒しているのが面白かったりするんですよね」
と、「動画+コメント」でコンテンツとして面白いものになっている、と説明。回線容量の問題で、無料で登録できるユーザーの利用時間を制限していることについては、サーバーの増強を進めているとしながらも、
「いつごろそれ(時間制限の問題)が解決するかというと、誰も分からない状況になってしまいました。先月ぐらいでは、1人あたりの(視聴時間)平均が1時間見るか見ないかぐらいだったんですけど、最近は1人当たり2時間とかなっていて…」
と、急速にデータ量が増えていることから、問題解決のめどが立たないことを明らかにした。ニコニコ動画をめぐっては、08年9月期には単月黒字を目指す方針が明らかになっているが、ひろゆき氏は、この見通しについても懐疑的なようだ。講演後に行われたJ-CASTニュースなどとのインタビューでは、このように、データ量の急激な増加が業績に影を落とす可能性を表明している。
「今の状況で設備を増やすことができていて、かつ、会員がそのままの速度で増えるのであれば、計算上(単月黒字に)なるかも、って話です。いわば、捕らぬ狸の何とやら。1人1時間だったもの(視聴時間)が2時間になるってことは、設備投資が2倍になるってことじゃないですか?コストが2倍になるので、単月黒字になるまでの壁がどうなるかって言うと、どんどん遠のく訳じゃないですか。そういう意味では、(単月黒字化は)結構微妙な感じですけどね」
少なくとも1億円以上の年収
相次ぐ訴訟についても話は及んだ。会場からの
「多くの裁判を抱えていますが、身の危険を感じることはありますか?」
との質問に対しては、
「別にないですけどね。別に裁判官が殴りかかってくるわけでもないですし。割と裁判所って楽しいですよ。裁判官は堅そうな雰囲気なんですけど、結構話してみると面白い人が多いですよ。そういう意味で、1〜2回訴えられるといいですよ」
と応じ、会場の笑いを誘った。
訴訟と言えば、ついて回るのがひろゆき氏の収入についての話題だ。06年の講演では「日本の人口(約1億2,700万人)より少し多いくらい」としていたが、今年は違った角度からの説明をした。
「サラリーマンの生涯年収ってあるじゃないですか。だいたい20歳ぐらいから50何歳まで働いて…。で、その人たちが生涯にわたって払う税金の額ってあるじゃないですか。僕が去年払った税金の額は、多分それより多いです」
正確な試算は困難ながらも、06年同様、少なくとも1億円以上の年収があることを示唆した形だ。2ちゃんねるからの広告収入や、「ニワンゴ」の役員報酬など、多方面から収入を得ていると言われるひろゆき氏。J-CASTニュース記者が講演後のインタビューで疑問をぶつけてみたが、
「学園祭でしか、実はお金の話、してないんですよ。学生が興味を持ったことを答えるのは割と重要かなーって思うんですけど、仕事でそれ(質問)やっている人にいちいちそれ言っても意味がないんじゃないか、って気がしちゃうんですけど」
と、収入の内訳については明らかにしなかった。
ひろゆき氏が講演会に登場するのは、06年11月の早稲田祭以来、ほぼ1年ぶり。
主催団体のひとつである「塾生150」代表の五十嵐健祐さんによると、
「最近様々なメディアにおいてひろゆき氏がウェブに対してコメントしており、御自身でもニコニコ動画などウェブ社会を革新するような活動をされているため、興味深いお話を伺えるのではないか」
として出演を打診、ひろゆき氏が快諾したのだという。