by Derek Thomson

インド・ムンバイ出身の27歳で、子どもを持つことに否定的な意見を持つ反出生主義者でもあるラファエル・サミュエル氏が、「同意なしに自分を生んだ」として両親を訴えています。

‘My Parents Are Extremely Proud of Me’: Antinatalist Raphael Samuel Who Sued His Folks for Giving Birth to Him | LatestLY

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反出生主義は、その名の通り「人間は繁殖すべきではない」と信じる哲学的な立場を指します。特に哲学者のデイヴィッド・ベネターが反出生主義を擁護したことで、哲学の分野でしばしば聞くようになった言葉です。そんな反出生主義者のサミュエル氏に対して、海外メディアのLatestLYが独占インタビューを行っています。



出産および育児は、地球上で何万年もの間にわたって行われてきた人類の存続に欠かせない重要な行為です。子どもは両親に感謝し、多くの場合は従順であるようにと教育されるものですが、産んだことを子どもが永遠に感謝してくれるとは限りません。反出生主義者たちは、子どもの意志にかかわらず出産するという状況に反対しており、「同意を得られないなら生むべきではない」として、子どもを生むことに否定的な立場を示しています。

サミュエル氏は、「生殖は地球上で最も自己陶酔的な行為です。ほとんどの場合、なぜ子どもが欲しいのかを聞いても『私が欲しいから』という答えしか返ってきません。反出生主義者の課題は、人々が子どもを作らないようにするために、どうやって説得を試みるかにあります。なぜ出生に反対するかといえば、人生は多くの苦しみを伴うものだからです」と語っています。



by Anna Kolosyuk

サミュエル氏は、「私は人間がいかにばかげた存在であり、自己奉仕ばかりしているかに気づいたのです。この事実は私をイライラさせます」「人間は生態系を壊し、大気を汚染しています」と語り、人間という存在は地球という生態系における呪いでしかないと主張しています。実際、ある研究によると、人間は地球上に生息する野生の哺乳動物の83%(全生命の0.01%)を殺しているそうです。

地球上には何百万種類もの生物が生息していますが、地球を支配しているのは人間ただ1種のみです。その結果、地球は前例のないレベルの環境危機に瀕することとなっています。サミュエル氏のような反出生主義者たちは、そのような状況にある地球の生態系そのものを心配し、さらに悪化していくであろう環境に産み落とされることとなる子どもたちの将来も懸念しているというわけです。

サミュエル氏が運営している反出生主義者向けの「Nihilanand」というFacebookページは以下から。

Nihilanand @thenihilanand - Facebook



サミュエル氏によると、反出生主義者は子ども嫌いというわけではなく、生殖が許されるのは「苦しみがなくなり、命の安全が保障される世界のみ」という考えであるとのこと。「人々は反出生主義が子どもを嫌う運動ではない、ということを理解していません。我々は必ずしも人間に無関心というわけではありません。不必要な繁殖を減らすことで、現代社会の苦しみを減らすことを望むだけの集団です」とサミュエル氏は語ります。

サミュエル氏は「子どもは人生で苦しめられるべきではない」という信念を持っており、子どもたちは「親に何も借りがない」ことを強調するとともに、「インドの人々は『子どもを持たないという選択肢』が存在することを知っておかなければなりません」とサミュエル氏は語ります。インドでは「両親は神である」という考えが根付いているため、サミュエル氏が「両親を訴えた」という報道が行われたあと、サミュエル氏は多くの人に非難され、Facebook上でも「恩知らず」というコメントが書き連ねられたそうです。しかし、サミュエル氏自身は両親と良好な関係を築いており、「両親は私の独特の考えを非常に誇りに思ってくれていて、法廷で私の言い分を覆すことを誓っています」とサミュエル氏は語りました。