ソフトバンク・西田哲朗(左)と石川柊太【写真:藤浦一都】

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打倒・広島へはプルペン陣、ラッキーボーイがカギに

 シーズン2位から「SMBC日本シリーズ2018」への進出を果たしたソフトバンク。工藤公康監督は「パ・リーグの代表としてファンの皆さんに喜んでもらえるシリーズにしたい」と高らかに宣言した。

 相手は広島。西日本の雄を決する対決となった。ホークスとカープが日本シリーズで対戦するのは史上初で、さらに西鉄ライオンズ時代に遡っても「福岡×広島」の顔合わせはない。

 レギュラーシーズンの戦績は、ソフトバンクが82勝60敗1分だったのに対し、広島は82勝59敗2分と、リーグは違えどもほぼ互角だった。工藤監督は広島について「足を使った打撃のチーム」と印象を語っている。打線はどこからでも点を取ることができて、中軸には長打力もある。ソフトバンクと同タイプと言えるだろう。

 続けて「逆転の広島って言われるように、試合の後半になると勝ちへの思いをより強くして、チームとして1つになって戦っている」と警戒を強めるように言葉を継いだ。今年と昨年が41度、2年前は45度の逆転勝ちを収めている。

 となれば、「パーソル CS パ」でも威力を発揮したソフトバンクのブルペン陣が大いにカギとなる。日本シリーズでも武田翔太投手や石川柊太投手、大竹耕太郎投手といったレギュラーシーズンでは先発ローテを担った投手たちがリリーフで待機する。その中でも、特に武田の好調ぶりが光る。シーズンでは4勝9敗とプロ入り後で最も苦しんだ。投球フォームも登板のたびにコロコロ変わっていて迷走が明らかだったが、それも現在では安定している。

「シンプルに考えています。低め低め。それだけです。ちょっとでも球が浮いたら『ダメ、高い高い』とマウンドで口に出しています。自分に怒るくらいに」

「パーソル CS パ」では3戦無失点。ファーストステージとファイナルステージでそれぞれ1勝ずつを挙げた。日本シリーズでもキーマンとなりそうだ。さらに「勝ち運」を持っている石川にも期待大だ。「パーソル CS パ」ではやはり2勝をマーク。昨年の日本シリーズでも2勝を挙げている。

 短期決戦はラッキーボーイの出現も大事になる。「パーソル CS パ」ファイナルでは西田哲朗内野手がその役割を担った。日本シリーズでも引き続き活躍が期待されるが、正遊撃手の今宮健太内野手もこの日本シリーズから復帰できる見込みだ。ホークスの自慢はぶ厚い戦力層。ラッキーボーイの見極めも含めた選手起用には、大いに注目したいところだ。

「野球人生の分岐点になった」という2人のホークス指揮官

 また、工藤監督は広島との日本シリーズについて、自身の思い出を回想した。

「まだ西武にいた頃の1986年。初戦引き分けから3連敗しましたが、そこから4連勝しました。最後の方は緊張して唇も真っ青でした」

 史上唯一の第8戦。当時の工藤投手は3-2と勝ち越した直後の8回裏からマウンドに上がった。ピンチを背負いながらも2回無失点。歓喜の胴上げ投手となった。

「あそこを乗り越えられたことで、自分自身も変われたかなと思います」

 そして、この試合が「野球人生の分岐点になった」と語ったもう1人の男が、ソフトバンク前監督の秋山幸二氏だった。6回表に同点ホームランを放ち、本塁生還の際に、あの有名なバック宙ホームインを初めて披露したのだ。

「あれで“自分”というものが変わるキッカケになった。反響が大きかったしね。自分自身がより積極的になったし、責任も増した。何よりイメージもついた。あれがなければ『秋山幸二』というただの選手だったかもしれない」

 球界を代表するスターへのきっかけとなったカープとの日本シリーズ。今のホークスでその歴史を受け継ぐとすれば、上林誠知外野手に期待したい。今季は143試合にフル出場し、打率.270、22本塁打、62打点、13盗塁と、ブレイクを果たした昨季をさらに上回る成績を残してみせた。「パーソル CS パ」でもファイナル第3戦で1試合6打点の大活躍を見せた。

 昨年のポストシーズンでは自身の不甲斐なさに悔し涙に暮れた。イチロー選手に憧れる背番号51は、このひのき舞台を戦い終えた時、どんなたくましい表情を見せてくれるだろうか。(「パ・リーグ インサイト」田尻耕太郎)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)