引退会見で長谷川勇也と抱擁を交わす本多雄一(右)【写真:藤浦一都】

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今後も球団に残りたい意向示す「この球団に残れることが1番」

 今季限りでの現役引退を決めたソフトバンクの本多雄一内野手が3日、ヤフオクドーム内で引退会見を行った。ホークス一筋で13年間、戦ってきた本多は、最後まで“ポンちゃん”らしい誠実さを貫いた。スーツ姿で壇上に上がり、質問に対して1つ1つ言葉を選びながら丁寧に答えるその姿は、これまでの本多らしく“誠実さ”に溢れていた。

 以下、会見での主なやり取りの後半だ。

――プロ野球選手として一番大事にしてきたことは?

プロ野球は結果がすべてだという方がいらっしゃいます。もちろん、そうだと思います。その中で結果を残すために、練習そして、準備を怠らずにやること。野球にかける思いは強かったので、僕は常々球場に早く来て準備をする。13年間の中で準備の大事さをわかってきたので、試合に対する意気込み、そして準備が大事なんじゃないかと思い、それを毎日やってきました」

――誇れるものは、その準備を続けたということか?

「準備がなければいいパフォーマンスもできないでしょうし、自分の気持ちが落ち着かない。練習をしないと、試合でいい結果は残せない。ファンの皆さんの前でいいパフォーマンスができない。そういう思いでやってきましたし、すべては自分のためなので。自分のために準備を怠ると、バチが当たるんじゃないかと、そういう思いで1日1日大事にしてきました」

――高校の先輩である杉内投手、生年月日が同じ大隣投手も引退する

「まず先輩である杉内さんの引退を聞いて、正直ショックは大きかったです。プロに入ってからもそうですけど、中学校からの大先輩である杉内さんが鹿児島実業に行き、三菱重工長崎に行き、全部同じルート(本多は三菱重工名古屋)を通った自分が引退の年が一緒というのは少し情けないかなと思います。杉内さんに関しては、教えもいただき、ご指導もいただき、特別な思いがあります。(引退を聞いて)寂しかった思いはあります。大隣も誕生日が一緒ということもあり、仲良くさせてもらったこともあり、ケガで苦しんだこともあり、そういう思いを振り返るとなおさら寂しいです。言葉には言い表せないくらいの気持ちもありますし、今日登板するということで、目に焼き付けたいなと思います」

――この後、野球とはどう関わっていきたいか?

「もちろん13年間ホークスでやらせていただき、この球団に残れることが一番だと思っていますが、まだそこは球団としっかり話し合って決断していこうと思っています」

――ホークスの仲間に期待することは?

「ホークスというチームは常勝軍団だと思っていますし、ホークスというチームをさらに強くするために、日々精進してもらいたいと思います。選手1人1人が勝とうと思ってやっていますし、1人1人性格も違えば野球の仕方も違う。その中で一致団結し、一丸となって戦うホークスの素晴らしさを継続していってほしいと思います」

――ファンの声援や存在は?

「いろんなファンの方がいらっしゃいます。1人1人、大好きな選手も違うと思われます。その中で本多雄一という人間を好きになってくれて、ファンになってくれた皆様は、いつも自分のことではないのにこのような盛大な声援をくださる。自分の時間を削ってでも応援をくださる。そういう思いを感じますと、自分は時1つの準備も怠れない。ファンのために準備しますし、自分のために準備しますし、試合の中で拍手をいただきたいからパフォーマンスもします。応援団も含めて、ファンの声援がなければ自分はここまで来てないなと改めて思います。いい時も悪い時も「ポンちゃん!」と応援してくれる、そういうお言葉をいただき、自分がここまでやってこれたんじゃないかなと思います。ファンの皆様の力は、自分が想像している以上にすごかったですし、素晴らしかったですし、そのおかげさまでプレーができたと思っています。

――今日も球場の周りにはたくさんのファンがいたが?

「はい、もちろん(声援は)聞こえましたし、こういう報道があって皆さんが足を運んでくださる。自分の時間を割いてまで足を運んでくださる。そういう感謝の気持ちは常々忘れていません」

――改めてファンへのメッセージを。

「両親、家族、親戚、身内はもちろん、身内でもないファンの方がこうして応援してくださることは当たり前だと思ってはいけないと思いますし、応援団をはじめ、ファンの皆様、どんな時でも自分を??咤激励していただき、応援していただき、誠にありがとうございました。「ありがとう」「感謝」では示せないくらいファンの方にはお世話になりました。この先の人生でも本多雄一をよろしくお願いします。

 この後「最後にいいですか」と、本多は自ら切り出し、立ち上がると、集まった報道陣に対しての感謝の気持ちを述べた。引退会見では異例なことだが、これもまた本多の人柄あってのことだろう。6日のヤフオクドーム最終戦で引退試合と引退セレモニーが予定されている。本多は「ここまで野球をしてきて、心の底から楽しいと思ったことはそんなにない。最後は思う存分楽しんで、感謝の気持ちを持って臨みたいです」と、最高のポンちゃんスマイルを見せた。

 会見の最後は、サプライズで同級生でもある長谷川勇也が花束を持って会場に入ってきた。壇上から長谷川の姿を見たとたんに、本多はここまで懸命にこらえていた感情を抑えきれずに大粒の涙を流していた。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)