当時の制服を身にまとう勝興駅の最後の駅長、劉森錦さん(右)、元駅務員の邱朝勝さん(左)

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(苗栗 9日 中央社)廃止された旧山線の線路を活用した「レールバイク」の試験運行が9日、始まった。レールバイクの始発点となる勝興駅(苗栗県)で8日、始動記者会見が開かれ、同駅でかつて勤務した元駅員2人が当時の制服を身にまとって出席。旧山線の再生を喜んだ。

旧山線は日本統治時代に開業した三義(苗栗)―后里(台中)間を走る全長15.9キロの路線。1998年の廃止以降、有効活用されないままになっていた。レールバイクは苗栗県内区間(勝興駅−6号トンネル北口)の約6キロで運行され、沿線では1935年の新竹・台中地震で崩壊したれんが造りのアーチ橋「龍騰断橋」をはじめ、変化に富んだ景色が楽しめる。レールバイク導入は台湾で初めて。旧山線を新たな観光名所にしようと、県が交通部(交通省)観光局から3億台湾元(約11億円)の補助金を獲得し、導入を推進してきた。

8日の会見に出席した徐耀昌県長は、スローフードやスローライフ、スローツーリズムをテーマにした体験型観光を打ち出し、旧山線が通る三義郷の美しさを世界に紹介したいと意気込む。海沿いの観光名所、好望角(後龍鎮)一帯にも海岸線版のレールバイクを設置する方針を明らかにした。

この日、勝興駅に“里帰り”したのは、同駅の最後の駅長、劉森錦さんとかつての駅務員、邱朝勝さん。劉さんはわくわくした表情でレールバイクに乗車すると「再びこの地を旅できるとは思わなかった。とても感動している」と感慨深げに語った。

邱さんは、20年にわたり静まり返っていた旧山線に多くの観光客が戻ってきたことによって、将来が楽しみになったと話す。邱さんは昨年、県による訓練を受け、現地の解説員になったという。

レールバイクの乗車には公式サイト「旧山線鉄道自行車」での事前予約が必要。9日午前10時の受付開始直後には申し込みが殺到し、一時はサーバーがダウンした。午後3時半現在、8月末までの日程が満員となっている。

8月は車両20台を導入し、毎日午前11時と午後2時の2回に分けて運行する。状況を見て、運行本数を増やしていくという。試験運行期間中の運賃は280台湾元(約1015円)。乗車日の30日前から予約可能。

県はレールバイクの試験運行開始に合わせ、三義周辺の観光名所を結ぶ無料シャトルバスの運行を開始した。三義駅発着で、9月30日までは毎日、10月1日から11月24日までは土日のみ運行される。

(管瑞平/編集:名切千絵)