一夜にして、いやたった2時間にして、世の中の空気はドラスティックに変わった。

 日本は勝った。コロンビアを2対1で退けた。

 直接的な勝因はもちろん、数的優位に立ったことにある。前半早々に奪ったPKによるアドバンテージは、一度は消滅した。小さなミスの連続によるFKで、39分に同点に持ち込まれてしまった。

 1対0でリードしている時間帯から、追加点を奪うチャンスはあった。同点に追いつかれたあとも、コロンビアを引き放す好機はあった。決定機が続いた後半開始からの15分間でリードを奪わなければならず、勝ちパターンから逸れてもおかしくない展開である。

 それでも、時間の経過とともに数的優位のメリットは浮き彫りになっていく。コロンビアの運動量が落ちたことで、失点のリスクは大幅に低下していた。後半途中から登場してきたハメス・ロドリゲスも、左足を痛めている影響をはっきりと感じさせている。いつものキレはなかった。

 73分の決勝点は、大迫勇也のヘッドだった。相手が疲労していたとはいえ、リスタートは数的優位の影響を受けない。コロンビアが10人だから生まれたゴールではなく、大迫が自らの力で奪い取ったものだった。

 誰にとっても望外の勝利である。日本は一気に盛り上がっていると聞く。このときのために仕込んでおいたネタを、各メディアはここぞとばかりに放出しているのだろう。

 コロンビア対日本戦の同日に行われたグループHのゲームは、セネガルがポーランドに2対1で競り勝った。FIFAランキング8位のポーランドと同16位のコロンビアが初戦を落とし、同27位のセネガルと同61位の日本が白星発進を飾るのは、明らかに予想外の展開である。

 24日の第2戦は日本対セネガル、ポーランド対コロンビアだ。日本がセネガルに勝って勝点を「6」へ伸ばすと、ポーランド対セネガル戦の結果次第で2位以内が確定する。

 アジア勢ではイランとオーストラリが2試合を消化したが、ここまで連勝したチームはない。第1戦でモロッコを退けたイランは、スペインに0対1で競り負けた。初戦でフランスに1対2で敗れたオーストラリアは、デンマークと勝点1を分け合った。ドイツの初戦敗退やアルゼンチンとブラジルのドロー発進といったサプライズも、アジア勢が引き起こしたものではない。

 24日に対戦するセネガルは強い。屈強でしなやかフィジカルと爆発的なスピードは、はっきりとした脅威になる。

 ポイントをふたつに絞りたい。

 ひとつ目はゲームの入り方だ。 初戦でポーランドから勝点3を奪ったセネガルは、自信を太くしている。そもそも日本戦には勝点3を見込んでいるはずで、勢いに乗せたら厄介だ。

 彼らの攻撃を、どうやって止めるのか。前からハメていくのか、遅らせて止めるのか。コロンビア戦とは明らかに違う種類の対策を、西野監督は迫られることになる。

 ふたつ目は交代のカードの切り方だ。10人のコロンビアを相手にした初戦よりもさらに、セネガル戦は守備でのハードワークが求められる。中5日の連戦ということで、時間の経過とともに疲労が色濃くなる選手も出てくることも想定される。試合の流れとスコアに応じて、交代選手を効果的に投入していかなければならない。

 コロンビア撃破で日本国内は沸き立っているそうだが、まだ1試合を終えただけである。セネガル戦が重要なことに変わりはなく、グループリーグ突破へのサバイバルは、ここからさらに熱を帯びていく。