「1週間で1度も休みを取らなかった」としてフランスの裁判所がパン職人に罰金を科す
by Victor Rodríguez Iglesias
日本ではしばしば長時間労働が問題となっており、働き過ぎによる過労死も社会問題化しています。労働者が適切な休みを取ることを義務づけているフランスでは、「1週間1度も店を閉めずに働き続けた」としてパン職人が罰金刑を受けたとして話題になっています。
D'oh! French court fines baker for refusing to take a day off | World news | The Guardian
人気の観光地である北フランスのリュジニー・シュル・バルスで「ブーランジェリー・ドゥ・ラ」というパン屋を経営するセドリック・ビブレ氏は、2017年の夏に1週間に1度も店を休みにせず働き続けたとして、3000ユーロ(約40万円)の罰金刑を命じられました。1994年と2000年に制定された地元の雇用法により、特殊な例外を除いてパン屋は少なくとも1週間に1度の休みを取らなければならないと定められているとのこと。
2016年まで、ビブレ氏は「夏のバカンスの間で観光客がやってくる期間のみ、1週間続けて店を開く」ことの許可を申請し、当局から開店の許可を得ていました。ところが、2017年に限って当局の職員がビブレ氏の申請を却下したそうです。結局ビブレ氏は当局の許可を得ないまま、例年通りバカンス期間に1週間パン屋を休まず開店し続けたところ、今回の罰金刑が下ったというわけ。
リュジニー・シュル・バルスは人口およそ2000人程度の小さな町ですが、町のパン屋さんであるビブレ氏と「ブーランジェリー・ドゥ・ラ」を救うため、近隣住民は署名活動をして申し立てを行っています。町長であるクリスチャン・ブランル氏は罰金刑を受けたビブレ氏を擁護し、「夏の間に町を訪れた観光客のために店を開くのは、ビジネス上必要なことです。それ以上に大事なことなどありません」と、新聞の取材に対して語っているとのこと。
by Marilylle Soveran
ビブレ氏は今回の処分に対し、「私は1年中店を開きたいと言っているのではないのです。ただ夏のバカンス期間だけ、店を休まずに開きたいだけです」と述べています。1週間働き続けることで検挙されないようにする抜け道として、「営業時間の違うもう1つの店を持つ」という策があるようですが、そう簡単に実現できるものではありません。
フランスのテレビ局もこの事態を取り上げ、「田舎には田舎なりのルールがある。競争が激しい地域に店があるわけではなく、ただ顧客がサービスを求めている間だけ働くのだ」として、一見擁護しているようにも取れるコメントをしています。
しかし、フランスでは「1週間に1度も休みを取らない」という働き方は少数派です。2017年末にリュジニー・シュル・バルスが属するオーブ県のパン職人とパティシエ126人に行ったアンケートでは、「1週間に1度は休みを取る」という法律に賛成する人が多数だったとのこと。パリの小売組合CLIC-Pのエリック・シェラー氏も「パン屋やその他の職業には、1週間に1度は休まなくてはならないというルールがある。これは労働者と雇用者双方を守るために必要で、尊重されるべきだ」とコメントしています。