3歳までに虫歯菌をうつさなければ、虫歯にならない?

写真拡大


執筆:影向 美樹(歯科医師)


生まれたばかりの赤ちゃんの口の中に虫歯菌は存在していません。

それでは虫歯菌がどこから入ってくるのでしょう。

それは赤ちゃんの周りにいる大人たちの口からです。

歯が生えそろう3歳までにこの虫歯菌の侵入を防ぐことは、長い目で見た虫歯予防としてとても効果的。

今回は虫歯菌に感染しやすい時期やその予防法などご紹介していきます。

口の中の虫歯菌の量は3歳頃に決まる

私たちの口の中には様々な種類の細菌が存在しています。

そして細菌の種類や割合は人によって異なっています。

生まれて間もない赤ちゃんには虫歯菌は存在していません。しかし生まれて以降、外部から虫歯菌が口の中に入ることで、虫歯菌に感染していきます。

この感染の機会が多いほど、口の中の虫歯菌の数も増えていきます。

そして3歳頃に口の中の細菌の割合が決まってしまうと、以後もそのバランスを保ったまま成長していきます。

感染しやすい時期は生後19か月から31か月

虫歯の原因となるのは「ミュータンスレンサ球菌」と呼ばれる菌です。

ミュータンスレンサ球菌は基本的に歯の表面でしか成長できないため、歯の生えていない乳児には存在しません。

そしてこのミュータンスレンサ球菌に最も感染しやすい時期は、乳歯が生えだしたのち1歳7か月(生後19か月)から乳歯が生えそろう2歳7か月(生後31か月)と言われており、歯科ではこの期間を「感染の窓」と呼んでいます。

この「感染の窓」の期間にミュータンスレンサ球菌の感染を防ぐことで、口の中の細菌バランスが整う3歳以降はミュータンスレンサ球菌に感染しにくくなり、成長しても虫歯のできにくい口腔環境が整います。

虫歯菌は大人の口から子供へ感染する

これまでには、離乳食の際に母親が口の中でつぶしたものを子供に食べさせることで、虫歯菌を子供にうつしてしまう時代もありました。

近年は予防意識の高まりや母親教室などでの啓蒙活動により、そのようなことも少なくなってきましたが、それでも感染の経路は開かれています。

具体的には「大人が使った箸で子供に食事を与える」、または「大人の皿から子供に食事を与える」などです。

このようなことから、虫歯菌が子供の口へ入ってしまうケースが多いようです。

感染予防に取り組むには周囲の理解が必要

「感染の窓」の期間(生後19か月から31か月)にできるだけ虫歯菌の感染を予防するならば、まず食事の時に大人と子供の使う皿や箸を分けるほうがよいでしょう。

また大人が使った箸で子供に食事を与えたり、大人の皿に入った食べ物を子供に与えるのも控えたほうがよいです。

これらを実践するためには周囲の理解が必要です。ともに食事をする機会の多い祖父母や親せきなどには特に必要でしょう。

そのような理解を得られないまま無理に強行し、結果として家族間の軋轢を生むケースもみられます。

虫歯を予防する方法は他にもある

もし家族の協力が得られない場合は、他の方法で虫歯予防に取り組みましょう。

正しい歯磨きの習慣を身につけさせる


虫歯予防の基本は歯磨きです。虫歯のできやすくなる3歳までに、毎食後歯磨きをする習慣を身につけさせます。

また小さな子供だけでは十分に汚れは落とせないため、毎回必ず大人の方が仕上げ磨きをしてあげてください。

食生活を見直す


3歳ごろに虫歯になる子供の多くは食生活に問題があります。

具体的には食べたい時に食べたいものを好きなだけ食べるような生活です。子供の虫歯の原因のほとんどがこの「ダラダラ食べ」です。

もし心当たりがあるのであれば、このような食生活は今すぐに見直すべきでしょう。

家族で正しい知識の共有を

虫歯の原因菌であるミュータンスレンサ球菌は、1歳7か月(生後19か月)から2歳7か月(生後31か月)にかけて子供の口の中に感染しやすく、この時期にできるだけ感染の予防に取り組むことで、虫歯のできにくい口腔環境を整えることができます。

しかし感染予防を実践するには周囲の理解が欠かせません。

正しい知識を家族で共有し、子供を虫歯から守ることの大切さを理解してもらいましょう。

<執筆者プロフィール>
影向 美樹(ようこう・みき)
歯科医師。歯科医師免許取得後、横浜と京都の歯科医院にて勤務を経て、現在は医療系ライターとして活動中