「大事なことは自分で決めてきた」――佐藤 健と考える、人生を切り拓く方法
若い俳優に取材する中で、憧れの存在として佐藤 健の名があがることがなんと多いことか! 『るろうに剣心』シリーズをはじめ、代表作と言える作品はいくつもあるが、特定の1作でブレイクを果たした印象もない。気づいたら、この世代を代表する実力派俳優になっていたという感がある。そんな彼が、俳優生活10年目に出演を決めた映画は2作。ファンタジーの中で“人生”を見つめ直す『世界から猫が消えたなら』、そして、リアルな就職活動に身を置いて、己の存在を問いかける『何者』である。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



就職活動のシビアな世界に驚き!



――『何者』は『桐島、部活やめるってよ』でも知られる人気作家・朝井リョウさんの直木賞受賞小説が原作で、就職活動に奔走する若者たちを描いています。佐藤さんが演じた主人公の二宮拓人は、天真爛漫な同居人や、“意識高い系”の女子に囲まれつつ、冷静にものごとを分析するタイプの青年ですね。最初にオファーが来たときの印象は?



実は、そこに至るまでに複雑な話がありまして。朝井リョウとはこの作品に関わる前から友人で、原作も以前から読んでいたんです。それで、どうやら『何者』が映画化されることになりそうだという頃から、話を聞いていました。そこで、キャスティングのことが話題に上がったこともあって…。

――自ら原作者に売り込みを?(笑)

いや、むしろ逆です(笑)。「映画化することになって」「キャスト、どうなるの?」「どうしようか…?」なんて話をしてたんですよ。冗談半分に「あの人とかどうかな?」とか言いながら。そのときに彼から「もし(佐藤さんに)話が来たらどうする?」と聞かれて「いや、どうだろう」って(笑)。

――「ぜひやりたい!」ではなく…?

映画を見ればわかりますが、拓人って決して“おいしい”主人公じゃないんですよね(苦笑)。

――確かに映画自体、単純に就活に奮闘する若者の成長を描くだけでなく、その裏のドロドロした人間性なども見えてきますね。

朝井リョウ自身、拓人は主人公でありながら、のっぺらぼうのような存在というか、真っ白なキャラクターで顔の部分が×になっているようなアイコンをイメージして書いたと言ってました。だから、冗談めかしてですが「難しそうだしやんないよ」「そうだよね…」なんて会話をしてたんですよ(笑)。そうしたら、その2カ月後くらいかな…?



――正式なオファーが!

これは、キャスティングが相当、難航したのかな? と(笑)。朝井リョウ、いろいろ大変だったんだろうな、ついにこっちに来たか…って感じでした。それでも僕にと言っていただけるなら、とも思いましたし、川村元気さんがプロデューサーを務めるということも大きかったですね。

――昨年、佐藤さんが主演された『バクマン。』のプロデューサーであり、今年公開された主演映画『世界から猫が消えたなら』の原作者でもありますね。

これまで一緒に仕事をさせていただいて、信頼もありましたし、特に今回、同世代の共演者たちとクランクイン前にリハーサルを積んで作り上げていけると聞いて、面白そうだなと感じました。そういう意味では、『何者』という作品に魅力は感じていましたが。

――映画を拝見して、“就活生”の佐藤さんの姿が印象的でした。なんだか、過去のさまざまな作品で、おしゃれでスタイリッシュな姿を見せてきた佐藤さん自身が、本当に就活のために髪を黒くして下ろして、地味なスーツにネクタイを締めた、という感じで…。



なるほど(笑)。僕としては就活生とか大学生ということを意識したというよりも、二宮拓人という人物をどう作るかということを考えて、彼が就活に臨むならどんな格好になるか? をイメージしました。結果的に、朝井リョウをコピーするつもりで、彼と同じ美容室で髪を切り、彼が着ている服などを真似してみたんです。

――佐藤さんご自身は、就職活動というものにどんなイメージを持たれていましたか?

まったく未知のものでしたね。原作を読んで初めて知った世界であり、こんなことがあるのか! こんなことが繰り広げられているのか…と。映画に参加するにあたって、実際に面接を受けてみたり、面接の様子を見学もさせていただいたんですが、シビアな世界だな、という印象でした。




――内定が取れず、自分のすべてを否定されたような気持ちになったり、映画で描かれていることは実際に就活を経験した人にとって、かなりリアルですが、佐藤さんは俳優の世界にいて、就活と重なるような経験をしたり、同じような苦しさを味わったと思えることはありませんか?

俳優でいうと、オーディションがそれに近い経験なんでしょうね。ただ、僕はわりと早い段階で「オーディションって考え方次第だな」って思えるようになりました。

――考え方次第?

落ち続けて「俺はこの仕事、向いてないんじゃないか…」となる人もいるでしょうけど、僕は、落ちたときはその作品、役柄に合わなかっただけ、逆に受かっても、優れているわけじゃなく、たまたま自分が役柄に合っていただけなんだと思うようになったんです。

――優劣ではなくマッチング?

もちろん、それがすべてではないですが。そう考えることで、落ちても大丈夫なマインドになったし、受かってもムチャクチャ喜ぶわけでもなく。それは一種の自己防衛かもしれないです。しんどいですからね、一回一回、落ちて、へこんで、考えて…って(苦笑)。でも、ある種の真理だとも思います。



センター試験直前に『仮面ライダー』決定! 悩んだ末に…



――佐藤さんの場合、10代で芸能界に入り、そのまま“就職”したとも言えるかもしれません。その際「この世界でやっていけるのか?」という不安や「この仕事が一生の仕事だ!」という覚悟などはあったんでしょうか?

まったくなかったですね(笑)。ある日、スカウトしてもらって興味がわいて、月に1回のレッスンがあって、面白いからやり続けて、そうしたら「このオーディション、行ってきて」と言われて、行ったら落ちたり、受かったりして。「じゃあ、明日の何時にここに集合」と言われて、撮影をして…その繰り返しでここまで来た感じです。

――デビュー当時、高校生ですよね? 大学に進学するか否かで悩んだりは…?

それはありましたね。当時、本当に普通の高校3年生で、普通に受験して大学に行くもんだと思っていました。ただ、当時から行きたい大学や学部が決まっているわけでも、勉強したい分野があるわけでもなかったんです。そうしたら、センター試験の締め切りの2週間くらい前に、『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)への出演が決まって…。

――佐藤さんにとっては初主演作ですね。

ライダーをやるからには、忙しくなって1年は大学には通えないだろうってわかってて。その先どうなるかはわかんないけど、そのときは正直、悩みましたね。事務所からは「大学に行っておきなさい」と勧められたけど、ある日、親が「別に無理して行かなくてもいいんじゃない? 行きたきゃいつでも行けるし、いま、1年は通えないのがわかってて、無理に決めなくても」って言ってくれたんです。




――背中を押してくれる、ありがたい言葉ですね。

本当にその言葉で「おぉっ!」って押されました(笑)。いま思うと、悩んでいたのは、行きたい大学も学部もないということに対してなんですよね。でも、この世界で生きていける保証もない中で、大学に行っておいた方がいいんじゃないか? と悩んでいたところで、親の言葉に押されて…。

――いろんな状況や、両親の言葉が、そういう心の奥底の欲求を洗い出してくれた感じですね。

そう思います。ありがたいことに、お仕事も忙しくなってきて、気づいたらこの世界に無事、就職していました(笑)。

――俳優の仕事を始めてからも、自分自身を全否定されたり、壁にぶち当たって、どうしていいかわかんなくなって…というような経験はありませんか?

それもないんですよね。覚えてないだけなのかな…? あんまりひどいことを言われたり、苦しくて…という記憶があまりないんですよね。

――壁を壁と思ってないのかもしれないですね。もちろん、作品ごとに大変なことはたくさんあるんでしょうが…。

そうかもしれません。厳しいことを言ってくださる人はいたけど、それはありがたく受け止めていました。何よりこの仕事、やることが明快なんです。作品が決まったら、あとは自分で集中してその役を作り上げていく。目の前の仕事を懸命に全力でやる。それだけでここまで来たと思います。それは大変なことではあるけど、迷いはなかったです。




――そうやって歩み続けて、デビューから10年です。

そう言われるとびっくりするんですけどね…。そんなにやってきた?(笑) 実感がないです。6〜7年くらいのイメージです(笑)。

――今回の映画の中で、拓人と山田孝之さんが演じるサワ先輩のやり取りが非常に印象的でした。佐藤さん自身、10年前のデビュー当時、上の世代の先輩たちに対して、憧れや目標とするような気持ちはありましたか?

それこそ、山田さんはデビュー前から見ていた存在で憧れてました。あとは、デビューしてからですが『ROOKIES』(TBS系)に参加させていただいたとき、野球部のメンバーの中で、僕は最年少だったんです。上の世代の皆さんはすごい人たちばかりで、あの時期に、そういう方々と仕事ができたのはすごく大きな経験だったなと思います。

――逆にいま、10代や20代前半の若い俳優さんに取材をすると、憧れの先輩として佐藤さんの名前があがったり、『仮面ライダー電王』の野上良太郎を見て俳優を志したという話を聞くことが多いです。

それは純粋にうれしいですね。『仮面ライダー』もそうだし、『るろうに剣心』もすごく大きかったかなと思います。僕自身、すでにこの仕事はしていましたが、20代前半で『クローズ ZERO』シリーズを見て、カッコいい男たちのアクション、群像劇に憧れましたから。いまの若い子たちにとってのそういう作品に出られたことは幸せです。




ほぼすべての問題は、自分の脳内で解決できる



――はたから見ると、大きな作品に出続け、大変なことを成し遂げていますが、ご本人はあまり強い感慨や覚悟を持って…というよりも、淡々と仕事や役柄を受け止めているように見受けられます。

これは持論なんですが、ほぼすべての問題は自分の脳内で解決できると思ってます。考え方ひとつで解決できるんですよ。そういうマインドは昔から持ってて、知らず知らずのうちに、壁を壁と思わずに乗り越える作業をしてきたのかなと思います。

――いま、壁にぶち当たっている就活生にとって、金言だと思います!

たとえば、先ほどのオーディションの話もそうですが、結果的に落ちてよかったと思えるオーディションもあるかもしれませんね。『仮面ライダー』がまさにそうだったんですが、別の作品で不合格だったから、こっちのオーディションを受けることができて、結果的に受かったり、ということになるかもしれません。



――自分ではコントロールできない巡り合わせがあるんですね。

そう。だから、何が正解なのか? 単に合格が正解とは限らないし、考え方ひとつでなんとでもなる。だから、内定が出なくても、自分の人生を否定する必要はないし、人生が終わるなんてことも絶対にない!

――ちょっと抽象的な質問ですが、そういう巡り合わせや出会いは、向こうから来るべくしてやって来る運命、必然だと考えますか? それとも、できる限り自分で手を挙げていくタイプですか?

運命を感じる瞬間はありますけど、それは常にではなく、どちらかというと、自分で決めて、道を切り拓いてきたと思ってます。もちろん、自分でどうにもならない部分もありますし…。

――それこそ、この世界に入るきっかけはスカウトでしたし。

もし、あの日、スカウトされてなかったらと考えることはありますね。ただ、まったく違う人生を歩んでいたかもしれないけど、それでも幸せな人生を送れているだろうという自信はあります。それは、大事なことはきちんと自分で決めてきたからかなと思います。

――オンとオフの切り替えに関して、大切にしていることはありますか?

僕、実はそんなに休みが少ないわけじゃないんですよ。なので、ひと口にオフと言っても、いろんな種類があります(笑)。自分を高めるために、海外に行って英語を勉強することもあるし、まったく出かけずに家で過ごすこともあるし(笑)。まあ友達とわちゃわちゃしてることが多いかな?

――いま、まとめて休みが取れたらどう過ごしますか?

難しいな…(笑)。じっくりと本を読みたいですね。



【プロフィール】
佐藤 健(さとう・たける)/1989年3月21日生まれ。埼玉県出身。A型。2007年、『仮面ライダー電王』(テレビ朝日系)の野上良太郎(仮面ライダー電王)役で連続テレビドラマ初主演。2010年にはNHK大河ドラマ『龍馬伝』で従来のイメージを覆す岡田以蔵役を鮮烈に演じ、その後、次々と話題作に出演。ドラマ出演作に『Q10』(日本テレビ系)、『とんび』(TBS系)、『天皇の料理番』(TBS系)など。映画では『るろうに剣心』シリーズ、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、『バクマン。』、『世界から猫が消えたなら』などに出演。デビュー10周年を記念して9月より写真集+DVDブック『X(ten)』(ワニブックス)が発売中。
【公式サイト】http://www.satohtakeru.com/


■映画『何者』
10月15日(土)全国ロードショー!
http://www.nanimono-movie.com



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★★佐藤 健さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント★★

今回インタビューさせていただいた、佐藤 健さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

■応募方法:ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT


■受付期間:2016年10月13日(木)12:00〜10月19日(水)12:00

■当選者確定フロー
・当選者発表日/10月20日(木)
・当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し)のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
・当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月20日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただきます。10月23日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。

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