開幕2試合はベンチを温め続けた本田。ミランでの4シーズン目はかつてないほどの逆風に晒されている。(C)Getty Images

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 8月31日の22時。ゴングが鳴って、カルチョメルカート(移籍市場)は閉まった。
 
 今夏のミランの補強は、1986年から続くシルビオ・ベルルスコーニ時代の中でも最も実りの少ないものの一つとなった。
 
 ただ、それも仕方ない面もある。ミランは今、オーナー交代に向けた動きの最中で、全てが完了するのは11月初旬だ。その間、チームの財政を傾けるような大きな出費は、誰にとっても不可能だ。ミランの93.3%の株を持つ『フィニンベスト』(ベルルスコーニの持ち株会社)も、2か月後にはオーナーとなる予定の中国コンソーシアムも…。
 
 そのため必然的に選手の売り買いには慎重になり、メルカートで思い切った動きをすることができなかった。こうしてミランはほとんど補強がされぬまま、新たなシーズンに臨むこととなった。
 
 念の為に総括してみると、この夏にミランが新たに獲得した選手は6人。DFのグスタボ・ゴメス(ラヌースから)、レオネル・バンジョーニ(リーベルから)、MFのホセ・ソサ(ベジクタシュから)、マティアス・フェルナンデス(フィオレンティーナから)、マリオ・パシャリッチ(チェルシーから)、FWのジャンルカ・ラパドゥーラ(ペスカーラ)を獲得するために投じた額は計2680万ユーロ(約32億1600万円)。昨夏のほぼ4分の1である。
 
 もちろん、投資額が多いからといって、良い結果が出るとは限らないというのは、昨シーズンの例からもよくわかるが……。
 
 とにかく、この6人のうち誰も、ミラニスタを喜ばすことはできなかった。まだ夏のメルカートが閉まったばかりだというのに、もう彼らは冬のメルカートを待ちわびている。中国人たちが新オーナーに正式就任しているはずの1月には、もう少し華々しい補強をしてくれるだろうと……。
 
 しかしそれまでミランは、またもや味気もないばかりか栄養価にも乏しい、まるで補助食のようなチームで耐え忍ばねばならない。それも欧州カップ戦がなくセリエAだけを戦うにしては、あまりに多すぎる28人という大所帯で。
 こういったミランを取り巻く状況すべてを鑑みると、「この1年が本田圭佑のミランにおける最後のシーズン」と考えるのが、まず妥当だろう。
 
 いくつかのメディアは、この夏に本田がミランを出て行くと主張していたが、今回もそれは単なる噂に終わった。このままいけば本田は、2014年1月にCSKAモスクワからミランに来た時と同様、契約満了の移籍金ゼロで来夏に退団するだろう。
 
 ミランとの契約更新は、現時点でいくつかの理由からまず考えられない。中でも一番大きな理由が、監督の意向だ。そう、今夏に招聘されたヴィンチェンツォ・モンテッラは、これまで本田がミランで出会った監督の中で、一番彼のプロフェッショナル魂に“鈍感”な指揮官だ。
 
 監督であれば誰もが、真面目に、懸命に日々のトレーニングに取り組む選手を高く評価する。しかし、モンテッラにはそれだけでは不十分だ。彼は配下のアタッカーに、胡椒の実のようなピリリとした才気煥発、つまりスピードと創造性を求める。本田には備わっていない能力だ。
 
 ミラネッロ(ミランの練習場)のスタッフたちから漏れ聞こえる話によると、モンテッラは本田をこう評しているという。
 
「このホンダ車はあまりにもキャブレターの回転が遅い」
 
 実際、今のミランには即座にフルスロットになるマシンが求められている。本田を尻目に先発を張っているスソやエムバイ・ニアングのような。
 
 現時点で本田の置かれた状況は、ざっとこんな感じだが、新加入選手たちをモンテッラがどう評価するかでこれからさらに変化しうる。