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●大きすぎる目、ツルツルすぎるおでこは一目瞭然
最近の美容整形は、目や鼻のプチ整形のほか、ボトックス注射やヒアルロン酸注射といった若返りの施術も増え、一般人にとってもカジュアルになりつつある印象だ。リピーター客も多いと聞くが、以前より美容整形のハードルが低くなってきたからこそ、美容院やネイルなどのように、"メンテナンス"として通うことができるのだろう。

ただ、リピーターになるということは、言い換えれば美容整形をし続けるということだ。やりすぎてしまう懸念や、そこから生じる体や心へのリスクはないのだろうか。

そこで今回は、湘南美容外科クリニックの福澤見菜子医師に、美容整形の"やりすぎ"と思うサインと、よくある誤解についてお聞きした。

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○程度をわきまえないと不自然に

1つ手をつけていい思いをすると、次はあれもこれももっと……という気持ちになる人も多いですが、それは人として自然な感情です。ただ、何事も"程度"が肝心。程度がいきすぎると、次のように本来の目的を見失ってしまうことも。

誰からも愛される、かわいい顔になりたい!
⇒"目を大きくすること"自体が目的となり、全体で見るとアンバランスに。

エイジレスな美しさを手に入れたい!
⇒"シワをなくすこと"自体が目的となり、肌がツルツルピカピカすぎて不自然に。

個別の部位の希望が枝分かれしてしまうと、調和のとれた美しさからは遠のいてしまいます。まだご自身が満足していればいいのですが、「どれだけ美容整形をしても美しくない気がする……」といったように、心がとらわれてしまっている人は心配です。

実際に、医師の目から見て「やりすぎだな、1回お休みしたほうがいいな」と思う人もいます。そんなとき、医師はどう導くべきか……。もちろん、医師の立場や方針によっても対応は異なります。ただ私は、"いきすぎ"や"やりすぎ"をきちんと指摘したいですし、指摘してくれる医師のもとで施術を受けてほしいなと思います。

○医師の目から見る"やりすぎ"のサイン

ここからは、美容整形をやりすぎているかどうかがわかるサインについて解説していきます。

■大きすぎる「目」
たくさんの患者さんを診てきて、整形をやりすぎていると思うことが多いパーツは、断トツで「目」。とにかく目を大きくすればいいと思っている人が多いようです。目だけ異様に大きいと、目に印象が偏りすぎて頬が間延びして見えるなど、アンバランスになりがちです。

また、二重の幅が広いほど目が大きく見えるという勘違いも非常に多いです。広すぎると眠そうな印象を与えますし、ある程度派手なメイクをしないと見栄えがしないこともあります。

■とがりすぎている「アゴ」
欧米人に比べてアジア人のアゴは引っ込んでいる傾向にあるので、整形でアゴのラインをつくることがあります。ただ、やりすぎるとアゴがとがりすぎてしまい、違和感を覚えるかもしれません。

ヒアルロン酸注射や脂肪注入の場合もありますが、シリコンを入れている場合は注意が必要です。基本的にシリコンは皮膚にとって異物なので、時間がたつと骨に食い込んできたり、場合によっては歯の神経を刺激したりすることも。気になる症状があるときは、すぐに医師に相談しましょう。

■付け根が太くなった「鼻」
鼻のプチ整形として、ヒアルロン酸注射も人気です。欧米人に比べて平たい顔つきのアジア人は、鼻の付け根に注射を打って高さを出すことが多いですが、繰り返し注射すると、鼻の横幅が広くなって"アバター化"する人も。これでは、本来思い描いていた「スッと通った鼻筋」からは遠のいてしまいますよね。途中でプロテーゼ(人工軟骨)に切り替える人も多いです。

■ツルツルすぎる「額(おでこ)」
「目尻にはシワができるのに額にはなく、肌の質感もツルツルしすぎている」というのは、ボトックス注射の効果で、美容整形外科医が見れば一目瞭然です。ボトックス注射は筋肉の収縮に作用するので、シワが寄らなくなります。

ある程度、どのように見えたいか、どの部分にシワができないと不自然かといった希望を伝えないと、エイジレスな美しさではなく、違和感が勝ってしまうことも。ボトックス注射は時間がたてば元に戻りますので、医師に相談のうえ、少しお休みしてみてもいいかもしれません。

●「一生メンテナンスが必要」は誤解
○美容整形のよくある誤解

続いて美容整形について、よく皆さんが誤解されていることにも触れたいと思います。

■「一生メンテナンスが必要」
顔を変えるタイプの手術は、基本的にはメンテナンスは不要です。ただし、加齢による変化はあります。気になるようであれば、早めに医師に診てもらうことをお勧めします。

■「加齢とともに崩れてきた気がする」
適切な範囲内の整形であれば、皮膚がたるんだり、ゆるんだりと、普通に年をとっていくだけです。ただし程度を超えると、崩れてくる可能性はあります。

例えば、鼻に高いプロテーゼを入れると、加齢とともに皮膚が薄くなった際に輪郭が浮き出ることがあります。目に関しては、若い頃にそのときの価値観で手術をしてしまうと、加齢によって他のパーツとのバランスが崩れることもあります。

■「注射系の施術は、効果がなくなると余計に老ける」
ボトックス注射やヒアルロン酸注射は、主に若返りを目的として行われますが、その効果は数カ月程度。時間がたつと元に戻るだけです。施術の効果がなくなっても、施術前より老けたり、やらなかった場合と比べて余計に老けたりすることはありません。

○「美容整形で人生が変わる」と思わないで

美容整形を経験された方や興味がある方へお伝えしたいこと、それは「加齢による外見の変化にはあらがえない」ということです。これは、美容整形をしていようとしていまいと関係ありません。

20歳の頃に整形をした自分の目がどんなに気に入っていても、40歳になれば必ず皮膚はたるんできます。それを受け入れられずに一生、20歳の見た目を維持しようとすると、依存が始まりますし、周囲も心配してしまうでしょう。自分自身をすべて入れ替えることができない以上、持って生まれた素材を受け入れて、その延長線上でバランスのとれた美しさを目指すべきなのではないでしょうか。

最後に一言、整形で人生が変わると思うのは危険です。整形をしたら、その後は自分で奮起して行動を変えないと人生は変わらない! 最終的に人生を変えるためには、前向きな心と自分の頑張りが必要です。

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お話を伺って、美容整形でキレイになれるかどうかは、ありのままの自分を受け入れられるか次第ということを痛感した。「美容整形」と「ありのままの自分を受け入れること」は矛盾しているようにも思えるが、自分に生まれてきた以上、美容整形をしたとしてもある程度の段階でストップをかけ、自分自身のよさを認めなければならないときがやってくる。「キレイになる」という本来の希望をかなえるためにも、だ。

そして、美容整形に限ったことではないが、最初は気軽な気持ちで試したはずなのに、どんどんエスカレートしてしまうことはある。もう1人の自分が歯止めをかけられればよいが、現実には、心が弱っているときに冷静な判断を下すのは難しいだろう。もし何らかの状況で、本来の目的や自分自身を見失っているように感じる場合は、1人で抱えこまず、医師や家族など周りの信頼できる人を頼ってみてほしい。

※画像と本文は関係ありません

○記事監修: 福澤見菜子(ふくざわ・みなこ)

2003年度ミス慶應グランプリで、歴代のミスの中でも唯一「専門医」の資格を持つ医師。

2006年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学病院、東京大学医学部附属病院 形成外科・美容外科、大塚美容形成外科 千葉院院長などを経て、2013年より湘南美容外科クリニックに勤務。そのほか、日本形成外科学会 専門医、日本美容外科学会(JSAPS) 正会員、日本抗加齢医学会 正会員、埼玉医科大学総合医療センター 形成外科・美容外科 非常勤助教など。

医師として、正しい美容医療の普及と実現に貢献することをライフワークとし、オフィシャルサイトでも情報を発信している。

(須藤妙子)