ウニー・ルコント監督

写真拡大

 フランスの女性監督ウニー・ルコントが、新作『めぐりあう日』の公開に先駆けて来日、野田聖子衆議院議員と共に24日、都内で行われたトークイベントに登壇し、フランスと日本の「特別養子縁組」について語った。

 巨匠イ・チャンドン監督に見出され、実体験をベースに、父親に児童擁護施設に置き去りにされ、捨てられた少女ジニの、悲しく切ない失意の日々と、そこからの再生を力強く描いた映画『冬の小鳥』で鮮烈な監督デビューを飾ったルコント監督。6年ぶりの新作『めぐりあう日』では、生みの親が誰かわからずに育ち、自分の出生の秘密を調べるヒロイン・エリザと、匿名での出産を望んだ実母との30年ぶりの運命的な再会を描いている。

 9歳の時、国際養子縁組を経て、韓国からフランスに渡った自身の経験を一貫して作品のモチーフとするルコント監督は「自伝を語るのが、私の目的ではありません。親との別離という経験を出発点に、普遍的な感情を探りたい。そして、どのような出生の子どもにも、大きな愛がもたらされることが願いです」と真摯に語りかけた。

 続けて、「フランスには、匿名で出産できるという特殊な法律があって、賛否両論もあります」と説明すると、野田氏は「日本には馴染みもなく、認められてもいませんが、お母さんが人知れず産むことができれば、中絶されずに助かる多くの命があるともいえる。フランスでは匿名出産と養子縁組で、産んでから誰かに子どもを託せるという流れができているのでしょう。本作では、さらにその先、30年後の親子の人生が描かれる。社会全体で子どもをどう考えるか、フランスは進んでいるなと思いました」と感想を述べる。

 長年、特別養子縁組の普及に取り組む野田氏は「この国に養子縁組についての、きちっとした法律がなかったのですが、先の国会で児童福祉法が改正され、すべての児童相談所が相談義務と斡旋義務を負うことになった。養子縁組が国の監督で進むことになったのは大きな一歩」と話した後、「私は不妊治療で子どもができず、養子縁組でも出会えず、アメリカ女性の卵子提供で息子を授かった。血の繋がっていないスタンダードでない親子ですが、親子の愛は形ではなく互いに作っていくものだと、息子に教えられています」と述懐。

 これを聞いたルコント監督は「本作の原題は“あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願う”という意味です。どんな出生も、生まれたことに偶然はなく、すべての子どもたちは出会いから生まれ、大きな愛に包まれてほしいという願いを込めました」と答えていた。(取材/岸田智)

映画『めぐりあう日』は7月30日より岩波ホールほか全国で順次公開