2016年初戦に向け、日本代表メンバーが発表された。選ばれた24名(実際の試合では23名)で3月に行なわれるワールドカップ2次予選の2試合(24日アフガニスタン戦、29日シリア戦)に臨む。

 2次予選のグループEに所属する日本は、6試合を終えて5勝1分け(勝ち点16)でトップに立ち、すでに最終予選進出をほぼ手中に収めている。相手のレベルを考えても、この2試合は結果で何かを判断するような試合ではない。

「チャレンジしたいのは、失点しないこと。そして、できるだけたくさんの点を取ること。これが重要だ」

 そう語るヴァイッド・ハリルホジッチ監督の言葉通りである。

 現実的に相手との力関係を考えれば、日本がこの2試合で失点する可能性は低い。やはり注視すべきは、いかにして得点を重ねるか、だろう。

 ハリルホジッチ監督が就任以来、日本代表は親善試合でこそ大量得点を挙げることができたが、公式戦になると、モタつきが目立つ。簡単に言えば、真剣に相手に守られると、なかなかゴールが奪えなくなってしまうのだ。

 この2次予選でも、6試合を終えて奪った得点は17。2位につけるシリアの20点をも下回る。1試合平均で3点に届かないのでは、物足りないと言わざるをえない。

 当然、そのあたりは指揮官も承知している。発表されたメンバーの顔触れを見ても、そのことは明らかだ。

 今回のメンバーを見て、一番に目を引くのはFW陣。日蘭それぞれのリーグで好調な点取り屋が加わっている。

 まずは、小林悠。まだ3節が終わったばかりのJ1で早くも3ゴールを記録し、首位に立つ川崎フロンターレを引っ張っている。昨季はケガもあって思うような結果が残せなかった小林だが、相手DFラインの背後を取る巧みな動き出しはJ1でも屈指であり、日本代表でも新たな武器になるはずだ。

 ハリルホジッチ監督も小林を「ゴールゲッター」と評し、「我々に足りなかった部分を補う」存在として期待を寄せる。

 そして、ハーフナー・マイク。オランダリーグのADOデン・ハーグに所属するハーフナーは、今季リーグ戦で13ゴールを挙げている。指揮官は「我々のチームにはここまで高さのある選手はいない」と語り、194cmの長身を生かしたヘディングによる、クロスからの得点増を目論んでいる。

 とはいえ、彼らが得点力不足解消の切り札に、ひいては日本代表の主力にまでなれるかというと、甚だ疑問だ。

 小林は岡崎慎司や本田圭祐の「スペア」。ハーフナーは時間限定の「飛び道具」というのが、現実的な収まりどころだろう。

 結局のところ、ヨーロッパ組をはじめとした従来の主力を中心にチームを固め、決定機の数を増やす以外に、得点力不足解消の妙案はないというのが現状だ。

 ハリルホジッチ監督は岡崎に対して、冗談で「お前はレスターではボランチかセンターバックだな」と話したそうだが、要するにレスターでの岡崎は点取り屋というより、守備的な役割を強く求められているという意味だ。にもかかわらず指揮官は、「日本代表ではまったく違う役割を要求する。ゴールを取ってほしい」と岡崎に期待する。

 また、本田についても「ミランでは右MFとしてプレーしているが、日本代表では違う役割を求める。FWとして、ミランよりももっと高いポジションでプレーすることになる」と話している。

 こうした言葉からうかがえるのは、彼らふたりに対する指揮官の絶大な信頼だ。これまでの経験、実績、そして現在のプレー環境を考えても、彼らが絶対的な存在であるのは当然のことだろう。

 しかし、裏を返せば、ヨーロッパでは守備的な役割をより多く求められるFWを、日本代表では攻撃の主軸に据えなければならないということであり、所属クラブとは異なる役割を与えてでも、彼らに頼らなければならないということだ。

 ケガから復帰したばかりの清武弘嗣にしても、ハリルホジッチ監督は早々に招集することに若干の逡巡があったようだが、「彼のクオリティが必要」と結局は選出に至った。

 ボールを支配し、相手を押し込む展開に持ち込みながらも、なかなか得点が奪えない。そんな試合が続く状況に、ハリルホジッチ監督の焦りや苛立ちが少なからずうかがえる。

 加えて、日本代表が試合をするのは昨年11月17日以来、約4カ月ぶり。長く一緒にプレーしてきている主力組といえども、これだけ間隔が空くと互いの呼吸を合わせるのに時間が必要だろう。また、国内組はまだ新シーズンが始まったばかりで、コンディションが上がりきっていない。公式戦に臨むための好条件が整っているとは言い難い。

 果たして得点力不足解消のカギを握るのは、好調な新戦力か。あるいは指揮官の信頼厚いヨーロッパ組か。

 日本代表は、いかにしてゴールが遠い現状を脱するのだろうか。期待よりも不安が多めの注目ポイントである。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki