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交際、同棲して4年という男性が、彼女への気持ちが薄れたため、別れを告げた。ところが数日後、「私たち、結婚したから」と彼女から通告された――。そんな驚きの話が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。

投稿によると、そのカップルは半年前に二人で「婚姻届」を書いたが、提出しないままになっていた。しばらくして、別の女性を好きになった男性が別れを切り出したところ、彼女が勝手に婚姻届を出してしまったのだという。

男性が「そんなのは無効だ」と言っても、相手は「自分が書いたものだからそれは認められない」「私は離婚も絶対にしない」と一歩もひく様子はない。このような場合、いったん婚姻届に署名をしてしまった以上は、相手に勝手に提出されても文句はいえないのか。「そんな婚姻届が無効だ」と主張することはできないのか。石川和弘弁護士に話を聞いた。

●結婚する意思がない「婚姻届」は無効

「婚姻届は、婚姻届作成時および婚姻届受理時の両時点で、当事者間に『真に社会通念上、夫婦であると認められる関係』の設定を欲する意思が必要です。その意思がないのにもかかわらず、婚姻届が提出された場合には、婚姻は無効となります。

今回の男性は、婚姻届を作成した時点では婚姻の意思がありました。しかし、提出時にはなかったのですから、自らが作成した婚姻届であっても『無効』と考えられます」

婚姻届を無効にするためには、どのような手続きが必要になるのか。

「婚姻を無効とするための手続きは、次のような流れになります。

(1)家庭裁判所に対する婚姻無効の調停を申し立て

(2)調停不成立の場合、家庭裁判所に対する婚姻無効の訴えの提起

(3)婚姻無効の確定判決に基づく戸籍の訂正

調停を申し立てる前に、家裁に訴えの提起をすることはできません。この手続きにどのくらい時間がかかるかは、事前には分かりません」

●婚約破棄で「慰謝料請求」される恐れ

ところで、今回のケースで問題となるのは「婚姻届の無効」だけではないという。石川弁護士は、男性について別の問題があることを指摘する。

「本件では、女性は男性に対して、慰謝料を請求できます。

婚姻届の作成までなされている以上、婚約が成立していると判断されます。かつ、男性の婚約破棄には、正当な理由がないからです。慰謝料の額はケースにより異なり、このケースでも具体的な金額を回答することは困難です。

他方、勝手に婚姻届を出されたことにより、男性は、法的手続を取らなければならなくなったのですから、女性の行為は不法行為にあたり、男性は女性に対し、損害賠償請求をすることができます」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
石川 和弘(いしかわ・かずひろ)弁護士
平成9年弁護士登録。主たる取扱い分野は、建築、不動産、交通事故、相続。モットーは、「分かりやすい説明と迅速な対応」
事務所名:弁護士法人札幌・石川法律事務所
事務所URL:http://ishikawa-lo.com/