59歳女性、亡きわが娘の凍結卵子で出産を希望(画像はイメージです)
4年前に20代の娘を亡くしていた59歳の女性が、年齢的なリスクを恐れず、娘の凍結卵子で赤ちゃんを出産することを強く望んでいる。それが叶えば赤ちゃんは孫となり、また娘の生まれ変わりのような存在にもなる。ただし、倫理の壁は非常に厚いもようだ。

英メディア『dailymail.co.uk』が報じた記事が興味深いのでご紹介したい。ロンドンのハマースミスに暮らしていた女性が、20代の若さでこの世を去ったのは今から4年前のこと。一人娘であった彼女は23歳で大腸がんを宣告され、「治ったら赤ちゃんを産みたい」との希望を託し、3つの卵子を凍結保存していた。それを知った59歳の母親は夫とよく話し合い、亡きわが娘の遺志を継ぐつもりで、精子バンクと女性ホルモン療法を頼りに赤ちゃんを出産することを切望しているという。

問題は、契約時の書類に“この卵子を母親に譲りたい”といった文言もない上に、凍結した本人が死亡し、母親は不妊治療の対象年齢を超えた50代後半であること。このことから夫妻は2013年11月以来たびたび英・保健省の管轄下にある「ヒトの受精および胚研究認可局(Human Fertilisation and Embryology Authority)」にて陳情を行っているが、生命倫理と規約の両面から毎回却下されてきた。しかしアメリカでは2012年にメイン州の49歳女性が、2013年にはアイオワ州の53歳女性が、そして昨年はユタ州の58歳女性がいずれも娘の卵子により代理母となって孫を出産しており、英ウェストミッドランズ州でも2005年、稀な肺の疾患に苦しむ娘のために、アニー・カサーリーさんという当時53歳の母親が代理母として孫を出産していた。

夫妻の願いは自分たちにもその権利を認めてもらうこと。「それは娘が遺した最後の言葉でした。立ち会っていたお医者さんも証人です」として、現在は高等法院で熱心な働きかけを行っている。なお娘の凍結卵子は10年契約で、2018年2月をもって廃棄となることから夫妻は焦っており、1100万円ほどでそうした体外受精を請け負ってくれる米ニューヨークの専門医を訪ねることも検討中だ。

ちなみにロンドンほかイギリスに3つの不妊治療施設を構える「ARGC -The IVF Clinic」の院長モハメッド・タラニッシ博士をはじめ、政治家や倫理委員会などは「そのような体外受精など聞いたこともない」、「同情するものの倫理上やはり許されることではない」、「人為的にいろいろなことを操作できるような仕組みにすると、命を授かることの重みが薄れる」などとこぞって否定的な見解を示しているもようだ。

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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)