今、電子マネー業界がアツい。2013年11月にはユニーグループが「ユニコ」、14年3月にはドン・キホーテが「マジカ」と、中堅スーパーやディスカウントストアが独自の電子マネーを導入させたかと思えば、14年6月にはauが「au WALLET」をスタート。

auユーザーしか利用できないものの、6月末までに申し込めば、あらかじめ1000円をチャージしたカードを発送するなどの大キャンペーンを行なったこともあり、カード発行枚数は3ヵ月で500万枚を超えた。

なぜ電子マネーを導入するのか?

「それは店側のメリットも大きいからです」。こう話すのは、『図解 電子マネー業界ハンドブック』(東洋経済新報社)などの著書があり、ポイントカードにも詳しい岩田昭男氏。

「今、発行中の電子マネーは、ほとんどがポイントカードと一体。それによる客の囲い込み効果がまずひとつ。それから現金を用意しなくて済むので、現金管理のコストも削減できる。

また、最近では財布から小銭を取り出すのが大変だという高齢者の利用も増えています。レジがスムーズに流れれば、レジ数を減らし人件費の削減も可能になります」

もちろん、開発した電子マネーが普及すれば加盟店から手数料も徴収できる。使える場が広がるほど儲かるのが電子マネーなのだ。

そんな状況のなか、「楽天Edy」「Suica」「nanaco」が三つ巴(どもえ)で激しくトップ争いをしている。今のところ、発行枚数では楽天Edyがトップだが、決済件数になるとnanacoが逆転。本当に強いのはどこなのか。

「やはりnanacoでしょう。今はセブン-イレブンなどグループ内の利用が中心ですが、nanacoポイントもTポイントのような共通ポイント化を目指し加盟店を探している最中です。もしここに全国規模の有名チェーンが2、3加われば一気に広がる可能性も」(前出・岩田氏)

さらに、規格争いもあるという。

「現在、この3つは“フェリカ”という規格を利用していますが、これはSuicaのための規格といってもいい。特長は読み取りが早いこと。Suicaの開発は改札が混雑しないよう、いかに早く読み取れるかが重要でした。

ただ、店での決済にそこまでのスピードは求められません。新しいiPhoneには“NFC”という規格が搭載されました。

今はアップル独自の電子マネー“アップルペイ”専用ですが、端末のコストがフェリカより安く、導入する店側の負担が軽い。アップルペイが広がるかは疑問ですが、NFC規格の新しい電子マネーが登場すればそちらが一気に広まるかもしれません」(岩田氏)

使い勝手を考えれば、統合が望まれる電子マネー。だが、しばらくは乱立状態が続きそうだ。

(取材・文/井出尚志、渡辺雅史、高山 恵[リーゼント] 鈴木晴美)