1995年から続く、日本人選手のMLBデビュー(1995年〜2006年)

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マエケンもメジャー移籍を断念、20年続く歴史の行方は?

 メジャーで次々とフリーエージェント(FA)選手の所属が決まる中、日米で注目されていた1人の選手が大きな動きを見せた。前田健太がポスティングシステム(入札制度)によるメジャー移籍を断念。来年も広島のために投げることになった。

 残留の可能性が高いと見られていたとはいえ、アメリカ国内での注目度は高かった。地元メディアは、現在までマーケットに残っている実力者をランク付けし、タイガースからFAのマックス・シャーザー、ロイヤルズからFAのジェームス・シールズに続く3位と評価したほどだ。

 オリックスの金子千尋もメジャー移籍を封印。オリックス残留か、阪神など国内球団へのFA移籍かという状況になっている。阪神から海外FA権を行使し、メジャーを目指す鳥谷敬の移籍がまとまらなければ、ヤンキース傘下でプレーする加藤豪将らマイナー契約の選手が昇格しない限り、来年の日本人のMLBデビューはゼロとなる。その場合は、1995年の野茂英雄以降、今年の田中将大と和田毅まで続いてきた歴史が20年で途切れることになる。

 今年はヤンキースへ移籍した田中の快進撃を筆頭に、日本人選手たちが活躍したシーズンだった。1964年に村上雅則が日本人初のメジャリーガーになってから、今年で51年目。これまで投手、野手ともに沢山の選手が海を渡った。

1年目から主力、もはや「挑戦」という言葉はふさわしくない

 1995年、野茂はドジャースとマイナー契約を交わし、メジャー挑戦のパイオニアとなった。5月に日本人としては村上以来のMLBデビュー。日本人2人目のメジャーリーガーとなり、トルネード旋風を巻き起こした。

 1年目から13勝6敗、リーグトップの236奪三振と大活躍。キャリアを通じて、新人王獲得、2度のノーヒットノーランなどの偉業を達成した。野茂が扉をこじあけ、日本人選手の挑戦が本格的に始まった。

 翌年、マック鈴木が日本球界を経験せずにマリナーズでメジャーデビューした。1997年には長谷川滋利がエンゼルスへ金銭トレードという新しい形で加入すると、入団会見では英語を披露。ディズニーランド近くに本拠地を置くアナハイムの球団に入団した右腕はチームの印象を記者から問われ「ピッチャー・イズ・ミッキーマウス。キャッチャー・イズ・ミニーマウス」とジョークを交えて答えるなど、話題を呼んだ。

 1998年には吉井理人が初めてFA権を行使してのメジャー挑戦でメッツへ入団。その後も、佐々木主浩、イチロー、新庄剛志、松井秀喜、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中らが海を渡ったが、次第に入団1年目からチームの主力として、相手を上回るプレーを見せるようになっていった。

 多くの日本人選手がメジャーで実績を残してきた今、「挑戦」という言葉はもはやふさわしくないかもしれない。主力としてワールドシリーズに出場する選手も増え、日本人の力が証明されていった。

鍵を握る鳥谷にはブルージェイズが興味

 そして今年は前田や金子といった選手が海を渡ると思われていた。メジャー球団のスカウトもシーズンを通して投球をチェック。契約への準備を進めていたが、2投手とも日本残留が決まった。

 昨年から新ポスティング制度になり、入札金の上限が2000万ドル(約23億8000万円)になったとはいえ、前田が広島残留となった理由は金額ではない。今季は11勝9敗、防御率2.60。2桁勝利を達成したが、例年のような圧巻の投球は見られなかった。優勝にも手が届かず、本人も球団も今季の成績に納得していない。また、金子はオフに入ってから手術した右肘の影響もあったのかもしれない。

 ただ、今オフの日本人選手のメジャー移籍の火は消えていない。

 ブルージェイズのアレックス・アンソポウロスGMは、地元メディア「スポーツネット(電子版)」で鳥谷敬内野手を「間違いなくチームにフィットする」と絶賛し、正二塁手候補として獲得を検討していることを明言。代理人のスコット・ボラス氏がどのような決断をするのかも注目されている。

 一方で阪神も残留へ全力を注いでおり、まだまだ去就の行方はわからない。メジャーデビューが途切れたからといって日本人選手の功績が色あせることはないが、20年もの間、続いてきた歴史だけにその動向は気になるところだ。20年連続で終わるのか、21年連続となるのか、まずは鳥谷の去就の行方を見守りたい。