ドバイ・メトロ

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10万円でドバイ旅行を満喫する。
この夏、航空券、宿泊費もすべて込みで、10万円で楽しんでくるという無謀な旅に挑戦してみた。

■【手配編】はコチラ

飛行機搭乗から入国まで


今回、渡航に使用したのはエミレーツ航空だったが、ドバイに行くなら断然便利だと感じた。羽田と成田から毎日2便、ドバイへの直行便が飛んでいる。特に羽田からの便は深夜発なので、出発当日も普段通り仕事を終えてからゆっくりと空港に向かう事が出来た。燃油サーチャージ込みで往復8万7千円と、比較的安いチケットがあった。正規の格安航空券なので、マイルが加算されるのもありがたい。

午前0時半。エミレーツ航空のボーイング777-200が羽田空港を離陸した。
機内サービスの充実は想像以上だった。機内泊に必須の毛布は、厚手の綿素材で柔らかく肌触りが良い。化繊の薄い毛布は、チクチクして眠れない事があるが、これなら大丈夫。座席のヘッドレストも可動範囲が大きく、頭がしっかり固定出来て寝やすかった。さらに、やけに豪華な携帯用の歯ブラシとアイマスクの入ったノベルティーを全員に配布してくれる。スマホ大のしっかりしたポーチに入っており、歯ブラシも旅行中ずっと使うことが出来た。

また、電子機器も充実している。エコノミークラスにも各座席にUSBポートと電源コンセントがついており、機内でPCを使ったり携帯を充電したりできる。さらに、全席にMac Book Air 11インチ並みの大きな液晶がついている。画面も鮮明でタッチパネルの反応も良い。せっかくなので、放映プログラムを全部覗いてやろうと画面を開いたが、すぐに挫折した。チャンネル数が600以上ある。ハリウッドや邦画の新作が充実しており、日本封切り前の作品も。ほかにもインド映画や香港映画など世界各国の作品が網羅されている。子供用アニメ、スポーツ、海外ドラマに音楽専用チャンネルもあり、CS放送のスカパー状態だ。

消灯時に機内が暗くなると、天井がプラネタリウムのように星空を映す面白い仕掛けになっていた。細かい所まで手の込んだ演出が印象的だ。

早朝6時半、ドバイ空港に到着した。
欧州、アジア、アフリカ・中近東に就航するエミレーツ航空のハブ空港だけあって、24時間体制で空港内の店舗が開いている。日本人の場合は、面倒な入国書類を書く必要がなく、パスポートを持って入国審査を受けるだけで良いのには驚いた。

空港から市内へは、公共交通機関のドバイメトロを利用した。高架鉄道と地下鉄区間があり、日本の地下鉄感覚で利用できる。運行は、曜日によって異なるが、おおよそ早朝6時前から深夜24時まで。2つの路線があり、観光で訪れる市内の主要エリアをほとんど網羅している。ダイヤは日本の地下鉄並みに正確に運行されており、券売機で1日乗車券が16ディルハム(約450円)で購入できる。空港から所用15分弱のStadium駅からドバイユースホステルに向かった。

朝8時過ぎに、駅から徒歩3分にある、ドバイユースホステルに到着。ドバイ最安値帯の一泊3000円。価格相応の環境を覚悟していたが、エアコンの効いた塵一つない大理石のロビーに、良い意味で予想を覆された。愛想のいいフロントのお兄ちゃんに、パスポートと予約表完了メールのプリントアウトを見せると、すぐに「グッドモーニング!」と、笑顔で応えてくれた。チェックインまで時間があったので荷物を預かって欲しいと伝えると、「ベッドが空いているから、もう使っていいよ」と気の利いた対応をしてくれた。4人部屋のドミトリー(大部屋)で、広さは20畳ぐらい。ロンドンに短期留学に向かう日本人大学生、オーストラリア人バックパッカー、カタールから来た若いビジネスマンが同室だ。自宅のユニットバス3個分以上はあろうかというやけに広いシャワー室は、安宿にありがちなジメジメした湿気が無く快適。勢い良く出る熱いシャワーを浴びて、すぐに街へ出かける事にした。

市内観光へ 世界一高い建造物「バージュ・カリファ」


ドバイメトロで約20分。地球上で最も高い人口建造物「バージュ・カリファ」に向かう。高さ828mの世界一高いビルで、頂上部は160階相当になる。観光客が上ることが出来る展望台が、124階に位置する「アット・ザ・トップ」だ。隣接するドバイモールの地下1階から入場できる。最近では新しい展望台「ザ・スカイ」も地上555mにできた。

即時入場券は300Dhs (約9000円)と高いが、ネットで事前予約すれば125 Dhsや150 Dhs(時間帯によって金額が変わります)で入場できる。空港並みの手荷物検査を受け、エスカレーターや動く歩道を乗り継いだあとにようやく、メインエレベーターの乗り口にたどり着く。ここで分速600mと言われる超高速エレベーターにのって、展望台に向かう。いつ動き出したのかもわからないようなスムーズなスタートから、わずか1分ほどで減速し始める。

暗いエレベーターから、いきなり展望台に出ると、差し込むような明るい日差しに目が開けていられない。徐々に目が慣れると、圧巻の遠景が目前に広がっていた。遥か彼方の地平線まで見渡すことが出来、地球が丸いことを実感できる。乾燥した風が気持ち良く吹き付ける。これだけの高さにありながら屋外デッキに出ることが出来るのはありがたい。

デッキでは、地元のカップルも観光客の家族連れもスマホを掲げてあちこちで自撮りしている。きっと、人工建造物最高所での自撮りになるに違いない。

せっかくバージュ・カリファに来たのだからと、地上から見上げるように写真で撮っても、建物が高すぎてうまく撮れない。そんな時は、"GigaPanドバイ"というサイトを観ると建物の詳細がよくわかる。45ギガバイトの超高解像度画像で、ビルの全体像から、1つの階の窓を大写しした画像にクローズアップできる。かなりの高所の部屋に、スポーツカーが飾ってある様子など、面白いものを見つける事も出来る。

最近では新しい展望台「ザ・スカイ」も148階、地上555Mにできたらしい(なんとギネス記録!入場料は予約で400 Dhs、即時入場は500 Dhsだそうだ)。いつかまた行ってみたいものである。

アラビアンナイト世界を味わえる、アル・ファヒーディ地区(旧名バスタキア地区)、オールド・スークほか



ふたたびドバイ・メトロにのって、Al Fahidi駅を目指す。この駅から所用10分足らずの運河沿いに、歴史保存地区のアル・ファヒーディ(旧名バスタキア)エリアがある。ドバイ発祥の地と呼ばれるこの地は、異国情緒あふれる景観が立ち並ぶ。古くからあるアラビアンスタイルの建物が立ち並び、思い描いた通りの中東世界が広がっている。ギャラリーやカフェ、レストラン等が立ち並び、映画のセットのような美しい景観が楽しめる。朝夕の散歩に訪れたい。ここから運河沿いに5分ほど歩けば、ドバイ観光の定番、オールドスーク(市場)がある。古来交易の町として栄えたドバイの原点となる市場で、アラビアンスタイルの露店が軒を連ねている。ここでは、お土産物用に人気のある伝統的な絵柄のサンダルやストール、民族衣装が買える。

運河の対岸にあるゴールドスークやスパイススークにも足を運んでみた。運河をわたるため、オールド・スークの運河沿いにある船着き場から、地元の人たちに交じってアブラという渡し船に乗る。船に乗って待っていると、出発前に船頭のおじさんがやってくるので1Dhs払えばいい。古き良きアラブの町並みを背に、のどかな運河の船旅を楽しめる。所用時間5分で対岸に到着した。

アラビア式ファーストフードを味わう


小腹がすいたので昼食をとる事にした。
ゴールドスークの裏手にある通り沿いに、ひと際地元の人たちで込み合った店を見つけた。
「スナック&ベイカーズ」というカフェテリアで、ケバブやローストしたチキン、手製のハンバーガーなどが楽しめる現地スタイルのファーストフード店だ。
大振りな鶏がジューシーに焼き上がったグリルドチキンのハーフサイズに、コーラとフライドポテトがついて18Dhs(約\500)だ。言葉がわからなくても写真入りの英語のメニューがあり指差すだけでオーダーは通じる。表面がカリカリに焼けているのに、中は驚くほどしっとりとジューシーで、フォークで突き刺すと、コクのある身がぼろぼろとほぐれ落ちる。かなりのボリュームがありお腹がいっぱいになった。

こうした、ドバイの旧市街全体が、かつての交易の町の面影を残す、異国情緒あふれる町並みになっている。他の中東諸国の町並みと同様、アラビアンナイトの世界を彷彿とさせる喧騒と活気を感じる事が出来る上、世界の多くの観光地と比較しても圧倒的に治安がいい事がドバイ観光の大きな魅力となっている。

巨大モールでショッピング


ドバイは、街全体が免税エリアになっている。世界有数の巨大ショッピングモールがいくつも存在する。
ドバイメトロの駅から直結で、アクセスが便利な「モール・オブ・ジ・エミレーツ」に向かった。館内には約520のショップと飲食店、館内遊園地や映画館が軒を連ねている。ドバイと言えば、高級ブランドのイメージが強いが、実際に行くと庶民の雑貨から手頃なスイーツまで、手の届くものがたくさんある。
お土産の定番と言えば、サウジ王室御用達のデーツ(ナツメヤシの実)の「バティール」(Bateel)やらくだミルクを使ったチョコレート「アル・ナスマ」(Al Nassma)、高級チョコの「パッチ」(Patchi)の他、日本でもおなじみの高級ブランド、カフェなどが立ち並んでいる。
今や日本では超一般的となったアパレルブランド"ZARA"をのぞくと、日本では見かけないアラビアスタイルのシャツが目についた。涼しげなリネンのシャツのえり元から、ストール状の帯が一体化して伸びており、首元に巻き付けて着こなすようだ。日差しの強いこの地にはぴったりのデザインだ。価格は270Dh(\7500)。かなりハイセンスなデザインで、ヨーロッパからの観光客たちがお土産に購入していた。
このドバイモール、週末は24時まで営業しており、飲食店に限っては深夜2時ころまでオープンしていることも。ひととり観光地を回ったあとに立ち寄れるのは非常にうれしい。

無料で楽しめる圧巻のエンターテイメント


1日の観光の締めくくりに、ドバイモールに向かった。

目的は2つある。その1つ目が、館内にある「ドバイ水族館&アンダーウォーターズー」の巨大水槽を観る事だ。全長32.88m、高さ8.3m、ビル3階分の高さにわたる水槽には、なんとサンゴまであった。あまりの大きさに、もはや水槽を感じさせない海中を、群れをなす回遊魚やサメ、トロピカルフィッシュが縦横無尽に泳いでいる。この圧巻の様子を無料で眺める事が出来る。今回の10万円プランにぴったりだ。もちろん、入場料80Dhs(\2200)を払えば、水槽の下部にある透明のトンネルを通って、水族館内部の展示を楽しめる。フロア3階分に展開する大小様々な水槽と展示スペースに飼育される85種3万3000匹の魚や、ペンギン、水辺の生物を観る事が出来る。

そして、最後に向かったのが同じドバイモールの敷地内にある「ドバイ・ファウンテン」だ。世界最高の人工建造物「ブルジュカリファ」のすぐ横に広がる大きな人工池が舞台だ。ドバイモールは、この池を囲むように横長に広がっている。18時から23時の間、30分間隔で5分の光と音楽と噴水の織りなすショーが行われる(噴水のタイミングは時期により変更の可能性も)。幅275mもの広範囲にわたり、光と音に彩られた水の帯が、最大50階にも達する高さで乱舞する。コンピューターによる水の動きは、1000パターン以上あるといい、毎回異なる曲とプログラムでショーが行われるので、何度観ても飽きる事がない。
18時丁度。日が傾き、ドバイにも涼しい風が吹くころ、突然地響きのような音が、四方から鳴り響いた。お腹の底にまで響く重低音にあわせて、池の中央に水柱が立つ。音楽が突然アップテンポになり、夕闇を切り裂くような光の列が、踊るように舞う水柱を照らす。地元の家族連れや旅行者が、皆あっけにとられたように噴水を見上げている。視界全体が光と音の世界に包まれる。幻想的な光景に鳥肌が立つ。

ショートショーの合間に、池のほとりに並ぶオープンテラスのカフェの一軒「ソーシャル・カフェ」に入り、アイスコーヒー25Dhs(約\600)を飲む。飲み物の価格は若干高いが、席からショーを観る事が出来る。20分後に始まった次のショーは、おもむきを変えた緩やかなバラード。柔らかいリズムに乗せ、立ち上る噴水が滑らかなロープのように曲線を描き、水柱の列が曲に合わせて回転する。

二度のショーを満喫したあとは、館内のフードコートに場所を移し、アラビアンスタイルのラップサンドとドリンクのセット25Dhs(\700)で腹ごしらえ。広大な館内を一通り回っただけで、すでに夜8時半。遊びすぎて、疲れた。よし、宿に帰ろう。

手持ちの費用7000円に対し、本日の観光で使った金額は、約5000円。まだ2000円残っている。あとは残金で土産を買って空港へ向かうのみだ。(岸田浩和)