このアサモアとキエッリーニの厳しいマークに自由を奪われた本田。25分の決定機も決めきれなかった。 (C) Getty Images

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 1か月前のTIMカップ(プレシーズンマッチ)で、本田圭佑はユベントスからゴールを奪った。ただその時のユーベは、4バックへの切り替えテストの真っ最中だった。システム変更は上手く進まず、結局、本田のそのゴールで見切りをつけたユーベのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は、アントニオ・コンテ前監督(現イタリア代表)時代から慣れ親しんだ3-5-2にシステムを戻している。つまり、ユーベは1か月前とはまったく異なるチームだった。
 
 3バックの左に入ったジョルジョ・キエッリーニと左WBのクアドォー・アサモアは、絶妙な距離感を保って、右FWの本田の動きに対処した。アウトサイドに流れればアサモアがプレス。アサモアが高いポジションを保ち、本田が裏のスペースを狙った時にはキエッリーニが身体を寄せてくる。ラツィオ戦、パルマ戦の本田は巧みにスペースを使ってチャンスを作ったが、ユーベはそのスペースを与えてくれなかった。
 
 それでも25分には、ビッグチャンスに絡む。左サイドからのアーリークロスに反応し、鋭角に走り込みながらヘッド。タイミングを盗んでキエッリーニを見事に振り切ったが、しかし、コースに入ったGKジャンルイジ・ブッフォンに防がれた。
 
 そこからミランは防戦一方になっていった。本田もキエッリーニとアサモアに挟まれてボールを失い、空中戦でキエッリーニに競り負けてボールを収められず、カウンターを招く原因にもなった。
 
 当然こんな状況では守備に忙殺される時間のほうが長くなり、時折ボールを右サイドで拾ってもクリアが精一杯。攻撃の組み立てを期待していたファンからは落胆の声が上がった。結局ミランは71分にカルロス・テベスにゴールを許し、本田もろくにチャンスを作れないまま83分にベンチに下げられた。スタンドからはまばらながらもブーイングが上がっていた。
 
 ミランは守備を重視し、カウンター狙いのプランを立てていた。ところがこの日は、本田だけでなく、ステファン・エル・シャーラウィの突破も、「偽9番」ジェレミー・メネーズの臨機応変なポジショニングもことごとく対策され、手を打たれている。
「チームとしての成熟度が試合を分けたと思う」と本田は述懐したが、その通り、ゲームプランからフィジカル能力まで、全ての側面で上を行かれた印象だった。
 
 そのなかで、空中戦に強いキエッリーニを振り切り、チーム唯一の決定機を作ったことは評価に値する光明なのかもしれない。とはいえ、やはりチャンスを決め切ってこそだ。スタメンに定着しつつある本田がその立場を確固たるものにするためには、ユーベ戦のようなタフな試合で結果を出していくしかない。
 
取材・文:神尾光臣