「虐待ハイリスク」と言われている、夜の世界のシングルマザー。彼女たちは何を思い、どんな環境で子どもを育てているのだろうか。その「声」が、社会に届くことは少ない。そこで、全国で最もひとり親世帯の割合が高い沖縄県(2010年国勢調査)で、彼女たちの「声」に耳を傾けた。

高収入をうたう夜の仕事も手元に残るお金は少ない

沖縄県ひとり親世帯等実態調査報告書(平成21年3月)を見ると、昼間の仕事をしているシングルマザーの月収は10〜15万円が31パーセントと最も多い。キャバクラに勤めているシングルマザーの月収は約18万円。一見、キャバクラのほうが稼げるようだが、ヘアメイク代やタクシー代などの経費を自腹で払わなければならない。送迎のない地域に住んでいるキャバ嬢は、タクシー代だけで月に5万円、それに加えてヘアメイク代は、最低でも1回1,000円はかかる。これらの必要経費を差し引くと、昼間の仕事のシングルマザーと所得に大差はない。

昼間の日払いのアルバイトもあるが、ネットで「高収入」「日払い」のワードで検索すると、上位に表示されるのは、キャバクラや風俗の仕事。求人雑誌で「日払い」なのも、夜の仕事が目立つ。彼女たちは、露出の多い求人募集に導かれて、夜の世界へ吸い込まれていく。

経済的事情で夜の仕事を選択

「出産を決めてから一度も昼間の仕事をしたことがない。すぐ働かないとお金が無かったから、昼間の仕事を探す余裕がなかった」(キャバクラ勤務・子14歳、13歳、11歳)

「妊娠中も働いていました。産後はすぐ復帰です。一度は、昼間の仕事したけど月8万円しか貰えなくて、電気も止まりそうになったから」(ソープランド勤務・子4歳)

生活の厳しい実情

「仕事が終わって帰宅するのは、朝5時頃。そこから朝ご飯作って家事でしょ。1日5時間寝れたら良い方だよ」(キャバクラ勤務・子11歳)

「お酒が体に合わなくて、飲むと起きれない。医師から止められてるけど、他に仕事が無いんです。子どもと生活リズムが違うから、接する時間が短くなっちゃう」(クラブ勤務・子5歳)

子どもの預け場所の確保に苦労

「時間保育を利用すると、1時間700円。他に安いところがあるの知らなかった」(キャバクラ勤務・子5歳)

「実家に預けてたけど、お金は渡してたから生活が楽になるわけじゃない」(ソープランド勤務・子3歳)

「昼間は無認可の保育園に預けて、夜は実家。仕事を掛け持ちしないと、生活できない」(クラブ勤務・子5歳、2歳)

「夜の世界」への周囲の偏見

「こんな事件がある度に、『お前たちみたいな女が子どもを殺すんだ!』って、お客さんから言われる」(風俗店勤務・子6歳)

「『水商売の女がまともな人間を育てれるわけがない』って、言われたことがあります」(キャバクラ勤務・子5歳)

「子どもが小学生になってからは、友達に私の仕事のことを言われるみたい」(キャバクラ勤務・子11歳)

今回話を聞いた女性たちの学歴は、高卒3人、中卒4人。学歴が低いと昼間の仕事で高収入を得るのは難しい。特に沖縄県は、最低賃金が全国一低い664円(平成25年度)。シングルマザーたちは子どもを養うため、少しでも高い収入を得ようと、キャバクラや風俗といった時給の高い「夜の仕事」を選択して働いているのだ。

埼玉県であったベビーシッター事件について「私たちも預け先が無かったり、高かったりしたら、使ってしまうと思う。夜間保育が少ない地方では、家に子どもだけ残して夜働いているママもいるよ」という声もあった。彼女たちは、偏見や生活苦の中で強く生きようとしている。客から罵倒されても、子どもを守るために必死なのだ。

(文=GrowAsPeople上原ゆか子)

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画像:Original Update by Guilherme Yagui