池田vs川内 球春到来！ 四国の「勝負強さ」を実感
得点をあげる池田高校
対外試合が解禁となった。毎年のことだが、この時期になると「また野球の季節がやってくるなぁ」と背筋が伸びる思いがする。今年はどんな野球に出会えるのか、ワクワクする。 鹿児島市内でセンバツに出場する池田（徳島）が川内、鶴丸と対戦すると聞いて、見に行った。「さわやかイレブン」「やまびこ打線」のフレーズでかつて甲子園を席巻し、名将・蔦文也監督（故人）の名とともに全国にその名をとどろかせた学校だ。オールドファンには懐かしい名門校が22年ぶりに甲子園に帰ってくるということで、いろんな野球雑誌のセンバツ特集号の表紙も飾った。池田にとっても今季初の対外試合ということで、徳島の放送局やスポーツ紙の記者らしき人も数人鹿児島までやってきていたところに、注目度の高さがうかがえた。
昨年11月の1年生大会決勝以来のスコアブックを開き、川内VS池田の勝負を観戦。徳島池田はエース名西 宥人（3年）が先発し、雑誌に予想オーダーとして紹介された通りのレギュラーメンバーが先発だった。両者公式戦のユニホームを着用し「場内アナウンス」まで用意して、公式戦さながらの雰囲気を醸し出していた。
2回、池田は四球を足掛かりに一死一三塁のチャンスを作り、エンドランを仕掛ける。7番・細田 航南（3年）が高めのボール球をしっかりヘッドをきかせてレフトの頭上を越える走者一掃の二塁打を放って先制した。
かつての「やまびこ打線」とはイメージを一新し、バントや機動力を使った「新・やまびこ打線」と紹介されていた通りの攻めだった。それ以降、5回までは池田・名西、川内・井上 広大（3年）の両先発が徐々にリズムを作り、守備も好守で盛り上げ、緊迫した展開になった。
指示を出す中迫俊明監督（川内）
試合が動いたのはグラウンド整備後の6回、池田は2つの四球などを足掛かりにして二死満塁のチャンスに名西がレフト前タイムリーを放ち、1番・佐藤 昌弘（3年）、2番・�皸� 克也（2年）にも連続長打が出て、打者10人の猛攻で一挙6点を挙げ試合を決めた。この試合のテーマに「どんな展開になっても前向きに野球をやりきること」を掲げていた岡田康志監督は「外野の頭をライナーで越えていくような秋には見られなかった打球が見られた。子供たちが一冬バットを振ってきた成果が出せて良かった」と振り返る。投打ともに内容のある勝ちっぷりに「出来過ぎです」と苦笑した。
川内の中迫俊明監督は試合後、ナインを集めてこの試合の「勝負所」になったポイントを3つ挙げていた。2点を追いかける4回一死三塁でスクイズが決められなかったこと、6回に敬遠で満塁策をとり勝負にいったところで打たれたこと、7回に代打で出た選手が長打を放って1点を返しながら、その後にピッチャーゴロで不用意に飛び出してアウトになったこと…「ここぞ」という勝負どころをものにできるのがセンバツ出場校であり、それができないところに勝ち上がれない要因がある。「普段の練習から1球に対して必死になり、集中し、チームのために何をしなければいけないかを考えろ！」。ナインに檄を飛ばしていた。
「四国の野球の勝負強さを実感した」中迫監督は言う。練習試合とは勝ち負けよりも、自分たちは今、何ができて何ができていないのかを確認しながら、一つずつ昇華させていく作業なのだ。
この対戦は中迫監督と岡田監督が筑波大の先輩・後輩の関係ということで実現した。岡田監督が入学する前の春にまだ住まいが決まっていなかった間、中迫監督の部屋で同宿していた。「蔦野球のことをいろいろ教わりましたよ」と懐かしそうに語る。かつて川内に木佐貫洋（現オリックス）がいた頃、池田に合宿にいったことがあり、岡田監督は中迫監督が鹿児島工で夏ベスト4に入った頃、鹿児島に研修に来ている。2人並んで野球談議や指導論をかわす姿には、いくつになって少年のように野球にひたむきになる「野球小僧」ぶりがにじみ出ていた。第2試合の鶴丸戦が始まるまでの間、岡田監督の希望で池田と川内、両チーム入り混じってのシートノックだった。川内の選手たちはセンバツに出場するチームの野球を最も身近に体験し、池田の選手たちは異郷の地のライバルを肌で感じる。きっといつまでたっても忘れない思い出になるのだろうと微笑ましく思えた。
(写真・文=政 純一郎)
