昨年末に放送終了した昼ドラ『天国の恋』(フジテレビ系)での怪演が話題を呼んだ個性派女優・毬谷友子(53)。女の業や情念を描かせたら当代随一の脚本家・中島丈博氏が、ヒロインの母親役を彼女に当て書きしたという。

「中島先生は、私みたいな化け物系が大好きなんですって(笑)。その思いに応えようと無我夢中でした。物語の序盤、私が演じた徳美がテーブルの上で暴れ狂う1シーンに、私のセリフが15ページ半ですよ。ドラマを、私に懸けてくれていると感じました」(毬谷・以下同)

 徳美という女性は、これまで毬谷が演じた女性たち、そして、彼女自身にも重なるという。

「一人芝居の『弥々』をはじめ、蜷川幸雄さん演出の『天保十二年のシェイクスピア』(’05年)のお冬、映画『宮城野』(’09年)で演じた女郎、みんな過酷な人生なんだけれど、明るく笑い飛ばして生きている。愛する者のためには、命すらも投げ出すようなピュアな心の持ち主でね。私の人生も似たところがあって、人生の大事な選択をする瞬間、なぜ、そっちを選ぶの? みたいなことばかりでした(笑)」 

劇作家・矢代静一を父に持つ彼女は、高校卒業後、宝塚音楽学校に進学する。学校を歌の首席で卒業。宝塚歌劇団では初舞台から本公演でソロを歌う。退団後は、舞台を中心に活動。そのなかで、父が娘のために書き下ろした作品が『弥々』だった。

「父は、私が生涯を通じて打ち込める作品を残してくれた。私が演じ続けることによって、矢代静一という作家が生き続けられる、と思っています」

 大きな転機は2年半前、突然襲った病いで、一時は死をも覚悟したという。

「でも、そのとき、ある種の区切りがついたんです。幸い、こうして生かされている今、何のために生きようか? と考えたとき、自虐ネタでも、みんなを笑わせたいの。『天国の恋』で、婦長が転ぶシーンでパンツが見えちゃったことがあったけど、パンツくらいでNGにしないでいいわ、って。遊園地のお化け屋敷って、怖いけど楽しいじゃない? そんな存在がいいなぁ、と思うんです」

 そして’14年最初の舞台となる一人芝居『障子の国のティンカーベル』(2月13日〜)が開演する。旧知の仲である野田秀樹の戯曲で、妖精ティンカーベルとピーターパンが恋をする物語。

「野田さんが若かりしころの作品で、彼は当時、夢の遊眠社で走り回り、ピーターパンみたいだった(笑)。この作品では『恋をしよう!』とか、今だったら絶対書かない詩も多いの(笑)。ひとりで60ページのセリフはもう、極限状態よ。でも、やれるうちは挑戦したいですね」