ノーゴールに終わったザックジャパン。写真は、岡崎慎司 (撮影:佐野美樹/PICSPORT)

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【橋本明(ノヴィサド)の視点/攻撃陣で1人気を吐いたのが岡崎慎司。完敗にも前を向く岡崎の心境とは……】

先制点を許してから沈黙する時間帯が増えていった日本の攻撃陣にあって、なんとか状況を好転させようと気を吐いていたのが岡崎慎司だった。

試合開始時のポジションである右サイドでは、巧みな動き出しで守備ラインの裏に斜めに抜けるプレーを何度も見せ、試合途中に1トップに移ってからもセンターバックとの駆け引きを繰り返してボールを引き出そうとしていた。

結果的にパスが入ってくる回数はあまり多くなく、また、ボールが出てきてもタイミングがズレてチャンスに結びつかない場面もあった。それでも、膠着状態に陥った試合の流れを一発で変えようとする狙いは強く感じさせた。

「ギリギリの試合になってきたら、もっと少人数のところにボールを出していかないといけない。(柿谷)曜一朗はシュートまで持っていく力があるし、俺も裏に抜けるのは得意だし、そういうのをもっと狙っていけばいい。カウンターも受けないし、そこで点を取れればという思いが自分のなかにあって、みんなに話もしている」

奮闘していたのは攻撃の時だけではない。守備の局面になるとアグレッシブにプレッシャーをかけにいき、前線からのディフェンスを怠らなかった。体力的に厳しくなる試合終盤でもGKに圧力をかけにいく場面が見られるなど、持ち味である泥臭いプレーはこの日も健在だった。

ザックジャパンは0-2で敗れた。セルビアはチェルシーでプレーするイバノビッチら一流選手を多く抱える国だが、この一戦では主力の半数以上が欠場。日本はワールドカップに出場できないチームの“2軍”に近いメンバーに完敗を喫したのだ。選手たちは一様にショックを隠せなかったが、岡崎は前を向いていた。

「悲観するような試合でもないと思うし、この2試合で負けたらとか、次の2試合で負けたらという思いはない。別にワールドカップじゃないので、自分たちが目指すサッカーのクオリティを上げていくだけだと思う。チームなのでいいときもあれば悪いときもあるけど、いい方向には進んでいると思うし、今話し合いもしているので、もっといい方向に向かっていくようにしていくだけ」

苦しくても、今はあらゆる経験を成長の糧にしていくつもり。そう考える岡崎は進み続けている。