「第一志望の企業の社員が全員神様に見える」就職活動ならではの哀愁がギッシリ『就活あるある』
この時期、打ち合わせなどで大きな企業(のあるビル)にお邪魔すると、エレベーターや受付で初々しいスーツ姿の若者に会釈されることがある。新入社員、という場合ももちろんあるけれど、その緊張具合から「就活中の学生だな」とすぐわかる。
《就活あるある02「第一志望の企業の社員が全員神様に見える」》
いやいやいや、社員じゃないよ、こちとらたまたま居合わせたしがないライターですよ。そんな恐縮しなくてもいいのに……と逆に申し訳なってくることも。うっかりトイレなんかで遭遇すると、緊張感はさらに倍増するようだ。
《就活あるある12「会社のトイレで社員と隣になったときの気の張り」》
人生の一瞬に偶然すれ違ったこんなオッサンにも油断できないだなんて何だか可哀想。
書店では「就活指南書」や「面接ハウツー本」「エントリーシートの書き方」の数々は時期を問わず大きな面積を占めている。ただ、自分の学生時代を振り返ってみても、こうした類いの本ってほとんど役に立った記憶がない(だからライターなんてやっている気もするけど)。
そこで紹介したいのが本書『就活ああるある:内定する人 しない人』。
著者・武野光は2012年に大学を卒業したばかりの社会人1回生(執筆時)。自身のブログ「無能の就活。」にまとめていた「就活あるある」を再編し、コラムやイラストなどを付け加えて上梓した本になる。
著者自身、TOEIC未受験でサークルにも未所属、資格は車とバイクの免許だけ……という、いわゆる「シューカツが有利なる条件」が何もなかったにもかかわらず、戦後2番目の就職氷河期といわれる状況で複数社から内定をゲット。その内定獲得法を『凡人内定戦略』として刊行した経験もあり、本書が2冊目の「就活本」となる。
上述した「就活あるある」以外でも、本書の帯で紹介されている《人見知りなのに面接では「営業したいです!」と言う》や、《水商売してたっぽい女子は、面接官の喜ばせ方を知っている》など、企業の人事担当者からみても「あるある」と頷きたくなるものも多いだろう。他にも《就活あるある09「人生ではじめて速達を使う。めっちゃ使う」》《就活あるある10「大学で『就活どう?』が挨拶になる》など、自分が(一応)経験した15年前の就活から大勢は変わってないなぁと感じるものがある一方で、《就活あるある27「検索されることを懸念してFacebookやTwitterでの下ネタは控える」》といったイマドキな「あるある」、就活指南書には間違いなく載っていない「就活エロあるある」なども登場する。
人生をかけ、藁にもすがりたいのが就活生。過ぎ去ってしまえば「そんなに構えなくてもいいのにね」と思えてくるアレやコレも、当事者にしてみれば緊張の瞬間であり、ストレスの種。そんな「就職活動ならでは可笑しみや哀愁」がギッシリ詰まった一冊だ。
さて、以前拙文で紹介したこともある『野球部あるある』以降、出版界での一大ブームとなっている「あるある本」。気になって調べてみたら、今年に入ってからだけで実に20冊以上もの「あるある本」が刊行されている。でも、その多くは「あるある」というよりも「雑学」「ハウツー」「まめ知識」にとどまっているものが多く、読んでもちょっと物足りない場合が多い。
誰もが知っていることであれば「あるある」ではなく「常識」でしかない。「あるある本」が書籍としての面白さ・有意義度を発揮するのは、ある一定の(でも決してマジョリティではない)カテゴリーの中だからこその共有(あるある)感であり、その狭いカテゴリーを端から見たときの「浮き具合」「異常度」「マイノリティであるが故の哀愁」を綴ってこそだと思うのだ。
その意味で本書は、就活という「異常かつ特別な1年(以上の場合もあるけど)」をテーマに、大学生が陥りやすく、端から見たらおかしな状況を切り取った「あるある本」になっている。
著者自身、就活あるあるが生まれるのは「就活生が就活をビビっているから」であり、その結果生まれる「ネガティブな選択」にこそ「内定を遠ざけている理由」があると解説する。その冷静な判断にこそ内定を近づける方法論があるだろうし、本書が優れた「あるある本」になっている所以だ。
現在絶賛就活中の大学生はもちろん、苦しかったあの頃を懐かしみたい社会人も「あるある」と読める一冊であり、就活をがんばる息子・娘を持つ親や、就活生の本音が知りたい人事担当者にとっても様々な発見があるハズ。
《就活あるある70「説明会案内に『持ち物:やる気』とか書いちゃうベンチャー」》の皆さんにもオススメしたい。
『就活ああるある:内定する人 しない人』
第1章:就活あるある傑作選
第2章:就活あるある春夏秋冬【準備】編 就活目前/自己分析/説明会/企業研究/ベンチャー/自己PR 他
第3章:就活あるある春夏秋冬【選考】編 エントリーシート/就職本/GDGW/筆記試験/面接/セミナー
第4章:就活あるある春夏秋冬【私生活】編 大学生活/ネット/就活エロ/男子/女子/地方学生 他
第5章:就活あるある 春夏秋冬【就活後】編 NNT(無い内定)/内定後
(オグマナオト)
《就活あるある02「第一志望の企業の社員が全員神様に見える」》
いやいやいや、社員じゃないよ、こちとらたまたま居合わせたしがないライターですよ。そんな恐縮しなくてもいいのに……と逆に申し訳なってくることも。うっかりトイレなんかで遭遇すると、緊張感はさらに倍増するようだ。
人生の一瞬に偶然すれ違ったこんなオッサンにも油断できないだなんて何だか可哀想。
書店では「就活指南書」や「面接ハウツー本」「エントリーシートの書き方」の数々は時期を問わず大きな面積を占めている。ただ、自分の学生時代を振り返ってみても、こうした類いの本ってほとんど役に立った記憶がない(だからライターなんてやっている気もするけど)。
そこで紹介したいのが本書『就活ああるある:内定する人 しない人』。
著者・武野光は2012年に大学を卒業したばかりの社会人1回生(執筆時)。自身のブログ「無能の就活。」にまとめていた「就活あるある」を再編し、コラムやイラストなどを付け加えて上梓した本になる。
著者自身、TOEIC未受験でサークルにも未所属、資格は車とバイクの免許だけ……という、いわゆる「シューカツが有利なる条件」が何もなかったにもかかわらず、戦後2番目の就職氷河期といわれる状況で複数社から内定をゲット。その内定獲得法を『凡人内定戦略』として刊行した経験もあり、本書が2冊目の「就活本」となる。
上述した「就活あるある」以外でも、本書の帯で紹介されている《人見知りなのに面接では「営業したいです!」と言う》や、《水商売してたっぽい女子は、面接官の喜ばせ方を知っている》など、企業の人事担当者からみても「あるある」と頷きたくなるものも多いだろう。他にも《就活あるある09「人生ではじめて速達を使う。めっちゃ使う」》《就活あるある10「大学で『就活どう?』が挨拶になる》など、自分が(一応)経験した15年前の就活から大勢は変わってないなぁと感じるものがある一方で、《就活あるある27「検索されることを懸念してFacebookやTwitterでの下ネタは控える」》といったイマドキな「あるある」、就活指南書には間違いなく載っていない「就活エロあるある」なども登場する。
人生をかけ、藁にもすがりたいのが就活生。過ぎ去ってしまえば「そんなに構えなくてもいいのにね」と思えてくるアレやコレも、当事者にしてみれば緊張の瞬間であり、ストレスの種。そんな「就職活動ならでは可笑しみや哀愁」がギッシリ詰まった一冊だ。
さて、以前拙文で紹介したこともある『野球部あるある』以降、出版界での一大ブームとなっている「あるある本」。気になって調べてみたら、今年に入ってからだけで実に20冊以上もの「あるある本」が刊行されている。でも、その多くは「あるある」というよりも「雑学」「ハウツー」「まめ知識」にとどまっているものが多く、読んでもちょっと物足りない場合が多い。
誰もが知っていることであれば「あるある」ではなく「常識」でしかない。「あるある本」が書籍としての面白さ・有意義度を発揮するのは、ある一定の(でも決してマジョリティではない)カテゴリーの中だからこその共有(あるある)感であり、その狭いカテゴリーを端から見たときの「浮き具合」「異常度」「マイノリティであるが故の哀愁」を綴ってこそだと思うのだ。
その意味で本書は、就活という「異常かつ特別な1年(以上の場合もあるけど)」をテーマに、大学生が陥りやすく、端から見たらおかしな状況を切り取った「あるある本」になっている。
著者自身、就活あるあるが生まれるのは「就活生が就活をビビっているから」であり、その結果生まれる「ネガティブな選択」にこそ「内定を遠ざけている理由」があると解説する。その冷静な判断にこそ内定を近づける方法論があるだろうし、本書が優れた「あるある本」になっている所以だ。
現在絶賛就活中の大学生はもちろん、苦しかったあの頃を懐かしみたい社会人も「あるある」と読める一冊であり、就活をがんばる息子・娘を持つ親や、就活生の本音が知りたい人事担当者にとっても様々な発見があるハズ。
《就活あるある70「説明会案内に『持ち物:やる気』とか書いちゃうベンチャー」》の皆さんにもオススメしたい。
『就活ああるある:内定する人 しない人』
第1章:就活あるある傑作選
第2章:就活あるある春夏秋冬【準備】編 就活目前/自己分析/説明会/企業研究/ベンチャー/自己PR 他
第3章:就活あるある春夏秋冬【選考】編 エントリーシート/就職本/GDGW/筆記試験/面接/セミナー
第4章:就活あるある春夏秋冬【私生活】編 大学生活/ネット/就活エロ/男子/女子/地方学生 他
第5章:就活あるある 春夏秋冬【就活後】編 NNT(無い内定)/内定後
(オグマナオト)