一人では社会にインパクトを与えられない ――仲間を巻き込む前にするべきこととは? 【トレンダーズ代表 経沢香保子 ×ビズリーチ代表 南壮一郎】(前編)
起業の苦難や楽しさを「仲間づくり」の視点から赤裸々に描いた『ともに戦える「仲間」のつくり方』の著者、南壮一郎氏。今回は、昨年上場を果たしたトレンダーズ創業者の経沢香保子氏との対談の前編をお届けします。トレンダーズの新入社員の前で対談をした2人が考える「人を巻き込む極意」とは?(構成:朝倉真弓)
上場を前に仲間を意識
―― 一人では超えられない壁をどう超えるか?
南 経沢さんとの共通点は、起業して最初に借りた事務所が同じマンションだということです。時期は重なっていませんが、10坪弱の狭い部屋で。
経沢 そうなんです。家賃10万円ぐらいのところからスタートしたんですよね。
南 今年4周年を迎えたビズリーチも、2年半前まであのマンションにいました。
経沢 すごい偶然ですよね。縁起がいいマンションです。
南 創業当初、僕は自分で全部やってしまいたい性分でした。経沢さんも、おそらく最初のころはそうだったんじゃないかなと思います。けれど、いい仲間が集まり、仲間にいろいろなことを任せることによって、自分の想像する以上のものができる。会社組織を盤石にするためには人に任せることが大切なんだなと、ここ3年ぐらいで強く実感しました。会社を立ち上げて苦労したことによって、僕の価値観は大きく変わったんです。
経沢 口で言うのは簡単だけど、その「二人羽織状態」をどう楽しめばいいのかについては、体感するのが難しいんですよね。
南 トレンダーズを経営するにあたって、いろいろなフェーズに直面したと思います。経沢さんが「仲間」というものを意識されたのは、いつごろだったんですか。
経沢 上場を目指したときだと思います。それまでは自分一人の力でできるところまでやろうという感じでした。できるサイズだったし、それでよかったんです。特に大きな組織を目指していたわけではありませんでしたから。志が大きくなかったというわけではないのですが、自分の限界はこれくらいかなと勝手に思っていた部分がありました。
南 上場しようと思ったきっかけは何だったんですか。
経沢 いろいろあるんですが、大げさに言うと、結局上場するかしないかは、会社にとってひとつの大きな分岐点だと考えました。上場することは、オーナーの手を離れて社会の一部に根づくこと。上場しなくてもできることはたくさんありますが、私がやりたいのは、社会の変革です。結果を出して市場に愛されないと社会は変えられないと思ったんです。