【インタビュー】『The Business of Fashion』編集長 イムラン・アーメド氏 | ファッションビジネスに携わる世界中の業界人のための必読ブログ

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取材・文・翻訳: 編集部

 

2006年に設立された『The Business of Fashion (ザ・ビジネス・オブ・ファッション、以後 BoF)』は、ファッションビジネスに携わる世界中の業界人の間で必読とされているブログ。カルト的な人気を誇るこのファッションビジネス・ブログをまとめあげるのは、2011年に英国版『GQ (ジーキュー)』が選ぶ“英国で最も影響力のある男性100人”に選出され、元マッキンゼー出身という異色の肩書きを持つ Imran Amed (イムラン・アーメド) 氏。デジタルファッションの分野の第一線で活躍する彼に話しを聞いた。

 

- まず自己紹介を少しだけお願いします。

僕の家系はインド系東アフリカ人。母はタンザニアのキリマンジャロ山のふもとで生まれて、僕自身はカナダのロッキー山脈のふもとで生まれました。高校までカナダのアルバータ州最大の都市であるカルガリーで育って、それからモントリオールにあるマギル大学を卒業後、ボストンのハーバード・ビジネス・スクールに通いました。ロンドンに最初に移住したのは1999年ですが、最終的にそこに落ち着いたのは2002年。それ以来ずっとロンドンに住んでいて、最近ようやく英国のパスポートを取得できました。

 

- ファッションに興味を持ったのはなぜですか?

経営コンサルティングのキャリアから離れると決心してから、クリエイティブ業界のリサーチをしていたんです。そのときファッション業界が一番おもしろそうだなと。クリエイティブなプロセスに敬意を払えるプロの経営者が当時はかなり求められていました。その点において自分がなにか貢献ができるのではないかとおもったのです。でも一番の大きな理由は、華やかなイメージの裏側にあるファッション・ビジネスについてただ知りたかっただけなんです。

 

- 『BoF』を立ち上げた理由と、コンセプトについて教えてください。


©The Business of Fashion


最初はコンセプトというもの自体、あまりありませんでした。ファッション業界のビジネスとクリエイティブな面を探求して表現する個人のブログに過ぎませんでした。いまでも、ファッションにおけるクリエイティブとビジネスのバランス、BoFのコンテンツの重要な軸になっています。

 

2/3ページ: Imran Amed氏が、いま気になるファッション業界のデジタル化について

 

 

- 現在、『BoF』は世界でトップレベルの影響力を持つファッションビジネス・サイトですが、人気の理由はなんでしょうか?

おそらく『BoF』の成功に一番おどろいているのは僕自身です。小さな実験的なレベルではじまって、ロンドンにある自宅のリビングで夕方に少し書いていただけなので。いまおもうと、すぐれた情報と分析を兼ねそろえて、意見をしっかりと述べることができるオンラインのファッションビジネス・サイトが求められていたのかも知れませんね。

 

- ファッションビジネスに関する情報収集はどのように行っていますか?

『Twitter (ツイッター)』で好きなウェブサイトをすべてフォローしています。自分にとってのリアルタイムのニュースフィードです。『New York Times (ニューヨーク・タイムズ)』『Financial Times (ファイナンシャル・タイムズ)』『Economist (エコノミスト)』などが好きですね。

 

- 去年のファッション業界における最大の出来事とは?


©The Business of Fashion


Hedi Slimane (エディ・スリマン) がSaint Laurent (サンローラン) で、そしてRaf Simons (ラフ・シモンズ) が Christian Dior (クリスチャン ディオール) で同時期にデビューしましたが、それが2012年のファッション業界で最も重要な出来事だったとおもいます。ハイファッションの世界に大きな変化が訪れました。彼ら2人が、これからどういう風に Saint Laurent と Christian Dior というアイコン的なメゾンを成長させていくのかがたのしみです。

 

- ファッション業界のデジタル化はすごい勢いで進んでいますが、いまなにに注目をしていますか?

いまデジタル技術が世界規模でファッション業界に変革をもたらしていて、とてもおもしろい時期だとおもいます。特に、Nasty Gal (ナスティー ギャル) や Everlane (エバーレーン)、Warby Parker (ウォービー・パーカー) といったデジタルに強いブランドが、ファッションブランドのあり方を再定義しているところも注目です。伝統的な小売りや卸売りを通しての販売よりもはるかに安い価格で商品を提供していますし。サプライチェーンを管理して、中間業者を通さないことで安価な価格設定を可能にして、なおかつ自分たちの利益を十分に出しています。

 

- 日本のファッション市場についてどう思いますか?気になるブランドやショップはありますか?

日本は大好きです!日本のファッション・ラグジュアリー市場はもう世界最大規模ではないかも知れませんが、それでも世界でも最も洗練されていてハイエンドです。消費者の感度も高い。僕は背があまり高くないので、東京での買い物は最高です。洋服が体に合います。一番好きなブランドは ICHO です。厳選された顧客向けにオーダーメイドの洋服を作る家族経営のブランドで、非常に品質がすぐれていて、ディテールにもこっています。

 

3/3ページ: 「日本のファッション市場は、いま欧米で盛り上がっている中級価格帯のブランドを参考にすると良いかも知れません。」

- COMME des GARÇONS (コム・デ・ギャルソン) や Yohji Yamamoto (ヨージヤマモト) 以降、同じくらい世界に衝撃を与える日本のブランドが出てきていないですが、海外で成功をおさめるために日本のブランドは必要なこととは?


©The Business of Fashion

Yohji Yamamoto や COMME des GARÇONS級の新しいブランドはないかも知れませんが、クリエイティブ面で世界のファッション界に影響を与えているブランドはいくつかあるとおもいます。この2ブランドから派生したブランドもいくつかありますよね。Junya Watanabe (ジュンヤ ワタナベ) や Limi Feu (リミ フゥ)、 sacai (サカイ) などです。sacai の阿部千登勢さんは、渡辺淳弥のところで働いていました。

 

日本のファッション市場は、いま欧米で盛り上がっている中級価格帯のブランドを参考にすると良いかも知れません。ALEXANDER WANG (アレキサンダー ワン) や 3.1 PHILLIP LIM (スリーワンフィリップリム)、Tory Burch (トリー バーチ) などがこのカテゴリーに入ります。日本のブランドも、品質を保ちながら、より買いやすい価格設定でユニークなファッションの美的感覚を持ち合わせたアイテムを作ることができれば、海外のファッション業界ともシンクロナイズしやすいでしょう。

 

- 『BoF』以外に別の仕事をしていますか?

ラグジュアリーブランドや新進気鋭のファッションデザイナーたちのアドバイザーをしています。あと、毎年セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでビジネスコースを教えています。

 

- Imranさんのスタイルアイコンはだれですか?

「自分自身のアイコンになれ」といつも言っています。

 

- お気に入りのショップはありますか?

オンラインだと Yoox (ユークス) と MR PORTER (ミスター ポーター)。それとパリのL’Eclaireur (レクレルール) が好きです。

 

- 『BoF』の今後の展開について教えてください。

いまいろいろと進行中のおもしろいプロジェクトがあります。とくに、学生のコミュニティと一緒に行っている企画はおもしろいです。注目していてください!

 

Imran Amed | Photography by Scott Trindle

Imran Amed (イムラン・アーメド) / ファッションビジネス・アドバイザー・ライター・実業家/『The Business of Fashion (BoF)』の設立者兼編集者で、セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでも教鞭をとる。数々の国際的なファッションコンストで審査員を務め、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション科の卒業審査員や、ウィーンのオーストリア・ファッション・アワードの審査員も務めている。2011年には英国版『GQ (ジーキュー)』が選ぶ“英国で最も影響力のある男性100人”、インド版『GQ』の“世界で活躍する最も影響力のあるインド人50人”にも選ばれている。また、英国版『Vogue (ヴォーグ)』の“期待の新人25人”や、 Net-a-Porter (ネッタポルテ) の“グローバル・パワーブロガー・トップ10”にも選出されている。『BoF』の立ち上げ以前は、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして働いていて、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得している。現在英国とカナダの市民権を持っている。

 

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