人間は高い体温が下がるときに眠くなる。アルコールには高くなった体温を下げる効果があるため、確かに寝つきはよくなるが……

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眠れない、眠りが足りない、起きられない……。そんな「睡眠」に頭を悩ませている人は、日々の食生活に目を向けてほしい。実は、食と睡眠には深い関係があり、眠りに関する問題解決のヒントもそこに隠されているのだ。

まず、誤解を抱きがちなのが「寝酒でぐっすり眠れる」という通説だ。スリープクリニック調布の遠藤拓郎先生は、こう指摘する。

「人間は高い体温が下がるときに眠くなります。アルコールには、高くなった体温を下げる効果があるため、飲酒後に急に眠くなるのです。しかし、アルコールは3時間ほどたつと分解され『アルデヒド』という有害物質に変わり、交感神経を刺激して覚醒状態にしてしまいます。酒で寝つきはよくなるけど、眠りが浅くなるのはそのためです。酒は早めに飲んで、アルデヒドが分解される3時間後から眠るといいでしょう」

この「高い体温が下がるときに眠くなる」というメカニズムを利用し、辛い食べ物を摂ることが快眠に効果的だと遠藤先生は言う。

「寝る前に体温を上げておけば、脳が『体温を下げなさい』と指令を出して眠りやすくなります。体温を効率的に上げて下げるには食事が大事。特にキムチやトウガラシなどカプサイシンを含むものがいいでしょう」

一方、仕事中に眠気に悩まされるような人は、昼食の摂り方を見直したほうがいいようだ。

「もともと、人間は午後1時から3時の間に強い眠気を感じる生体リズムを持っているのですが、昼食による体温の一時的な上昇と下降によって、眠気をさらに促してしまいます。特に温かいもの、辛いものには注意が必要でしょう。そのほか、炭水化物をたくさんとると、眠気とだるさにもつながります。昼食はなるべく冷たいもの、例えば『ざるそば』や『冷ややっこ』などがオススメです」(遠藤氏)

特定の食材には思わぬ効果もある。「タマネギで“目のクマ”が消える」のだ。日本睡眠学会所属の坪田聡先生が言う。

「目のクマの主な原因は、寝不足などで血行が悪くなったドロドロの血液です。目の下の皮膚は非常に薄く、血行不良が外から見えてしまいクマとなるわけです。クマを消したいなら、タマネギを食べてみてください。(タマネギに含まれる)『硫化アリル』は血行を促進し、自律神経や脳神経を鎮める効果があります」

食生活の乱れは睡眠にも影響する。快眠のためには、食事の内容を意識して生活することも大切なのだ。

(取材・文/頓所直人)