ダイソーvsタイガー! 大阪・心斎橋「100円ショップ」戦争の勝者は?
大阪・心斎橋アメリカ村にあるデンマーク発の格安雑貨チェーン「タイガーコペンハーゲン」(以下、タイガー)の人気がすさまじい。今年7月21日にオープンするや、連日大盛況。あっという間に棚から商品がなくなり、2度も臨時休業するはめに。
タイガーの店舗を運営するゼブラ・ジャパンの荒井紗耶ビジネスコーディネーターが語る。
「当初、客単価を500〜600円と予測していたのですが、いざオープンしてみるとその3、4倍に。しかも、来店者数も見込みの3、4倍となり、用意していた3ヵ月分の在庫が25日間で売り切れてしまったのです。そのため、商品が届くまで2度も臨時休業することになり、お客さまには本当に迷惑をおかけしました」
タイガーはヨーロッパ16ヵ国に196店を展開する超人気チェーン。今回、心斎橋にオープンしたアメリカ村ストアはその記念すべきアジア第1号店なのだ。
「コペンハーゲンの本社に4人の専属デザイナーが常駐し、オリジナルデザイン商品を日々開発しています。しかも、値段は100円からと低価格。このクオリティの商品を、この価格で売る店は日本にはなかったので、これだけたくさんのお客さまから支持を受けているのだと思います」(荒井氏)
買い物を終え、店から出てきた20代女性客も太鼓判を押す。
「デザイン、色使いがおしゃれ。今までの100円ショップにはこんな商品はなかったから、ついつい大量に買ってしまいました」
当然、タイガー側の鼻息は荒い。
「大阪であと数店舗出店し、来年の夏以降、東京へも出店したいと考えています」(荒井氏)
まさにタイガーは、日本の100円ショップ業界にとっての黒船的存在なのだ。
だが、日本の100円ショップ業界が、新参者の破竹の進撃を指をくわえて眺めているはずがない。
最大手の「ダイソー」が12月1日、タイガーからわずか徒歩10分ほどの近場に、まったく新しいコンセプトの巨大旗艦店「ザ・ダイソー心斎橋店」をオープンさせたのだ。
ダイソーを展開する大創産業(広島県東広島市)の広瀬真吾ユニットマネージャーが語る。
「女性に優しい店舗を目指し、外観をピンクで統一しました。1階の目立つ場所にコスメ、ヘアグッズ、スナック菓子など、女性のお客さまが買いたいものを集めています。もちろん、ほかの商品もデザインに力を入れ、かわいくて美しいものばかり。お客さまには『へえ〜、ダイソーにこんな商品があったんだ』と、新しい発見をしてもらえると思います」
確かに、店内に100円ショップ特有のやぼったさ、チープさはあまりない。
買い物を終え、店から出てきた30代女性客に聞いた。
「このノート、ほんまにかわいいやろ? 『東急ハンズで400円したんや』と言うても、誰も疑わんと思うわ(笑)」
さすが国内2680店、海外29ヵ国658店を展開するダイソー。その底力は計り知れない。
前出の広瀬氏もこう話す。
「予想を超えるお客さまに来店していただいています。売り上げは西日本にある店舗でナンバーワン。スタッフがフル稼働し、店頭から商品がなくなるのをかろうじて防いでいるという感じですね」
この両社のバトルを、地元タウン誌ライターはこう見る。
「ヨーロッパ以外での実績がないタイガーは、まずアジア、日本の大阪・心斎橋に進出して国際ビジネスのノウハウを積もうとしている。一方のダイソーは世界展開こそしているものの、ヨーロッパはルーマニアに2店舗あるだけで、本格進出を果たせていない。
そんなダイソーにとって、タイガーのいる心斎橋は“仮想ヨーロッパ”。ここでタイガーに負けない高デザインの商品を売りまくって実績を残せれば、ヨーロッパでも十分に闘える証明になる。つまり、タイガー、ダイソーの両社にとって、心斎橋でのバトルは世界制覇をにらんだ闘いともいえます」
前出の広瀬氏もこう認める。
「ヨーロッパは安さだけで闘えるマーケットではありません。心斎橋で、ヨーロッパで支持されてきたタイガーさんからデザイン力を学びながら試行錯誤すれば、ヨーロッパでも通用するダイソーに成長できると確信しています」
こうした展開に、大阪の消費者もヒートアップしている。
「確かに、ダイソーのデザインはおしゃれになったけど、予測できる範囲。その点、タイガーの商品には予想を上回る驚きがある。私はタイガーを支持するわ」(美術科に通う女子高校生)
「タイガーはかわいいだけ。デザインで負けても、きちんと実用に耐える商品を売るダイソーのほうが好印象やね」(50代主婦)
軍配はどちらに上がる?
(取材/ボールルーム)