「えっ、先に曲がっていいんすか?」

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先日、所用でアメリカに行った。電車がほとんど通っていないところだったので、おそるおそるレンタカーを借りて運転をしていたところ、車で交差点を左折(日本でいうところの右折。アメリカは右側通行なので)する際、ふと違和感を感じた。

日本の、右折車が多い交差点には、右折専用の矢印信号がある。直進の青信号が青から赤に変わった後にこの矢印信号が青になり、右折車のみが進むことができる、あれだ。

アメリカの場合にも、これと同じような左折(くどいですが、日本でいうところの右折)専用の矢印信号があるのだが、この矢印信号が、直進の青信号が青に変わる「前」に青になるのだ。つまり、アメリカでは、対向車線をまたいで曲がる車は、直進車よりも先に進むことができるのである。

車線の違いはあれど、このように、日本とアメリカで、信号が表示される順番が違うのには、何か理由があるのだろうか?

日本大学理工学部社会交通工学科の安井准教授によると、「日本の表示方式の場合、右折車が特に多い交差点では、右折車が右折車線からあふれ、手前の直進車線まで停滞してしまい、直進車の進行を妨げる場合があります」とのこと。

アメリカの表示方式の場合、まず(日本でいうところの右折に当たる)左折車を先にさばくために、このような直進車の妨げが無くなるメリットがあるのだそうだ。確かに、右折車線に入りきらない車のために直進できないことがあり、非常にイライラするものである。

これだけを聞くと、アメリカの表示方式の方が優れているように思うのだが、なぜ日本ではこの方式が採用されないのだろうか?

これについては、「アメリカの表示方式では、左折専用矢印が赤になり、直進信号が青になったときに、横断歩道の信号も青になります。そうすると、ギリギリのタイミングで左折してきた車と、横断をはじめた歩行者あるいは対向直進車との事故が起きる危険性があります」とのこと。

日本ではアメリカと比較して歩行者が多いため、この事故を避ける目的で、「矢印信号を後に表示する」という方式をとっているものと思われる。

ちなみに、信号表示は日々進化しており、最近では「右折車線に車両感知器を設置し、右折矢印の表示時間を需要に合わせて変化させる」ということも、特に都市部では行われているらしい。右折矢印は表示時間がとても短い印象があるが、このシステムの普及が進めば、焦って交差点に突入し、曲がりきれず交差点の中央で立ち往生、といったピンチな事態を回避できる可能性が高まりそうだ。

また、さらなる発展系として、「交通需要の少ない方向の青信号を削減し、交通需要の多い方向の青信号に割り当てる」といった信号制御(ムーブメント信号制御という)も検討されているようで、他の制御方式とともに、全国で実証試験が行われているところなのだそう。

信号が変わる順番はどうあれ、「右見て、左見て、もう一度右見て」の精神はいつまでも忘れずにいたいものである。
(エクソシスト太郎)