手前がみそ辛ネギ味玉ラーメン12ユーロ(約1230円)。奥がしょうゆちゃーしゅー味玉ラーメン13ユーロ(約1340円)。なお通常のらーめんは9ユーロ(約930円)。餃子は5ユーロ(約510円)。

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「パリには日本と比べておいしいラーメン屋がない」パリに住む日本人が口をそろえて言っていたセリフだ。ところが今、パリの日本食レストラン事情に変化が起きている。千葉県船橋市を本店として千葉を中心に4店舗を展開するラーメン屋「こってりらーめん なりたけ」が、昨10月にパリへ進出。日本の濃厚なラーメンを再現して、連日店舗前に行列を作っている。

開店当初は、噂を聞きつけた日本人が主な客層だったものの、今ではフランス人も多く訪れている。そんな「なりたけ」さんで、ラーメンに対するフランス人と日本人の違いについてうかがった。

「日本の場合は、ラーメン屋という性格上、素早く召し上がられてお帰りになるお客様が多数ですが、フランスの場合、多くの方が会話をしながらゆっくりとラーメンを楽しまれます。そのため店内の回転は遅いですが、一人当たりの注文数は多いです。餃子を例にとっても、日本だと約10人に1皿の割合ですがパリは約3人に1皿、ビールもパリの方がはるかに多く出ます」(店長)

日本とフランスの食に対するスタイルの違いは、店舗内で費やす時間だけでなく、食べ方にも影響しているという。

「最も大きな違いは、スープと麺のどちらをメインに考えているかという点です。日本のお客様の場合、スープは残しても麺は完食されますが、フランスの場合、麺は残してもスープは飲み干されます。これも食文化の違いですね」(同)

「なりたけ」ラーメンのベースは、背脂チャッチャ系といわれる、煮込んだ豚の背脂をスープに加えた、濃厚な豚骨スープが特徴。味はみそとしょうゆの二種類から選べる。製麺機は日本から持ち込み、店舗内で製造しているそうだ。

「費用はかかりますがスープのベースになる、みそとしょうゆのタレ、および麺に使う小麦粉は日本から取り寄せています。野菜と豚はフランスのものを使用しています。フランス野菜と豚は質も良く、日本の食材と比較してもおいしいのですが、それはまた日本とは別の種類のおいしさで、当店の『日本のラーメンを再現する』という趣旨からそれてしまいます。そのバランスが難しいです」(同)

異なった環境・文化の中で、日本と同じ味を作るというのはとても大変な作業だろう。今までパリ店で働いていて、特に印象に残ったことは何かたずねた。

「最もうれしかったことは、昼と夜の2食連続で当店へいらっしゃったフランス人のお客様がいたこと。パリで一生懸命ラーメンを提供して良かったと感じました」(同)

パリ店の詳細は下記の通り。フランス人も虜にする本場のラーメンを、日本ではなくあえてパリの空気で食すのもアリだと思います。住所:31 rue des Petits Champs 75001 Paris 営業時間:12時〜15時および19時〜22時 定休日:日曜・祝日
(加藤亨延)