上は『ミラーレンズ 400mm F8(キヤノン用)』(ケンコー・トキナー製)。2月3日発売。下は従来レンズ「300mm F4」との大きさの比較。

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みなさんカメラというと、望遠撮影に魅力を感じる方が多いのでは。
そう、筆者も始めて一眼レフカメラを買ったときは何とかしてプロカメラマンが使うような長玉(大望遠レンズの俗称、長い玉ねぎのことではない)に憧れたものだった。だが実際、お金を貯めて購入してみると、その大きさや重さに苦労するもの。そこで、コンパクトでかつ大望遠撮影が可能にする便利なレンズを紹介しよう。

それは、ミラーレンズ。名前からして想像できると思うが、鏡を使用したレンズで、レンズ内で像を反射させること(反射式光学系)で、コンパクトでありながら大望遠撮影が可能になるというものだ。結構昔からあるレンズだが、いろいろ制約が多いこともあり、メジャーな存在にはなっていない。
だが、その価格の安さ、コンパクトさは現在もなお捨てがたいものがある。

その制約のひとつとして、絞り値が固定されていて、かつ「F8」といった暗いレンズになってしまうこと。暗いレンズは手ブレ、被写体ブレが起りやすいので、かなり痛いデメリットなのだが、いまどきのデジカメなら大丈夫。なぜなら、感度をかなり高くできる(ISO6400とか)うえ、画質も良くなっているので、暗いレンズでも心配が少ないからだ。

あとは、オートフォーカスや手ブレ補正機能など今どきのレンズでは当たり前の機能が搭載されていないこともデメリット。しかし、AFや手ブレ補正がなくても写真は十分撮れる。というか。マニュアルのほうが写真を撮っていて楽しい。マニュアル撮影は自分の感性と手先の感覚が直接カメラに働くから。

さて、今回使用するのは『ミラーレンズ 400mm F8(キヤノン用)』(ケンコー・トキナー製)。2月3日に発売になったばかりのニューモデルで、従来のミラーレンズよりさらにコンパクトになっている。全長は82ミリ、重さ340グラムで、感覚としては標準ズームレンズとほぼ同じくらいの大きさ、重さだ。で、問題の焦点距離だが、キヤノンの撮像素子「APS-Cサイズ」のカメラで使用すると、なんと400mmの1.6倍の640mmにもなる。これは凄い大望遠。それでいてこの大きさ。そして値段は2万3000円くらいとお手ごろ。

では、通常の望遠レンズと撮り比べてみよう。筆者が持っている大望遠レンズは「300mm F4」。奇しくも同じトキナー製で、10年以上前に購入したもの。カタ落ちだったので数万円でたしか購入できたと思う。シャープで、いい写りはするのだが、重くてかさばるので使うことは少なかった。『ミラーレンズ 400mm F8(キヤノン用)』と並べてみると、明らかにその大きさの違いが分かる。ただ、「300mm F4」も「APS-Cサイズ」のカメラに付けると480mmの大望遠に変身するので、これはこれで魅力的なレンズ。F4と比較的明るいので、暗い場所での撮影には強い。

いよいよ撮影。
東京・新宿の南口にある時計ビルを狙ってみた。天候は曇り。時計ビルの先端の部分を撮影。「300mm F4」でISO800の設定で撮影すると、露出は絞り5.6でシャッタースピードは8000分の1(プラス3分の1段補正)となった。さすがの望遠能力と手ブレの心配がないほどの超高速シャッター撮影。ちなみにコンパクトデジカメの望遠撮影で撮った写真と比べても歴然。同じ場所から撮ったとは思えないほどの被写体の大きさである。

つぎに、『ミラーレンズ 400mm F8』。ここでちょっと注意が必要なのは、撮影モードの設定。絞り固定なので、基本的に絞り優先AEとマニュアルでの撮影となる。しかも、絞り値の表示が「00」となるのはちょっと驚き。説明書で確認してたところ、そうなるのがこのレンズの場合、正常なのだそうだ。数枚試し撮りをしていて、露出がアンダーになる傾向があるので、プラス1段補正して同じくISO800に設定。すると、露出は絞り8でシャッタースピードは4000分の1となった。これも十分なシャッタースピードだったので、手ブレはなかった。

撮影画像を比較すると、480mmと640mmの差はかなり大きいことが分かる。画質も決して「300mm F4」に比べ特別劣っているとは思われなかったが、多少シャープさが物足りなかった印象はある。

次回は、ミラーレンズの画質の特徴である「リングボケ」のおもしろさを中心に紹介する。
(羽石竜示)