カラフルなエビで満載の一冊です。

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イヌ、ネコ、熱帯魚など、ペット専門誌あれこれあるなか、エビの専門誌もあるのは知らなかった。

エビといって思い浮かぶのは、天ぷら、エビフライ、刺身に寿司、エビチリ……食べる方面のことばかりなのだが、この場合はペットとしてのエビ。ペットショップなどで、白やブルーのキレイなザリガニが売られているのを見ることがあるが、それはまた別のジャンルのようで、ここでは主にビーシュリンプという小さい種類のエビを扱う。とにかくこういったムックが一冊できるだけの広がりがある世界なわけだ。

シュリンプ愛好家のためのムック、『シュリンプクラブ』(エムピージェー)。未知なる観賞エビの世界、どんなものなのだろうか。

まず表紙にデカデカと「シュリンプが殖えると 毎日がハッピー」という見出しが踊る。「目指そう爆殖!」とかも書いてある。殖やすことがひとつの目標であるらしい。
誌名のロゴの上に、「レッドビー、ブラックシャドーほかエビの情報満載!」というキャッチコピー。人気の品種のことなんだろう。
「シュリンプファンの水槽拝見」「失敗のない水槽セッティング」など、定番ぽい企画もあるし、熱帯魚や錦鯉みたいに、色の鮮やかさとか、見た目のキレイさなんかも大切なポイントなんだろう、「コンデジによるシュリンプ撮影講座」なんて企画もある。

さてその「水槽拝見」のページ。いきなり16もの水槽が設置されたエビ専用ルームをもつお宅が登場。部屋にはなぜかバーカウンターも設置されていて、写真キャプションにも、「エビファンなら憧れる『エビ専用ルーム』」とも書いてある。エビ水槽がオシャレな空間を演出しているわけだ。他にもご夫婦で飼育を楽しんでいたり、ブリーダーを目指している人がいたり、金魚の水槽と並べて飼っていたりと、いろんなシュリンプライフを楽しむ愛好家たちが紹介されていた。

見ていて、品種名なんかは分かるのだが、さっぱり意味が分からない表現が出てくる。「モスラのシャドーでこの青みはなかなかいない」「ここから美しいモスラにつなげたい」……なんだ、「モスラ」って。エビだけど「エビラ」じゃなくて「モスラ」なんだ。それから、「麻呂がくっきりしている」……何がくっきりしているんだろう。

読み進めていくと、赤と白のボディを持つレッドビーシュリンプという品種の模様タイプを解説したページに「モスラ」の表記を発見。身体の模様が、腹部がほとんど白で覆われているタイプのものをモスラと呼んでいるよう。なるほどそういわれてみれば、お腹のあたり、モスラの幼虫ぽい気もする。「迫力、存在感とも抜群で非常に人気が高い」のだそうだ。

ほかにも、模様の出方によって「日の丸」や「タイガー」、「進入禁止」などなど、いろんな種類があるみたいで、これらをいろいろ産み出していくのが、エビのブリーディングの醍醐味のひとつのよう。模様がなく前身真っ白になった「白ビー(またはスノー/ホワイト)」は、「進化の終着点ともされる」とかで、どこかカッコいい気もするが、「模様の変化がないので改良の面白さは減少する」んだそう。ちなみに、頭胸部の左右に白い点が現れた状態が「麻呂」なんだそうです。

いかに殖やすか、いかに素敵な模様を出すか、いかにビビッドな色を出せるかなどなど。それがエビを育てる大きな魅力。
美味しそうなエビの様子はどこにもありませんが、カラフルなエビの写真や、愛好家の皆さんの楽しそうな話を読んでいると、どんな器具が必要なんだろう、エサはどんなものがいるんだろうとか、だんだん気になる存在になってきていたりも。

「プラチナジャパンブルーシュリンプ」「ブラックシャドー」「ゴールデンアイレッドサンダーシュリンプ」「ブルーボルトシュリンプ」「ゴーストシャドーキングコング」「歌舞伎シュリンプ」
などなど、数々のやんちゃ風ネーミングにもまた、どこか魅かれるものがある。

「アジアパシフィックシュリンプコンテスト」なんていう世界規模のコンテストまで実施されるような世界なのだ。その模様も、ちょっと見てみたい。

ディープながらも、Q&Aコーナーや基本的な飼育法、用語解説など、初心者にも優しいページもいろいろ。一冊読めば、結構エビ事情に詳しくなれる気がします。
そして、どこかで「キレイなモスラだね」とか使ってみたくなったりも。
(太田サトル)