おめでとうソフトバンク!ありがとう中日!

球史に残る冷戦、2011年の日本シリーズが終わりました。大方の予想を覆し、7戦までもつれた戦いは4勝3敗で福岡ソフトバンクホークスが制覇。2003年以来の日本一、ペナントレース・交流戦・日本シリーズをすべて制する完全優勝で有終の美を飾りました。一年を通じて見せたまったく隙のない強さは「最強」の冠をつけるにふさわしいもの。来年のシーズンを心待ちにするパ・リーグファンとしては「杉内出ていけ」「和田出ていけ」「川崎出ていけ」「ホールトン出ていけ」「内川地元ファンに本性見せろ」とソフトバンクの弱体化を願わずにはいられません。今年のままなら、とても勝てる気がしませんから…!

そんな最強ソフトバンクと中日との決戦にあたり、僕が立てたシリーズ予想は4勝0敗でソフトバンクでした。中日が勝つイメージはまったくわかず、ヤクルトよりはマシという程度の感触。実際にCSで肌を合わせ、1個も勝てずにおめおめと引き下がった西武球団を見ながら、史上屈指の糞シリーズすら覚悟したもの。

とにかくソフトバンクの戦力は圧倒的。和田・杉内・摂津・ホールトンとずらり並んだソフバン先発陣に対して、中日の先発で相手になりそうなのは吉見だけ。打線はまぁ話にならないレベルの大差があり、どこからでも点が取れるソフバンVSどこで点取ってたの?中日という構図。わずかに中日が上回る局面があるとすれば、8回9回にもつれたときの浅尾・岩瀬投入ぐらい。とは言え、ソフトバンクも今季のパNO.1中継ぎのファルケンボーグや、森福・馬原といったメンツが揃うわけで、浅尾きゅんのルックス面を割り引けば「どっこいどっこい」が関の山。馬原劇場という小さな穴を突くぐらいしか、中日の勝機はないだろう…となれば4勝0敗は大いにあり得ると。

しかし、中日は見事にソフバンの小さな穴を突き、乏しい戦力をやりくりしながら第7戦まで持ち込んでみせたのです。これは勝ったソフトバンク以上に賞賛したい奮闘でした。その戦いぶりを指し示すような落合監督の言葉が、先日発売された中日・落合監督の著書「采配」には記されています。

「0対1で悔しい敗戦がつづいた。チームのミーティングで何とアドバイスするか。普通なら『0』を改善しようと野手陣に奮起をうながすだろう。私は違う。投手陣を集めて『打線が援護できないのに何故点を取られるんだ。0点に抑えてくれれば打てなくても引き分けになる。勝てないときは負けない努力をするんだ』と言う。1点を守り切るか相手を0に抑えるかすれば、負けないのだ」

打線は水物、打てない日はあるという超一流打者ならではの諦観。それが現在の投手力を中心とした守りの野球、非情の采配につながる出発点なのでしょう。三度の三冠王を獲得したバットマンでも、打てないものは打てないのです。「糞つまらん」と揶揄されながらも信念を貫き、実際にこれだけの勝利と栄光を積み上げたのですから、落合野球恐るべし。

今回の日本シリーズなどは、まさに落合野球の真骨頂。糞打てない打線にキレることなく、本当に1点を守り切って3つの白星を奪ったのですから。僕が投手なら「ふざけんなよ」「24打席無安打って何だ」「ていうかCSから入れたら43打席無安打じゃねぇか」と7試合ほど打線の穴にキレていたはず。そんな状況でも心乱れず、「0に抑えよう」と投げつづけた中日投手陣は素晴らしかった。中日でなければここまでもつれる戦いはできなかったことでしょう。

落合監督は常々「勝つことが最大のファンサービス」と言ってきましたが、ようやく合点がいった想い。中日が3つ勝ったことで、2度の週末を楽しく野球見てすごすことができました。日本一になったソフトバンクにしても、あっさり勝つよりも死闘の末の勝利のほうが喜びが大きいでしょう。中日も、3つも勝ててよかったじゃないですか。ファンも納得でしょう、あれで3つも勝ったんですから。すべての野球ファンを喜ばせたこの「3勝」に深く感謝し、「よく頑張った」「お疲れ様」「ありがとう」という賛辞を中日に贈りたい…僕はそう思うのです。