とくに終盤、フィジカルの強さでポイントを作り、チームに貢献していた本田。半年前になぜレギュラーでなかったのか不思議に思えてくる<br>(Photo by Tsutomu KISHIMOTO)

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両者がっぷり四つ。お互い穴らしい穴はなし。付け入るスキがほとんどない珍しい試合だった。とはいえ、これまでの日韓戦の中では最もハイレベル。一般受けという意味での娯楽性には欠けたが、噛めば噛むほど味が出る見所満載の好試合だった。そう解釈すれば、僕の予想は的中したことになる。

アルゼンチン戦よりも難しい試合になると言ったのはザッケローニ監督だが、相手にスキの多かった前戦より評価できる一戦だと思う。日本は長いトンネルを抜け、ようやく、「普通」の試合ができるようになった。「普通」に戦えば何とかなる。監督さえちゃんとしていれば、強い韓国にも十分互角に渡り合える。もっと強いアルゼンチンにも、相手が少しでも慢心すれば、番狂わせを演じることができる。

そうしたレベルに、僅かの間に到達した。喜ばしい限りと言いたいところだが、韓国を見ていると失った時間の長さも憂いたくなる。

日本同様、悪くないサッカーをした韓国の監督は自国人のチョ・グァンレだ。同じように良いサッカーを披露した前任者のホ・ジョンモも韓国人。韓国には世界のスタンダードを身につけた監督が数多くいる。どう見ても日本より進んでいる。理由は分かりやすい。ヒディンクという良い手本があったからだ。ヒディンクが監督に就任したのは2001年の頭。ザッケローニが、ヒディンク役を果たしたとしても日本は9年遅れになる。

代表チームは9年の遅れを一瞬にして挽回したが、日本サッカー界全体としてはいまだ9年遅れ。これは厳粛に受け止めなければ行けない事実だと思う。ザッケローニには、そのサッカーの中身を、日本中にアナウンスして欲しいものだ。メディアもしかり。勝った負けたの結果報道や、活躍選手を持ち上げるだけでなく、その中身について迫る必要がある。国の財産にしないと9年の差は詰まらない。僕はそう思う。

というわけで、韓国戦の採点です。

GK西川 5.5 無難にこなしたが、安心感は抱かせなかった。川島に迫る活躍だったとは言い難い。

DF 駒野 採点不能
DF栗原 6.5 不安定さは一切なし。中澤、闘莉王もうかうかしていられない。
DF 今野 7 チームの中心選手に昇格。ボールさばきの良さも光った。
DF 長友 6.5 不動の左サイドバックと言いたいところだが、やっぱりそれは仮の姿だと思う。本来は右で出場すべき選手である。左サイドバックには左利きを使いたい。候補がいればの話だが。新たな選手の抜擢はあるのか。ザッケローニの動向に注目したい。

MF 遠藤 6 この試合が代表100試合目。黄金のカルテット(中田英、小野、中村俊、稲本)が消えていく中、そこから外れていた遠藤が、最も息の長い選手として活躍するとは誰が思っただろうか。キチンと現代サッカーに向き合えている点はさすが。
MF 長谷部 6.5 ドリブルでタテへの推進力を何度か発揮。迫力、スケールの大きさを見せた。もっと決定的な仕事ができるはずだと思うが。