市川実和子(撮影:野原誠治)
 ファッションモデルとしてデビュー後、テレビドラマ、映画、CMなどで活躍する女優・市川実和子。近年はNHK教育「ドイツ語会話」への出演や、邦訳本「ミネハハ」の出版、「真夜中」(季刊誌)の執筆など多彩な活躍をみせている。そんな市川が今回挑んだのは、鬼才・塚本晋也監督の「悪夢探偵2」である。主演の松田龍平の母親役であり、"人の悪意が見えてしまう"という特別な力を持つ逸子を演じた。私生活では「怖い映画が苦手」と話す彼女だが、あるシーンに惹かれ、とても感動したという。独自のホラーテイストと親子愛を描く物語が絡み合う傑作「悪夢探偵2」の魅力とは?

――まず、この役をいただいた時の率直な感想を教えてください。

市川実和子(以下、市川):お話をいただいた時はまだ、前作「悪夢探偵」を観てなかったんですね。怖い映画が苦手なので、観れなくて。この台本をいただいた時に観ようかなって思ったんですけど、予告編をインターネットで観ただけで、ヒーって怖くって(笑)。無理かもしれないって思ったんですけど、台本を読んで、最後のシーンが印象的で。そこにものすごく惹かれましたね。それで、結局観ていないまま監督にお会いしてしまいました。

――そのシーンを読んですぐ出演を決定した?

市川:それが、まだそこでは決めてなかったですね(笑)。

――直接監督とお話して?

市川:そうですね。母親役ってことで私はまだ結婚もしてないし、子供もいないですし。"親子の絆"が、いちばんの要の作品だと思いましたし、わたしには荷が重すぎるかもしれない、簡単には決められないって思って。それで監督にお会いした時に、正直に「私はまだ母親になれる自信はないし、気持ちが分からない」って話しました。でも、監督が「逸子っていう役はきっとお母さんになりたかったけどなれなかった人なんじゃないか」って言って下さって。それで私は「お母さんになりたかったけどなれなかった人の役ならできます」と、お話して出演を決めました。

――塚本監督とは初対面だったそうですが、どのような印象を受けましたか?

市川:監督が役者さんとして出演されている作品を以前から観ていたので、素晴らしい役者さんだし、もちろん監督としても独自の世界観を感じる映画を作っている方なので、どんな人なんだろうって全然想像がつかなくて。でも、実際会ってみたら、くしゃっとしたなんか可愛らしい人で(笑)。

――クランクインされてから、監督からどのような演技指導を受けましたか?

市川:やっぱり怖がるシーンとか、ホラー要素がある場面では、すごく的確なアドバイスをもらいましたね。視線の位置とかまで細かく作りこんで。